帰り道
その後俺達は春斗さん達に事情を説明して、杉田達を駐車場まで連れてきた。
由姫や桜も手伝ってくれたおかげで、他の怪我人も全員ここに運んでこれた。
「まずは怪我人を安静な場所に移そう」
「場所はどこがいいですか?」
「車にしよう。そこに怪我人達をのせるんだ」
「わかりました」
「車は桜達の乗ってきた車の方でお願い。あっちの方が僕達が乗ってきた車より広いからね」
桜達の乗ってきた車は8人ぐらい平気でのせられるような大きな車だ。
春斗さんの言う通り怪我人を乗せるなら、そっちの方がいいだろう
「あたしも手伝います」
「私も手伝うぞ」
「ありがとう。そしたら2人共手伝ってくれ」
「「はい」」
その後、桜と由姫の力を借りて怪我人達を桜達が乗ってきた車にのせた。
宮園や杉田達4人を無事収容することができた。
「僕は杉田君達を学校に連れて行くよ。傷が深いから早めに見せた方がいい」
「宜しくお願いします」
まずは怪我人の搬送が先だ。春斗さんが学校へ連れて行くのなら心強い。
「そうなると問題はあたし達ですね」
「そうだな。どうやって帰ろうか」
由姫や桜が言う理由もわかる。ここから歩いて帰ると1時間以上の時間もかかってしまう。
いくら俺達が軽症でも。歩いて帰るには骨が折れる。
「運転できる人もいないし、車は置いていくしかないな」
「そうですね。しょうがないですから、歩いて帰るしかないですね」
「そんなことしなくてもいい」
「先輩?」
「何かいい方法があるのか?」
いい方法じゃないけど、1つだけ方法がある。もしかすると皆が歩いて帰らなくてもいい方法が。
「車の運転ですけど、俺がします」
「えっ!?」
「空先輩!? 運転したことあるんですか?」
「したことはない」
まだ免許を取れる歳でもないので、運転したことは1度もない。
だけど車の運転ぐらいなら出来る気がしないでもなかった。
「免許を持っていないのに、本当に運転が出来るのか?」
「大丈夫だ。任せてくれ」
俺の予想では運転したことがなくても、あのスキルがあれば運転が出来るはずだ。
「そしたら俺達の車に乗っていくメンバーは‥‥‥」
「あたしは先輩の車に乗っていきます」
「私もだ」
「それじゃあ桜と由姫は確定として、後は八橋と五月ちゃんか」
怪我をしていないメンバー全員を運ぶとなればこの4人だろう。
行きよりも人数が若干多いが、許容範囲だ。
「空君」
「何ですか?」
「君達には申し訳ないけど、学校についた後怪我人を運ばないと行けないから1人手伝いがほしい」
「俺はいいですけど、誰が春斗さんの手伝いをするんですか?」
「怪我人を運ばないといけないから、出来れば男手が欲しいところだ」
男か。俺は車を運転するから、春斗さんの車に乗ることはできない。
「となると‥‥‥お願いできるのは、八橋しかいないな」
「待ってくれ。何で俺が手伝わないといけないんだ?」
「でも、お父さんの車の方が先に出発するので早く学校に着きますよ」
「それはそうだけど‥‥‥」
「それに梓ちゃんも学校に戻ってる可能性もありますので、早く会うことが出来ますよ」
「なっ、何で梓がそこで出てくるんだ!?」
梓の名前を出されて、明らかに八橋が動揺している。
そんな動揺している隙を桜が見逃すはずがない。
「怪我人を運ぶ手伝いをしている所を見たら、梓ちゃんも八橋君のことを見直すと思います」
「悪いが、そんな単純な手に引っかからないぞ。人を運ぶなんて面倒なことはしたくない」
「じゃあ私が梓に八橋が怪我人のことを放って置いたと進言しよう」
「前野!!」
「それは大変ですね。そんなことが梓ちゃんにしれたら、八橋君の評価が下がっちゃいます」
「くっ!!」
桜もわざとらしく驚く。さすが桜だ。八橋も桜と由姫のコンビに押されている。
「つくづくこの2人を敵にまわさなくてよかったな」
味方にすると心強いが、敵にするとこんなに厄介な相手もいないと思う。
「さぁ、八橋君はどうしますか?」
「‥‥‥わかった。その提案をのもう」
「ありがとうございます。それじゃあ宜しくお願いしますね」
八橋も大変だな。人事だがそう思う。
桜達に言いくるめられたのが悔しかったのか、春斗さんの方に行く八橋のがっくりと落とされた肩が印象的だった。
「八橋君、僕がこういうのもどうかと思うけど、別に無理しなくてもいいよ」
「いえ、約束ですから。早く行きましょう」
さすがに1度約束したからか、八橋も素直に従っている。
なんとなく八橋の扱い方が少しわかった気がした。
「あたし達も車に乗りましょう」
「そうだな」
桜の先導で俺達も車に乗る。
