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一夜明けて

「朝か」



 太陽の光で目を覚ました。窓の外を見ると雲ひとつない快晴。いい朝だ。



「日向はまだ寝てるようだな」



 ぐっすり寝ている日向を横目に俺は部屋を出た。

 顔を洗いながら思いだすのは昨日の夜。桜と付き合うことになった後のことである。



「昨日は大変だったな」



 しばらく桜と屋上で過ごした後、良子さんと春斗さんの所へ桜を送っていった。

 その際俺が桜と交際することになったことを告げると、何故か2人共大喜びだった。



「まさかあの春斗さんまで喜んでくれるとはな」



 てっきり『お前に娘はやらん』と言われると思っていたが、まさか『娘のことを頼む』と言われるとは思わなかった。



「あの姿は結婚する前の挨拶みたいだったな」



 良子さんも部屋に戻る前に『いつ籍を入れてもいいから』とか『早く子供を見せてほしい』とかそんなことを耳元でささやかれるし、春斗さんは春斗さんで涙を流さんばかりの勢いで感激していた。



「俺達はまだ付き合ったばかりなのに、そんなことまで考えられるわけがないって」



 昨日の今日でいきなり結婚なんて言われても実感がない。今はまだゆっくりと仲を深めることが先決だろう。



「とりあえず昇降口に行くか」



 桜が待っている。昨日の今日なのでどんな顔をして会えばいいかわからないが、約束なので行く必要がある。

 昇降口までつくと、いつものように桜が下駄箱の前で待っていた。



「おはよう、桜」


「おはようございます、先輩」



 いつもの様に、俺に話しかける桜。

 俺を見つけるとすぐ俺の腕に自分の体を押し当てた。



「桜!?」


「別にいいですよね? これぐらいは?」


「まっ、まぁ‥‥‥そうだな」


「だってあたし達、付き合ってるんですから」



 そう言われると何もいえなくなる。

 正直恥ずかしいが、桜がうれしそうにしている手前反論もできない。



「空先輩、もしかして恥ずかしいんですか?」


「慣れてないからな」


「あたしもです」



 俺の腕にしがみつく力が強くなる。強くなるが。桜の体の柔らかさを右腕が一身に受けていた。



「先輩はこういうの嫌いですか?」


「嫌いじゃない」



 なんだかんだいって桜とこうして一緒に入れることはうれしいからな

 列に並び、食器をもらうまでそれは続いた。



「今日もいつものテーブルですか?」


「そうだな。桜も一緒に来ないか?」


「もちろん。ご一緒させていただきます」



 そのまま一緒にテーブルへと向かい席に座る。当然桜は俺の隣の席に座った。



「じゃあ食べましょうか」


「そうだな」


「おはよう。先輩、桜」


「おはよう」


「おはようございます。由姫ちゃん」



 いつものように由姫が俺達の前に座る。ただその様子がおかしい。

 おかしいといっても朝食の量はいつものようにおかしな量なのだが、やけに俺達をニヤニヤと交互に見ている。



「何がそんなに面白い?」


「別に。今日はいつにもまして熱々の様子だと思って、気になっただけだ」


「なっ!?」


「さすがだな、先輩。朝早くから見せ付けてくれる」



 わざわざ朝早くと付け加える辺り、どうやら朝の様子を見られていたらしい。



「由姫ちゃんもあたしたちのこと見ていたんですか?」


「あぁ。2人共すごくうれしそうに歩いているのが印象的だった」


「なっ!?」



 由姫のやつ、わざと2人って言ったな。桜がその気になるように。



「由姫、あれは俺が提案したことじゃなくて桜が‥‥‥」


「さすが由姫ちゃん。あたしと先輩は超熱々ですよ」


「桜!?」



 どうやら桜は俺達の関係を隠すつもりはないらしい。

 現に食事を食べる手を止め、俺の腕にしがみついてくる。



「ちょっ!? 桜。今は食事中だから、手を離してくれ」


「少しぐらいいじゃないですか」


「今日はスキンシップが激しくないか?」


「全然激しくないですよ。これぐらい普通です」



 腕を掴んがまま離さない。どうやらしばらくはこの態勢を続ける気だ。



「むぅ」


「ちょっと待て、由姫!? それは俺の朝ごはんだろ?」



 俺が動けないのをいいことに、朝食のベーコンを1枚取られた。

 あっという間にベーコンは由姫の口の中に入る。おいしそうに食べる由姫の姿が印象的だった。



「別にいいだろう? 減るものじゃないんだから」


「減るよ!!」



 主に俺が食べる朝食が。そんなに大盛りの朝食をもらってきて、俺の食べ物まて取るなよ。



「それならあたしのをおすそ分けします」


「えっ!? いいの」


「はい」


「ありがとう、桜」



 腕から自分の体を離して、箸を取る桜。

 箸で切られた半分のベーコン。それが俺の前に出される。



「はい、『あーーん』して下さい」


「えっ!?」


「『あーーーん』です」



 どうやら桜が食べさせるので、そのままベーコンを食べろと言っているみたいだ。



「待て、桜。それは恥ずかしい。普通に食べよう」


「『あ~~ん』です」


「桜?」


「‥‥‥‥‥」


「わかった」



 こうなったらしょうがない。人もそんなにいないしさっさと食べるに限る。



「行くぞ」



 覚悟を決めてベーコンにかぶりつく。正直恥ずかしくて味なんてわからない。ただもしゃもしゃと食べるだけだ。



「どうですか? お味の方は?」


「よくわからない」



 こんな恥ずかしいことをして、味なんかわかるものか。

 こんなことをした等の桜まで、少し頬を染めていた。



「あら? 朝から2人共熱々ね」


「悠里?」


「おはよう、桜ちゃん」


「日向先輩、おはようございます」



 いつの間にか日向と悠里も俺達のテーブルに座る。

 だが何故だろう。その様子は先程の由姫と同じ様な顔をしていた。



「なんだよ? そんなニヤニヤして」


「よかったじゃない、空。可愛い彼女ができて」


「なっ!?」


「おめでとう、空」



 なんで日向と悠里がそのことを知ってるんだよ。このことを知ってるのは春斗さん達だけだぞ。



「さっき良子さんと会ったの」



 その一言で全てを理解した。あの人、日向達にもそのことを話したな。



「おめでとう、桜ちゃん」


「ありがとうございます」


「よかったな、桜。先輩と付き合えて」


「はい」



 予想通り俺達のことを隠すつもりはないみたいだ。

 良子さん達まで積極的に話されていてはお手上げだ。俺達の関係を隠しても隠しきれるものじゃない。



「それじゃあ幸せいっぱいの先輩から、もう1つ」


「だから由姫は俺のベーコンを取るな!!」


「またあたしがわけてあげますよ」


「もうあれはやめてくれ」


「先輩、おはようございます。そういえば、桜ちゃんと付き合ったんですってね」


「梓まで」


「おめでとうございます。さっそく熱々なカップルを見られて私もうれしいです」


「また厄介な奴だ1人来た」



 思わず頭を抱えてしまう。どうしてこんなに俺の周りには桜との交際を面白がる奴らばかりいるんだ。



「なるほど。これが所謂幸せ税ってやつだね」


「そんな税金あるわけないだろ!!」



 日向にツッコミつつ、梓も交えた混沌とする朝食の時間は過ぎていく。

 いつものような騒がしい朝食となったが、その時間は全く嫌ではなかった。

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