VS ウォールベアー2
「空先輩、1つお願いがあります」
「お願い?」
「杉田君達が怪我をしていて動けないので、手当てをしてほしいです」
「待て、あのウォールベアー達はどうするんだ?」
このままだと由姫と桜の2人でウォールベアー3体相手にしないといけない。
手負いのウォールベアー1体相手に2人でも苦戦したんだ。
元気なウォールベアー3体相手に、まともに戦うことができるはずがない。
「無茶だ。2人だけで、ウォールベアー達に勝てるはずがない」
「大丈夫です。今のあたしは誰にも負けません」
自信を持って話す桜。その自信の源は、さっきの戦いだったのかもしれない。
「本当に行けるのか?」
「大丈夫です」
さっきも桜はウォールベアー3体相手に、互角の戦いをしていた。
今の桜ならもしかしたら、持ちこたえられるかもしれない。
「わかった。手当てを終えたら、すぐ援護する」
「はい、宜しくお願いします」
「怪我人はどこにいる?」
「後ろの茂みに隠れています。。五月ちゃんもいるので、手分けしてお願いします」
「わかった」
俺が行こうとすると、後ろで由姫と桜の話し声が聞こえてくる。
「分担はどうする?」
「あたしは真ん中と左のモンスターを相手にします」
「2体も相手に出来るのか!?」
「あたしに任せてください」
「わかった。桜を信じよう」
「ありがとう、由姫ちゃん」
「その代わり、何かあったらすぐに声をかけてくれ。援護に入る」
「わかりました。その時はお願いします」
頼もしい2人に敵を任せて、茂みの方へと向かう。
そこには涙目で怪我の手当てをしている、1人の少女がいた。
「ダメ、全然血が止まらない。このままじゃ‥‥‥みんな死んじゃうよ」
「おい」
「えっ?」
「怪我人はこの4人だけか?」
「はい、そうですけど」
「代わるから、怪我を見せろ」
とまどう少女を前に、俺は怪我人の元へと行く。
そこには杉田や宮園達がぐったりしており、腕や足だけでなく胸や腹からも出血していた。
「思っていたより深いな」
白いタオルに絶え間なく滲む血。このままにしておくと命の危険がある。
「もしかして、桜ちゃんとよくいる先輩ですか?」
「そうだけど、今は話している時間がおしい。手伝ってくれ」
「わかりました」
1番怪我が深そうな大人の男性の手当てから始める。このスキンヘッドの人は名前は忘れたが、学校の体育教師だった気がする。
アイテムボックスから回復薬を出して、それを飲ませる。
「うっ‥‥‥」
「気づいたか」
「お前は‥‥‥山村‥‥‥‥」
「黙ってろ。傷に触る」
塗り薬を怪我に塗っていく。傷が閉じるまではいかないが、最悪の事態は免れるだろう。
「先輩。今何もない所から、物を出しましたけど?」
「説明している暇はないから。タオルで胸の部分の止血を頼む」
「わかりました」
「俺は他の人達を見るから、その人を頼む」
続いて2人目にも回復薬を飲ませ、傷に塗り薬を飲ませた。
「これで大丈夫。次だ」
3人目に取り掛かろうとした所で、俺の手が止まってしまう。
俺の前には宮園が横たわってたからだ。
「うっ、うぅ‥‥‥痛ぇ、痛ぇよ」
呻く宮園にも思わず手が止まってしまう。
由姫にあんなことをした宮園を、本当に助けていいのだろうか。
「先輩、八坂先生の止血を終えました」
むしろここで死なせた方が学校の秩序の為じゃないか。
由姫も学校で安心して暮らせて、懸念事項が全てなくなる。
「先輩」
だが、見殺しにしていいのか? 例えこいつがやったことが許せなくても、本当にそれでいいのか?
