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前職はトラック運転手でしたが今は神の代行者をやってます ~転生志願者を避けて自分が異世界転移し、神の代役を務める羽目になったトラック運転手の無双戦記~  作者: Ineji
第五章 ゴルダボル要塞攻略編

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第五十四話 カナレ防衛戦

「セイミア!」


 レノクロマが声を上げた。

 そこにはサショラ・シマホルの姿をしたセイミアが立っていた。


「セイミア様! 今まで……」


「待たせて御免なさいね、レノクロマ。ボーガベルの動きを色々探ってて時間が掛かったの」


 モラルドの言葉をセイミアが遮る。


「そうか。いや、良いんだ」


 そう言ったレノクロマが一瞬戸惑った。


 何かが違う。

 セイミアから違和感を感じたのだ。


「どうしたの?」


「い、いや。それでボーガベルの動向は?」


 慌ててレノクロマは打ち消した。

 目の前のセイミアは確かに自分の知ってるセイミアに間違いない……。


「勿論掴んでるわ。バッフェを併合して国力にゆとりの出たボーガベルは王都パラスマヤの喉元に位置するこのカナレを占拠することにしたみたい」


 レノクロマや第十軍の面々の前でもセイミアはサショラ・シマホル姿の時は何時もの令嬢風のですわ口調は使わない。


「なんと、あの田舎国家が大胆不敵な」


 モラルドが唸る。


「田舎国家だったのはもう一年以上前の話。そしてその原因がダイゴ将軍の率いる『例の兵士』の部隊。それがシャプアに移動してきたわ」


「ダイゴ将軍? 聞いた事がありませんな。何者なのです?」


 モラルドの問いにすぐさまセイミアが答える。


「ダイゴ・マキシマ。その出自までは分からなかったけど、今はカイゼワラ州の領主。王国参与の地位にも就いているわ。第八軍の敗戦の時に指揮を取り、その功が認められて取り立てられたそうよ」


