戦利品
「ごめんなさい。私だけ全然役にたたなくて」
「そんなことはない。むしろ三村の役目はこっちの方だろ?」
俺達は先程コボルト達と戦った場所で、三村に手当てをされている。
俺は殆ど傷らしい傷は無いが、日向の方はかすり傷が至る所にある。
あれだけの近接戦闘で同時に4体も相手にして、これぐらいの怪我で済んだのは運がよかった。
「空の言う通りだよ。三村さんが手当てしてくれるから、僕達はこうして思いっきり戦えるんだよ」
「ありがとう、そういってくれると私もうれしいわ。よしこれで大丈夫」
手当てを終えた俺達はその場に立ち上がる。そして他に敵がいないか辺りを見回した
「どうやらコボルト達はもうこの辺にはいないようだな」
「うん。この辺に敵の気配も全くしないよ」
「そうか」
俺は先程倒したコボルト達がいた場所を見た。
俺に撃たれて絶命したコボルトだけでなく、日向に切られたコボルトも含め、全員消えてしまっている。
先程のゴブリンといい、どうやらこちらの世界で倒したモンスターは全て消えて無くなってしまうようだ。
「死んだ人間は残るのに、モンスターは消えるのかよ」
ゴブリンといいコボルトといい、ここは本当にRPGの世界みたいだ。
「山村君。あの袋の処理、どうしましょうか」
「そうだな」
三村が指差すのは人間の手が入っていたあの袋だった。
たぶん先程のコボルト達が殺した人間だろう。
腕が入っていたということは、他にも体の一部がバラバラになって入っているに違いない。
「あんまり気乗りはしないが、誰かがやらないとな」
そうしないと死んでいった人が報われない。
正直中はあんまり見たくないが、誰かが処理しないと可哀想だ。
それにこのまま置いておくのも後味が悪い。
「わかった。あの袋は俺が引き取‥‥‥‥「僕にやらせて!!」」
「日向?」
「その袋の中身の処理、僕にやらせてもらえないかな?」
日向にしては珍しい申し出である。
こういう人体がバラバラにされているスプラッター系のものは苦手なはずなのに。
「俺は構わないけど、本当に大丈夫? こういうの苦手だろ?」
「大丈夫」
「本当に?」
「うん、僕は大丈夫だから気にしないで」
気丈に振舞ってるように見えて、どこか無理をしているよう見える日向。
どうして日向が袋の中の死体に固執するのか。その心当たりがあるとしたら先程の俺達が見た薬指に指輪の着いた手が関係しているのだろう。
日向の家が近いこと、そしてこいつのさっきの態度。それが意味するものはきっと‥‥‥‥。
「日向、そのバラバラ死体まさか‥‥‥‥」
「日向君に山村君、ちょっとこっち来て」
「何だよ、三村。こっちはそれどころじゃ‥‥‥‥」
「いいから、いいもの見つけたの」
いいものがあると言われると行かないわけにもいかない。
三村の方に行くと、俺が倒したコボルトがいた所に何か落ちている。
ハンドガンより大きく長い銃。この銃はもしかして。
「ライフルか。しかもご丁寧にスコープまでついている」
スナイパーライフル。それがまさか、こんな所に落ちているなんて。
つまりこれはあのコボルトが落としたドロップアイテムなんだろう。
さっき俺が他よりでかいコボルトを倒したから、そのご褒美といった所か。
「この銃は俺がもらってもいい?」
「うん、僕はいいよ」
「私も賛成。山村君以外にこれを使いこなせる人はいないと思う」
「サンキュー」
落ちていたスナイパーライフルを手に取り、アイテムボックスに収納した。
先ほど活躍した日向に渡した方がよいとも思ったが、全員が俺にくれるって言っている以上、もらえるありがたくもらおう。
確かに三村の言うとおり俺の持っているjob、銃士にうってつけの武器である。
正直ハンドガンだけでは、戦闘に物足りないしな。これなら今よりずっと遠距離の敵を狙い打てる。
「他には何か落ちてなかった?」
「あとは薬草や小瓶に入った青い液体ぐらいかな」
「青い液体? それにその葉っぱがよく薬草だってわかったな」
「私のスキル、素材鑑定を甘く見ないで。これぐらいの草の種類はすぐわかるのよ」
なるほど、そういえば三村は薬師という職業を選んでいたな。
だから薬になるような素材がわかるのだろう。
「ちなみに、その青い液体は何かわからないのかよ」
「これはまだ鑑定してないわ。きっと何かの薬だと思うから、後で調べてみる」
そういうと、小瓶を自分の懐にしまう三村。
俺や日向と違って、アイテムボックスを持ってないと何かを収納する時大変だな。
「これで全部か。そろそろ日向の家に行こう」
「そういえば、日向君の家ってどこにあるの?」
「すぐそこだよ。ただ中に入る前にちょっと待ってて。家の中が少し汚いから掃除してくる」
「私はそんなの気にしないよ。別に山村君の家みたいに部屋が汚くても」
「いちいち俺に絡めて話すのはやめろ。あと俺の部屋は汚くないからな」
実際部屋はかなりきれいに片付けてある。
ただ部屋に入った奴からは、生活観がないとか散々なことを言われるけど。
「ごめん、でもちょっときれいにしないといけない所もあるから」
「でも‥‥」
「やめとけ、三村」
「空?」
「そんなに片付けたかったらきれいに片付けろ。俺達は外で待ってるから、ゆっくりやっててもいいぞ」
「うん、ありがとう。そうするよ」
そういって日向はコボルト達が持っていたサンドバッグを持って中に入っていく。
それを三村と俺は日向が家中に入るまで、静かに見送った。
「ちょっと、山村君。さっきは外にいる方が危ないって言ってたのに、どういう風の吹き回し?」
「日向にもちょっとした用があるんだろ? ここはあいつの好きにさせてやれ」
俺の想像が正しければ、これでいい。少し日向に時間を与えないと、あいつが壊れてしまう。
「貴方達、本当に仲がいいのね」
「腐れ縁だからな」
それから俺と三村は日向から呼ばれるまで家の前で待つ。
そして長い時間日向の家の前で待ち続け、気づくといつのまにか俺達の頭上は、夕陽で綺麗に染まっていたのだった。
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