弱点
「俺が正面からけん制するから、桜と由姫はウォールベアーを仕留めてくれ」
「わかりました」
「わかった」
桜も由姫も聞き分けが良くて助かる。
正直俺の攻撃じゃウォールベアーを倒すのには
どうしても火力が不足だ。
そんな俺が貢献できることといったら、俺はあいつの気を引けばいい。
幸いハンドガンに入っている弾はダムダム弾。それでウォールベアーを弱らせる。
「当たれ!!」
「グォォォ!!」
弾を数発撃つが、全てウォールベアーの爪に防がれてしまう。
相手も警戒しているのか、慎重に行動しているように見えた。
「さすが親玉だな」
自分がやられないように、慎重に行動して攻撃の隙を探している。
やられた後のこともわかっているのだろう。まるでゴブリンキングと戦っている時のことのようだ。
「だけど、お前の相手は俺1人だけじゃないぞ」
俺の攻撃は全て防がれてしまったが、そっちには由姫がいる。
由姫はウォールベアーの前に飛び出した。
「はっ!!」
「グォォ!?」
持っていた刀をウォールベアーに突き立てようとする由姫。
ウォールベアーは驚いていたが、右手の爪で防がれてしまう。
「危ない!!」
防がれてしまうだけならまだいい。一瞬の隙をつき、ウォールベアーが横に凪いだ爪の衝撃で由姫は吹き飛ばされてしまう。
「由姫!!」
吹く飛ばされた衝撃で空中で一回転して、そのまま地面に着地した由姫。
見たところダメージらしきダメージはないようにみえる。
「私は大丈夫だ。それより桜を頼む」
「桜?」
「やぁ!!」
紫の槍を持つ桜が、ウォールベアーに対して槍を突き出す。
右に左に上に下にと高速で槍を振るう桜。その動きは徐々にウォールベアーを追い詰めていく。
「俺が加勢に入らなくてもいいだろう」
俺なしでも桜はウォールベアーを追い詰めている。
先程2体のウォールベアーを倒したのは伊達ではない。
「いける!!」
戦況は圧倒的に桜が押している。だけど俺には、あのウォールベアーがまだ何かを隠しているように見えた。
「何だ?」
桜が攻撃する中、ウォールベアーが息を吸い込むしぐさを見せる。
機から見ればただの深呼吸。その瞬間、直感でやばい攻撃が来ると思った。
「桜、一旦下がれ‼︎」
「えっ⁉︎」
ハンドガンでウォールベアーの背中に向かって銃弾を撃つ。
背中に弾が当たるとそのまま前に体を目につんのめってしまう。
「グォォォ!?」
直後、口から吐き出された氷のブレスが地面に向かう。そして地面を青く染めるのだった。
「何をしたんですか? あのウォールベアーは?」
「わからない」
何かを地面に出したのだけはわかる。
ただ何を出したかわからない。
「空気が冷たいですね」
「もしかしたら‥‥‥」
冷たい空気。青というよりは水色の地面。
「わかったんですか?」
「たぶんだけど、きっとあいつは氷の魔法が使えるんだ」
使えるというより、中に内包されている氷の冷気を吐き出している。
「たぶん、あの胸の所にある青い宝石で氷を精製しているんだ」
胸にはめ込まれた青い宝石。あれできっと氷を精製しているんだ。
「まるで魔法ですね」
「そうだな」
「だけど、ウォールベアーは魔法を使えないはずだ」
由姫の言うとおりだ。今までウォールベアーが魔法を使っている所を見たことない。
「もしかすると、あの宝石は人工的につけられたものなのかもな」
誰かがウォールベアーの胸にあの宝石をはめ込んだんだ。
そうでないと、あんな風に氷を吐くことができるはずがない。
「えぇ!? それってあのクマちゃんも被害者じゃないですか」
「被害者っていっても、あいつは俺達と戦うことを選んでるんだ。容赦はすることない」
戦う気力がないなら別に構わないが、襲ってくるなら話は違う。
「先輩の言うとおりだ。敵が私達を襲うなら、こちらも応戦しないといけない」
「いいな。桜」
「‥‥‥わかりました」
ゴブリン兄弟の時とは状況が違う。戦わない相手には何もしないが、戦う意思を見せる相手に容赦はいらない。
「それで私達はどうすればいい?」
「まずはあのブレスを何とかしないとな」
あのブレスを攻略しないとあのウォールベアーを倒すことは出来ないだろう。
「つまりあの氷のブレスを何とかしない限り、接近戦もできないってことですか?」
「いや、そんなことはない」
あのブレスは青い宝石を経由して体内で生成しているはずだ。
その部分をなんとか出来れば、あいつは他のウォールベアーと同じ。
「あのブレスをなんとか出来れば、あいつを倒すことは可能だ」
「先輩、問題はそのブレスを誰が無効化するのかって話なんだが」
「そんなの誰がやるか決まってるだろ?」
「まさか‥‥‥空先輩」
「俺があいつのブレスを無効化する」
やれるとしたら俺以外いないだろ?