「ふうむ、そのダイゴ将軍が率いる部隊の詳細は?」


「ええ、流石に情報防御が固くて苦労したけど、魔法によって強化された兵士という線が濃厚ね」


「な! それは伝説の土魔法ではありませんか! まさかそのダイゴ将軍は……」


「まぁ悪魔の使いなんてのは非現実的だけどダイゴ将軍自体はかなりの魔法を使えるみたい」


「……そうだな、だがそいつも人間である以上倒せない事は無いだろう」


 レノクロマがボソッと言った。


 セイミアを始め一同はまたかという顔を見せる。


「そうそう、事前にカーンデリオには増援の要請は出しておいたのだけど」


 そう言ってセイミアは封蠟の施してある封書を取り出した。


「事前にですか?」


 モラルドが訝しむ。


「あら、ボーガベルにいても支援要請の封書を出すことぐらい造作も無いわ」


 そう言ってセイミアは封書をモラルドに渡す。

 旧ボーガベルならいざ知らず、バッフェを併合した今の新生ボーガベル王国はモシャ商会も容易に活動範囲を広げられた。

 現にパラスマヤにもバッフェの出自だが中身はモシャ商会そのもののカンモ商会が商いを始めている。


 モラルドが封蠟や封書に施してある隠し文様などを丹念に調べ、


「確かに」


 と言って封書を開封して一読する。


「それで、返事は?」


 テネアがじれったそうに聞く。


「帝国軍はこれ以上の戦力をカナレに送る余裕は無い。第十軍は単独でカナレを絶対死守すべし」


「ふざけるな!」


 怒鳴ったのはルキュファだった。


「それじゃまるで第十軍はカナレで討ち死にしろと言っているようなもんじゃないか!」


「そう、軍はサシニアとゴルダボル要塞に三、四、五軍のどれかを送るつもりで準備を進めているわ。つまり第十軍は捨て駒になれということ」


 サシニアはカナレから西の中規模都市で、ゴルダボル要塞はその中間点の峠に築かれた要塞だ。

 帝国の軍令部は最初からここを絶対防衛線として準備を進めていた。

 カナレの要塞化などは所詮目くらましに過ぎない。


「それではあまりにも! 何のために今までレノクロマ様が……」


 テネアも憤懣やる方無い表情で叫んだ。


 帝国では作戦立案の大部分は軍令部が行う。

 当然主だった人員は有力貴族の子女で占められるここがレノクロマ率いる第十軍をよく思う筈も無く、ドブさらいと揶揄される作戦はここから発令されていた。


「そうね。散々良いように使い回されて最後はポイ。まるでボロ雑巾のようだわ」


「セイミア様! いくらセイミア様といえども口が過ぎますぞ!」


 モラルドが声を荒げた。


「いい、セイミアの言ってることは事実だ」


「し、しかし……」


「皆の気持ちは分かる。だが俺達は帝国の兵だ。与えられた命令は遂行しなければならん」


「しかしレノクロマ様、これでは……」


「勿論むざむざやられるつもりは無い」


「カナレに籠城という手もありますが……」


「あら、それはレノクロマの選択肢には無いわよね」


 セイミアが言うとレノクロマは頷いた。


「当然打って出る」


「し、しかしそれでは……」


「やはり何時ものをやるの?」


「駄目か?」


「駄目と言っても聞くレノクロマじゃないわ。でも今度の相手は相当分が悪いわよ」


「そんなのはいつもの事だ」


 セイミアが聞いたのはレノクロマの得意とする、自身の一騎駆けだ。


 第十軍随一の戦闘力を持つレノクロマが先頭を駆け突撃し血路を開く。

 おおよそ無謀と思えるこの戦法で第十軍は幾多の勝利を拾ってきた。


「いいわ、既にお膳立てはしてあるから思い切り行ってきなさい」


 無謀とも言える突撃の裏にはセイミアの数々の工作があった。

 事前の敵兵や敵将の布陣、伏兵の有無、地理地形、気象。

 それだけではなく敵兵に送られる糧秣に下痢や腹痛を催す草を混ぜる等の裏工作も平然とやって来た。


 それがあってレノクロマは心置き無く前だけを見て突撃できたのだ。


「具体的な策がおありでしたらお教えいただけますか」


 モラルドの言葉にセイミアは持っていた羊皮紙に図を描きながら説明を始める。


「敵は第六軍の時のように左右を厚くしての包囲陣形を取ってくるはず。逆に言えば中央が一番手薄なの。だからそこを一点突破して敵の本陣を叩く。これが最善ね」


「しかし……」


「敵の例の兵士は全員重装歩兵だからそこまで素早い動きは出来ないわ。だからこれは速さが重要よ。レノクロマ、出来る?」


「当たり前だ」


「でも本陣にたどり着いて終わりじゃ無い。ダイゴ将軍にはメアリアとシェアリアが護衛に付いているわ」


「何と! あの三宝姫の! なぜ一介の将軍の護衛に王族が……」


「そのダイゴ将軍がエルメリア女王達三宝姫を陰で操るボーガベルの真の支配者って事でしょうね」


「はん、姫様誑し込んで将軍になるとはさぞや良い剣をぶら下げてるんでしょうねぇ、そのダイゴとやらは」


「ルキュファ……下品」


「……」


「どうした、セイミア?」


 一瞬赤くなりながらも苦い顔をしたセイミアにレノクロマが聞いた。


「何でも無いわ。とにかく騎士のメアリアと魔導士のシェアリア。その二人に相対するにはこちらも相当の戦力を付ける必要があるわ」


「当然オレとテネアって事だな」


「そうね、頼めるかしら」


「任しとけ! オレがそのダイゴの短剣を切り取ってカナレの門に晒してやるよ」


 ルキュファが胸をバンと叩いて言った。


「わ、私もそのダイゴとやらの丸焼きを作ってご覧に入れます!」


 負けじとテネアも言う。


「そ、そう、頼もしい限りね……」


 セイミアが複雑な表情で言ったがその意味はレノクロマには分からなかった。







 翌日の夕方、シャプアからの部隊が峠を抜けた地点で展開しているのが確認され、カナレは慌ただしい空気に包まれた。


「今回は敵の使者が来る前に討って出るわ」


「しかしそれでは戦の作法に……」


「仕方ないわ。霧の出る時間はごくわずか。悠長にそんな事をやってる余裕は無いの」


 困惑するモラルドにセイミアは断じた。


「分かった」


 レノクロマが頷く。


「本来なら夜討ちを掛けたいけれど残念ながら今の月では無理。だから早朝の霧を利用させてもらうわ。モラルド、例の手配は?」