「先輩、先輩!!」
「悪い」
「先生の止血が終わりました。血は出ていません」
「わかった。回復薬と塗り薬を渡すから、宮園の手当てを頼む」
さすがに気持ちの整理がつかない今の状況で、宮園の手当ては出来ない。
ここはこの少女に手当てを任せるしかない。
「最後は、杉田か」
「桜と一緒にいる先輩か」
杉田だけは致命傷は免れているからか、普通にしゃべれている。
怪我も足と腕だけなので、他の人に比べると幾分か軽症だ。
「とりあえず、これを塗ってくれ」
「まさか先輩に助けられるなんて」
俺だって、まさかここで杉田達を助けるとは思わなかったよ。
「じっとしてろ」
塗り薬を塗り、怪我の部分を包帯で巻く。
「これでよし。後は安静にしてればいいだろう」
「木内はどこにいますか?」
「今は由姫と一緒に、ウォールベアーと戦っている」
「由姫? そうか、先輩は前野のことも下の名前で呼んでるのか」
「そうだ。それより、何があった?」
ウォールベアーが3体もいるなんて、よっぽどのことだぞ。
「たまたま狩りをしている所にあいつらが現れたんだ」
「桜は何か言ってなかったか?」
「そっちには行かないように言っていたけど、まさかあんな強いモンスターが出てくるとは思わなかった」
つまり桜の言うことを聞かなかったせいで、ウォールベアーにやられたってことか。
桜とは危険探知の能力も共有しているから敵の強さがわかったのだろう。
「3体ぐらいなら余裕だったと思ったのに」
「自業自得だ」
数が多くても少なくても、まずは相手がどのくらい強いのか様子を見ないとダメだろ。
もしかしたら、杉田達の事だから女子にいい所を見せたかったのかもしれない。
「うわっ!?」
「由姫!!」
由姫の方を見ると、ウォールベアーに苦戦している。
「援護しないと」
「先輩も行くのか?」
「あぁ」
仲間がピンチなんだ。ここで戦わないでどうする。
「杉田達は隠れてろ。そこの女の子は怪我人の手当てを頼む」
「わかりました」
「薬はここにおいておくから。じゃあ、行って来る」
茂みから出て、由姫の援護へ向かう。だがここで、1つ懸念事項が浮かんだ。
「俺のハンドガンでなんとなるのか?」
昨日はウォールベアーに対して、弾が貫通しなかった。
弾をダムダム弾にして、やっと対応できたんだ。
「頼みのダムダム弾はない」
作るにも今は時間がない。作っている間に、由姫に何かあったらまずい。
「やるしかない」
頼みのダムダム弾はない。だけど俺は戦うしかないんだ。
『銃弾の種類を選んでください』
「銃弾の種類?」
頭に聞こえた機会音がそう伝えてきた。
「何だ、それ?」
そう思った時、頭の中に普通の銃弾とダムダム弾の2種類の弾が浮かんできた。
「そうか。特別スキルのクリエートバレットって」
好きな銃弾を選べるってことか。
今俺の頭の中にはダムダム弾と通常の弾2つが浮かんでいる。
「そうか、1度使用した銃弾は使えるのか」
便利な能力だ。そういうことなら使う弾は決まってる。
「ダムダム弾だ」
ハンドガンに弾が入ったことを確認すると、ウォールベアーに狙いを定める。
由姫が刀でウォールベアーの爪の攻撃、受け続けている。
「由姫、右に避けろ!!」
「わかった」
ウォールベアーの攻撃を由姫は右に避けた為、爪の攻撃は空を切る。
大振りをしていたせいか、ウォールベア-の動きが一瞬止まった。
「そこだ!!」
真っ直ぐ飛んでいく銃弾はウォールベアーの右腕へ。当たった瞬間、ウォールベアーのうめき声が聞こえるのだった。
「由姫!! 今がチャンスだ!!」
「うぉぉぉぉ!!」
由姫が相手の懐に踏み込み剣を振るう。
「グォォォォ!!」
「まだまだぁぁぁ!!」
由姫の攻撃に対してウォールベアーは防戦一方。右腕をかばいながら戦っており、由姫が押している。
「桜は?」
あいつはウォールベアー2体を相手にしている。
由姫よりも状況はまずいかもしれない。
「いた!!」
「やぁぁぁぁ!!」
桜は剣と槍を器用に使い、2体のウォールベアー相手に善戦している。
「いや、善戦どころじゃない」
明らかに押している。ウォールベアーを2体も相手にしているのに、苦戦するどころか圧倒していた。
「桜ってあんなに強かったっけ?」
前までの桜なら、1体相手でも苦戦したはずだ。
それなのに余裕で2体を相手にしている。
「これで終わりです」
いつの間にか桜は1体のウォールベアーの胸に槍を刺し倒す。
「すごい」
今の桜は日向と同じぐらい、いやそれ以上強い。
気づくと2体目のウォールベアーの心臓に剣を突き刺して、無事2体のウォールベアーを倒すのだった。
「そういえば、由姫は?」
「はぁっ!!」
由姫の方もウォールベアーの首を跳ね飛ばし、3体のウォールベアーを倒すのだった。
「2人共、無事か?」
「余裕です」
「私もだ」
ウォールベアーを倒した2人はゆっくりと俺の所まで戻ってくるのだった。
本日の夜、もう1話投稿します
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