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もう1人の勇者

「何でお前が勇者なんだ!!」



 どうしても八橋にそう言われずには言われなかった。

 だってそのスキルは、日向が持っているスキルじゃないか。



「そう言われたって、俺のスキル欄に勇者ってスキルがある」


「スキル?」


「そうだ。俺の特別スキルには勇者ってスキルがある」



 そういえば以前、日向達とスキルの確認をした時、こんなことを話したな。



『そういえば、日向君の勇者ってスキル、固有スキルじゃないんだね』


『うん、特別スキルみたい』



 特別スキルってことは持っている人は少ないが、複数の人が持つことが出来るスキルだ。

 つまり勇者スキルも複数の人が持つことも出来る。



「確かに八橋が勇者スキルを持っていてもおかしくない」


「だから言っただろ? 俺が勇者だって」



 正直認めたくないが、八橋がそのスキルを持っているのだろう。



「先輩、これってどういうことですか?」


「俺もわからない」



 どういうことかわからないが、勇者は2人いる。

 日向に八橋、勇者が2人。一体どうなってるのかこっちが聞きたい。



「それで、先輩が俺に聞きたい事はそれだけか?」


「あぁ」


「それじゃあ、そこをどいてくれ」


「何でだよ!?」


「まだモンスターが残ってる。全員殺さないと」



 八橋は俺のことを見ていない。あいつが見ているのは後ろに残っているのはウォールベアーの子供。

 楽しそうにじゃれあっている子熊達に視線を移していた。



「もしかして、子熊を倒そうとしているのか?」


「そうだ」


「それは子熊がモンスターだからか?」


「そんな当たり前のことをなんで聞くんだ? モンスターは根絶やしにしないと、いつ復讐されるかわからないからな」



 八橋の言っていることはわかる。モンスターを根絶やしにしないと、後で復讐に来る可能性もある。



「八橋が考えはよくわかる」


「わかるなら、そこをどいてくれ」


「悪いが、それはできない」



 気づくと俺は子熊達の前に立っていた。八橋を行かせないように八橋と子熊の間に立つ。



「どうしてだ? ここで子熊を逃がすと後々俺達の脅威になることはわかってるだろ?」


「それはわかってる。だけど、この子熊達はさっきのウォールベアーと違って戦う意思がない」



 この子熊達に戦う意思があるなら、俺だって容赦しない。

 だけどこの子熊達は戦う意思はない。だから別に戦う意味がないからだ。



「今はなくても、後で復讐に来るかもしれないだろ?」


「もし復讐に来たら、その時に戦えばいい」



 別に今戦う必要はない。もし復讐にくるなら、その時考えればいいだろう。



「八橋、悪いけど今回は見逃してくれないか?」


「嫌だ」


「この子熊達は戦う意思が無いんだ。今もこうしてじゃれあってるだけだ」



 この子熊達は戦おうとしていない。ただ2人でじゃれあっているだけである。



「戦う意思がない相手と戦う必要はない!!」


「先輩、何甘いこと言ってるんだよ!!」


「甘いことを言ってるのはわかってる」



 それは自分でも自覚している。でも、この子熊達を倒すわけには行かない。



「相手は子供だ。しかも戦う意思がない。こんな所で無駄な戦いをする必要がないだろう」



 戦意がないものまで倒す必要はないだろう。戦う意思がないなら、戦う必要はない。



「そうです。全く関係ないモンスターと戦う必要はありません」


「桜の言う通りだ」



 俺がこんな考えになったのも、桜といたからだろう。桜や日向達といた日常が俺の考えを変えたといっても過言ではない。



「‥‥‥そこにいる木内のせいか?」


「えっ?」


「そこにいる木内が、先輩の考えを変えたのか?」


「まぁな」



 確かに俺は桜や日向達と一緒にいて変わったと思う。

 甘くなったといえばそれまでだけど、それでも昔よりは成長したと思う。



「先輩には‥‥‥」


「んっ?」


「先輩には‥‥‥失望した」


「失望?」


「そうだよ。先輩は‥‥‥先輩だけは俺と同じだって思ってたのに」



 そう言うと、八橋が剣を上げる。それを見て、俺は慌ててハンドガンで防ごうとする。

 子熊めがけて振り下ろす剣を、ギリギリの所でハンドガンで受け止めるのだった。



「先輩!! 俺の邪魔をするな!!」


「子熊は絶対に倒させない!!」



 今の八橋に子熊を倒させない。絶対に子熊の所に八橋を行かせるものか。



「いいのか? このままかばい続けるなら、先輩を殺すことになるぞ」


「上等だ。悪いが、ただで俺は殺されないぞ」



 それこそ、あいつに一矢報いてやるさ。ただでは殺させない。



「マーーー!?」


「グーーー!?」



 子熊は俺達のやり取りに驚いたのか、山の奥の方へと走っていってしまう。

 そのまま山の中腹の方へと登って行き、やがて姿が見えなくなった。



「ちっ、逃げられた」


「よかったです。クマちゃん達が逃げられて」



 横にいた桜はほっとしているように見えた。



「八橋、さすがにこれはやりすぎではないか?」


「やりすぎ? モンスターを駆逐しないと俺達が死ぬことになるんだぞ」



 いっていることはわかる。確かにあの子熊を逃がした結果、もしかしたら仕返しに来るかもしれない。

 だけどそれはあの子熊たちが大きくなって、俺達を襲いに来た時に考えればいい。



「八橋君、ちょっと先に行きすぎじゃないか?」



 茂みの奥の方から出てきたのは春斗さんだ。

 俺達を見て、あちこちに目を向けている。



「空君に前野さんに桜まで、これは一体どうなってるんだ?」



 この後俺達の様子を見た春斗さんに、こうなった事情を説明するのだった。

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