「無茶ですよ」
「無茶じゃない。ちゃんと俺に策はある」
策というほど策ではないが、無効化する算段はついている。
「そんな策、本当にあるんですか?」
「俺に任せろ」
要はあの青い宝石を壊せばいいだけだ。それならここからでも狙い打つことが出来る。
「桜、ここは先輩に任せよう」
「わかりました。あたし達は先輩を信じます」
「そういってくれると助かる」
これで2人への被害は最低限で済む。
後は俺次第だ。
「2人は止めを刺すことに集中してくれ」
「わかった」
「はい」
「いい返事だ」
それは俺にはできないことだ。今の俺では火力が足りない為、あいつ等に致命傷を与えることはできない。
だからそれは2人に任せるしかない。
「2人は両サイドに隠れて、合図をしたら突撃してくれ」
「わかった」
「空先輩はどうするんですか?」
「俺か? 俺はウォールベアーのブレスを無力化する」
スナイパーライフルを構え、ウォールベアーに狙いを定めた。
「桜」
「何ですか?」
「任せたぞ」
「はい」
2人はそれぞれの持ち場へとつく。その間、ウォールベアーは俺を見ている。
「やっぱりお前も狙いは俺なんだな」
この3人の中で1番弱いのは俺だ。それをウォールベアーもわかっている。
「だから俺のことを狙うんだろ?」
弱くてチョロチョロと動く面倒な奴から倒す。
例え俺がウォールベアーの立場でも同じ事をすると思う。
「グォォォ!!」
息を吸い込むウォールベアー。ブレスを吐く前の呼び動作だ。
「悪いが、お前の弱点は既にわかってる」
お前の胸に光るその青い宝石。ブレスを撃つ時、そこが光るのは既にわかってるんだ。
『銃弾の種類を選んでください』
「通常の弾だ」
ここでダムダム弾を使わなくても大丈夫だ。威力のある弾をあいつに向かって撃てばいい。
「お前の弱点、それは胸の宝石が輝いた時」
その瞬間、力を貯めているのだろう。その瞬間を狙えばいい。
「そこだ!!」
スナイパーライフルを構え、青い宝石に狙いを銃のトリガーを引く。
視覚から放たれた弾丸は真っ直ぐ飛んでいく。その弾は胸の宝石に当たる。
「グォ!?」
今の1発だけじゃ宝石がかけただけだ。致命傷にはならない。
「まだまだ!!」
何発も青い宝石に向けて銃弾を放つ。1発の威力は弱い。だけど全く同じ場所に何発も銃弾を打ち込めたら?
あいつの胸の宝石を砕ける確立は上がるはずだ。
「ガォォォォォォォォォ!!」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
俺とウォールベアーの根くらべ。その根くらべで先に根をあげたのはウォールベアー。
青い宝石が砕け、体を抑えていた。
「グォォォォォォォォ!?」
「いまだ!!」
俺の合図と共に、左右から桜と由姫がウォールベアーに襲い掛かる。
ウォールベアーも慌てて対応しようとしているが、体が膨らみそれどころじゃないように見えた。
「「やぁぁぁぁ!!」」
桜が突き刺した槍がウォールベアーの胸に刺さり、由姫がウォールベアーの体を一刀両断する。
ウォールベアーの上半身と下半身が分かれ体が動かなくなった瞬間、勝負は決したのだった。
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