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新メンバー

誤字・脱字報告ありがとうございます

「今日は桜も僕達と一緒に食糧調達に行くことになった」



 朝食終了後、食糧調達に行く直前春斗さんからそのような発表があった。



「みなさん、よろしくお願いします」


「ちょっと待て。桜は杉田達と同じグループじゃなかったのか?」


「それにはちょっとした事情がありまして」


「事情?」


「そうです」



 事情ってどんな事情があるんだ? まだグループ変更の話も出ていないのに、途中加入なんてことが本当にあるの?



「昨日杉田君達のグループメンバーの殆どが怪我をしたことは空君も知っているよね?」


「はい」



 だって杉田達を助けたのは俺達なんだから、それぐらいは知っている。



「それで杉田君達の班の食糧調達のメンバーが桜と五月さんの2人しかいなくなってしまってね。特別にその2人を別のグループにに振り分けることになったんだ」



 なるほど、そういうことか。2人で食糧調達に行くのが大変だから、別のグループに振り分けるってことか。

 学校にいるリーダー達も周りに色々と配慮しているようだな。



「ちなみに五月ちゃんは梓ちゃんの班に入ることになっています」


「梓の?」



 梓の方を見ると、確かに五月という少女は梓と共にいる。

 しばらく眺めていると梓と目があった。

 こら、ウインクなんてしなくていい。



「先輩、どこを見ているんですか?」


「別に何でもない」



 危ない危ない。桜はただでさえ勘が鋭いんだ。余計なことはしないに限る。



「それで桜は俺達のグループに来たってことね」


「はい」



 俺達のグループに来た桜はとてもうれしそうな顔をしていた。

 このグループは問題児だらけなのに、本当によかったのかな?



「改めて、今日1日よろしくお願いします」


「前野さんも八橋君も同じクラスだから知っていると思うけど、仲良くしてやってほしい」



 仲良くするも何もここにいるメンバーの殆どが桜と顔見知りだろ。

 付け加えて春斗さんは話し終わった後、いい仕事したみたいな顔をしないでください。その俺にだけ向けたサムズアップもやめてほしい。



「では車に移動しよう」



 春斗さんの後に続き、俺達も車に乗り込む。

 いつものように助手席の前に行くが、助手席のドアを握る八橋の姿が見えた。



「八橋は後ろの席がいいって行ってなかったか?」


「今日だけは特別その席に座ってやる」


「えっ?」


「今日は先輩のおめでたい日だろ? 少しは配慮しないとな」



 配慮って。別に俺は配慮してもらわなくてもいいんだけど。

 あとその憎らしい程のニヤニヤ笑いはやめてくれ。



「空先輩、何してるんですか? 早く乗りましょう」


「桜!? そんなに俺の腕を引っ張らなくても、ちゃんと1人で乗れるから大丈夫だ」



 桜に引っ張られ、車に乗り込む俺。

 自動的に桜と由姫が俺の隣の席になったのだった。



「みんな、準備はいいか?」


「はい。早く行きましょう」


「わかった。出発しよう」



 春斗さんが車を発進させる。いつもは助手席なので、こうして後部座席に乗るのはなんか新鮮だな。



「何か今日の先輩、そわそわしていますね」


「そういう桜はテンション高いな」


「はい。あたしはいつでも元気ですから」



 元気なのはいつものことだが、今日はいつもよりやる気に満ち溢れているように感じられた。



「そういえば空先輩達も、ずっと車で移動していたんですね」


「桜の班も車移動だろ?」


「はい。いつも八坂先生が運転してくれました」



 八坂って昨日1番深い傷を負っていた先生か。あの人が桜達を監督していたんだな。



「いつもはどこで狩りをしていたんだ?」


「街中とか先輩達がいた山とか色々です。日によって場所を変えてました」


「普通はそうだよな」



 俺達みたいにワンパターンにあの山ばかり行くのがおかしい。

 うちのグループの目的が集団戦闘をすることによって協調性とチームワークをつける事が目的と考えれば、別にいいのかもしれないが。



「そんなことより、桜は先輩とくっついてなくて大丈夫なのか?」


「由姫!?」



 余計なことを言うなよ。せっかく桜も忘れていたのに、蒸し返すようなことはしないでほしい。



「今は大丈夫でから、心配しないでください」


「今?」


「はい。あのスキンシップはあたしと先輩が付き合ってることを周知させたかったのでしていました。これであたし達も余計なことに巻き込まれることは無いでしょう」



 ということはさっきまでのバカップルのようなやり取りは、わざとやっていたということか。

 もうされることがないと安心する反面、少し残念に思う自分がいた。



「それでは桜としては先輩に甘えたくないのか?」


「そういうわけじゃないです」


「それなら思い切り甘えてもいいんじゃないか? なっ、先輩」


「俺?」



 そんないきなり話を振られても困る。正直心の準備も整っていない



「先輩は桜に甘えてもらってうれしくなかったのか?」


「‥‥‥まぁ、悪い気はしなかった」


「ふっふっふっ、どうやら先輩もまんざらじゃないってことだな」



 今の由姫は悪い顔をしている。まるで漫画やアニメで悪だくみをしている悪の幹部みたいな顔だ。



「そうなんですか?」


「まぁな」



 うれしいかうれしくないと言われれば、桜に甘えられるのは素直にうれしい。

 確かに恥ずかしいが、桜が純粋に俺に好意を向けてくれているっていう裏返しだからな。



「でも、あれをするのってすごく恥ずかしいんですよ」


「それを桜がいうの!?」



 あれだけ盛大にくっついておいて今更何を言ってるんだよ。



「それなら折衷案として、手をつなげばいいんじゃないか?」


「手ですか?」


「そうだ。それならそんなに恥ずかしくもないだろう」



 いや、手をつなぐのも充分恥ずかしいぞ。特にさっきの甘えるって振りがあった手前、バカップルが人目を気にして自重しているようで余計に恥ずかしい。



「わかりました。先輩もそれぐらならいいですよね?」


「あぁ、大丈夫だ」


「じゃあつなぎますね」



 そういって俺の右手を桜の左手が包む。

 はっきりいってさっきの方がまだましだ。

 衆人環視の中お互いに意識し合った状態で手を握るのがこんなに恥ずかしいとは思わなかった。



「空先輩、何か言ってください」


「桜の手って、暖かくて柔らかいんだな」


「何恥ずかしいこと言ってるんですか!?」


「桜だってさっきまで恥ずかしいことしてただろ」



 お互い周りの視線に気づき周りを見る。

 俺の隣にいた由姫がニマニマ笑っており、八橋は眉間にしわを寄せる。

 春斗さんに至ってはバックミラー越しにぶっちょうずらを浮かべていた。



「空君」


「はい」


「桜とはちゃんと節度を持ってお付き合いをしてくれ」


「わかりました」



 春斗さんの一言で俺は黙ってしまう。畜生、昨日は俺と桜の交際を1番喜んでいたのはこの人なのに。



「やっぱり先輩達は面白いな」



 隣で声を殺して笑う由姫。何が面白いのか、そのまま笑い続けている。



「これから大変だな。先輩」


「余計なお世話だ」



 目的地に着くまでの車中。俺は由姫や桜にずっといじられるのだった。

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