もちろん俺は運転席で、助手席には桜が乗っていた。
「それより、本当に先輩は運転なんて出来るんですか?」
「たぶんな」
「たぶんって、先輩はさっきの発言は確信を持って言ったんじゃないのか?」
「もちろん運転できるって根拠はある」
俺のスキルに騎乗のスキルがある。バイクに乗った時取得したスキルだが、乗り物に使えるスキルだ。
もしかすると車も乗り物なのでつかえるんじゃないかと思った。
「まずはこの鍵でエンジンを入れよう」
シートベルとをして春斗さんからもらった車の鍵をどこにさせばいいかと迷っていると、ふと頭の中にどの様にしてさせばいいか浮かんできた。
「いいぞ」
エンジンがかかるとブレーキを踏み、ギアをドライブに合わせてサイドブレーキを降ろす。
そのままアクセルを入れて車を走らせた。
「うわっ!? 本当に動きました」
「なっ、言っただろ?」
全部スキルのおかげだって事は言わないけどな。桜も俺が車を運転できることに驚いているようだった。
「先輩、もしかして無免許で運転していたのか?」
「無免許運転なんて、するわけないだろ」
由姫も突拍子もないことをいきなり言うなよ。驚くだろ。
「でも、こんなスムーズに運転できるってことはその可能性も否定できませんね」
「そこは否定してくれよ!!」
中学時代日向と同じぐらい俺の側にいただろ!! 桜は一体今まで俺達の何を見てきたんだ?
「う~~ん」
「どうした、五月? そんなに難しい顔をしていて」
「山村先輩って、凄く怖い人ってイメージだったけど全然怖くないね」
その言葉だけを聞いていると、いいのか悪いのかわからない。
なんというか、五月という少女の中で俺の威厳というものがなくなった気がする。
「空先輩は全然怖くないですよ」
「そうだ。見た目は狂犬のようだが、内面はチワワ同然だぞ」
「チワワ言うな」
まるで俺が可愛らしい小動物みたいになるだろ。頼むから2人共、これ以上変なことを言わないでくれ。
「それにしても、桜だけじゃなくて五月もよく無事だったな」
「私は後ろの方にいたから」
後ろにいたからって、普通はただではすまないだろう。
現に6人中4人のメンバーがやられているんだ。この少女がやられていても不思議はない。
「最初は杉田君と宮園君が先陣を切って、ウォールベアーと戦っていました」
「2人がかりか」
正直2人で戦うのも厳しいだろう。現に俺と由姫は手負いのウォールベアー相手でも苦戦したんだ。
「一見すると無謀にしか見えないな」
「そうです。それから八坂先生達がフォローに入ったんですけど、他のウォールベアーも現れてやられてしまいました」
「それで桜がウォールベアー3体を相手にして戦っていたのか」
今考えるととんでもない話だ。昨日の時点で俺と由姫がウォールベアーを相手にして死にかけた話を聞いていただろう。
「俺達の話を聞いていたのに、何でウォールベアーと戦おうとしたんだ?」
「杉田君達はウォールベアーのことを、そんなに強い敵だと思っていなかったからだと思います」
「そうなの?」
「はい。『山村先輩達だから死にかけたんだ』『俺達ならもっと上手くやれる』って言ってました」
なんとも杉田達らしい発言だ。自分の力を見誤ったな。
「だからあたしがあんなに注意しても聞かなかったんですね」
「自業自得だな」
そうとしか言いようがない。杉田達は自分の実力を過信しすぎたんだ。
だからあんなことになる。桜の善戦や俺達の援護がなければ、もっと酷いことになっていただろう。
「ちなみに空先輩だったら、どうしますか?」
「俺? 俺だったら見つからないように逃げるな」
「山村先輩は逃げるんですか?」
「当たり前だろ? 昨日も今日も運よく勝ったけど、次も同じようにいくとは限らないからな」
もし強い相手と戦わなくてもいいのなら、俺は戦わない。
自分の命が1番大事だからな。こういう時は尻尾巻いて逃げるに限る。
「先輩は格好悪いな」
「ある意味安定してますけどね」
「桜も由姫も酷いことをいうな」
声を出して笑う桜と由姫の後輩勢から贈られた辛辣な言葉に対して、思わず苦笑いを浮かべてしまう。
俺は普通のことを話してるだけなんだけど、なんでこんなに批判されるのだろう。
「それよりもそろそろ着くぞ。全員降りる準備をしておけ」
「はい」
「わかりました」
話していたら、いつの間にか学校の近くまで来ていた。
俺は学校の中に入り、運転していた車を駐車場に止めたのだった。
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