「はい、街から集めた鍋釜を被せましたが、この様な物で……」


 モラルドが見せたのは木の枝を大きな三つ又のフォーク状に結わえた物に鍋や釜を被せ、木の板を切った剣や槍らしきものを貼り付けた、案山子とも言えないような代物だった。


「何しろ時間も材料も無いから、でもこれで十分。霧がこれを兵士に見せてくれるわ。両翼はこれを持ってなるべく敵兵を広く散開させるように。いいわね?」


「はっ!」


 両翼を指揮する指揮官たちが返事をする。


「さて、これで一通り準備は完了ね。じゃ私は戻って休ませてもらうわ」


 一瞬目を瞑ったセイミアがそう言って、部屋を出て行った。


「……そうだ、セイミア」


 確認したい事を思い出し部屋を出たレノクロマだったがそこにセイミアはいなかった。


「レノクロマ様どうしました?」


 佇むレノクロマに通りかかったテネアが声を掛ける。


「いや、セイミアが通らなかったか?」


「いえ? お見かけしてませんが?」


「そうか……」


「レノクロマ様、あまりセイミア様を追いかけてばかりではセイミア様もお疲れになりますよ?」


「そうか……そうだな……、俺も部屋に戻る」


「では私がお送りしますねー」


「そんな歳では無いぞ」


「いいじゃないですかー」


 セイミアの所在を気にしつつ、テネアに引っ張られるようにレノクロマはその場を後にした。






 翌朝、まだ日の出ていない内に第十軍はカナレの門を出て行く。

 最後にレノクロマを先頭に先発隊百騎が配置についた。


「頑張ってね。絶対死んでは駄目よ」


「……ああ」


「ん? どうしたの?」


「……お前本当にセイミアだよな?」


「当たり前よ。あなたが十歳の頃までしてたおねしょの包布を内緒で乾かしてあげたセイミアよ?」


「わ、分かった。行ってくる」


 顔を赤くしながら立ち込めた霧の中へと馬を走らせるレノクロマの後を笑いを堪えながら先発隊が続く。


「そう、セイミアですわ。生き残りなさいレノクロマ……御主人様の為に」


 見送るセイミアがそっと呟いた。




「十歳までだってさ」


 霧の中、馬上のルキュファが後ろに乗るテネアに言った。

 カナレ周辺は幾度となく演習で駆け回った。

 今さら霧でまごつく第十軍では無い。


「あら、私は全然気にしないわ。ルキュファは気になるなら諦めても良いのよ?」


「馬鹿言うな。オレは違うモンを搾るから良いんだよ」


「……アンタって本当に下品ね」


「おっと、お喋りはここまでだ。突っ込むから黙ってろ!」


 テネアがルキュファの紅い髪越しに見ると霧が晴れた先に散開した重装歩兵の群れが迫ってくる。


 ルキュファはレノクロマの乗る馬の左側に自分の馬を寄せる。

 左手に持った重盾でレノクロマの死角を護る為だ。


 至近の重装歩兵達が緩慢な動きでレノクロマ達に斬りかかってくる。


「全員側面を厚くしろ! レノクロマ様を護れ!!」


 ルキュファの号令で後続の兵たちが盾を構えて左右に出る。


 敵の重装歩兵の斬撃は重くはあるが辛うじて受け止められる。


「! 思ったほどじゃねぇな! これならいけるぞ! レノクロマ様!」


「わかった!」


 中央部に僅かに開いた隙間にねじ込むようにレノクロマ達は奥へと進んでいく。


 馬をやられる者、落馬する者が次々と出るが、皆その場で敵兵を足止めするべく斬り込んでいく。


 レノクロマ様を敵本陣へ!


 皆その一念で戦っている。


「見えた! 本陣だ!」


 二キルレ程先にボーガベルの旗を掲げた天幕が見えてきた。


「何騎残ってる!?」


 振り返りもせずレノクロマが聞く。


「……じゅ、十です!」


 テネアの叫びに


「上等!」


 そう言ってレノクロマは馬にひと鞭入れると、愛剣ゴシュニを抜いた。

 十五歳で師匠から賜ったゴシュニ。

 何度となく戦場を駆け抜け、何度も命を拾った。


「突っ込むぞ!」


 そう言ったレノクロマの目に純白の馬にまたがる騎士が映った。

 騎士はこちらに向かって単騎で駆けてくる。


「あれは……」


「レノクロマ様! アイツはオレに任せろ! 本陣へ!」


 ルキュファがそう言うやレノクロマの前に出て騎士に向かって突進していく。


「頼んだぞ! ルキュファ!」


 そう叫んだレノクロマに『火弾ファイヤバレット』が飛んできた。


 だがそれはレノクロマの前で弾け飛ぶ。


 テネアが唱えた聖魔法『聖盾』の為だ。


魔導士シェアリアもいるのか!」


 見れば少し離れた所に魔導服を着た女が立っている。


「ルキュファ! アイツは私が!」


「任せた!」


 テネアは馬から飛び降り一回転して着地する。

 すぐさま魔導杖をかざし、敵の魔導士の元へ駆けていく。


「貴女がシェアリアね!? 一度手合わせしたいと思ってたわ!」


 少し離れた所でテネアが叫んだ。


「……貴女は?」


「私はエドラキム帝国第十軍魔導士テネア!」


「……ふうん」


 シェアリアはあまりテネアには興味無いように辺りを見回している。


「さすが天才と言われたお姫様は態度も悪いわね! 覚悟しなさい!」


 二人は同時に呪文を詠唱し始めた。


『火弾!』


「……火弾」


 二人同時に火弾を撃つ。


 シェアリアは火弾を避けたがテネアは聖盾を展開しこれを弾く。


「……火魔法と聖魔法?」


「そうよ! 驚いた?」


「……少し」


「ん~何かむかつくわね!」


 再び二人は呪文を詠唱し、火弾を放つ。


 いける! あのシェアリアを倒せる!


 まだテネアにはとっておきがあった。




 一方レノクロマに向かっていた騎士にルキュファが馬ごと体当たりをかけていた。


「レノクロマ様!」


 レノクロマと残った兵はその隙に本陣へと駆けていく。

 騎士は追おうとするがその前をルキュファを乗せた馬が立ち塞がった。


「オレを無視しないでもらいたいなぁ!」


「お前は?」


「オレは第十軍第一部隊のルキュファ。お前がメアリアだな」


「そうか、お前か」


「ん? オレを知ってるのか?」


「知らんが知っている」


「訳の分からんことを……とにかく相手になってもらうぜ!」


「いいだろう、我が主を侮辱する輩には絶対の死を」


「は?」


 何の事か分からず一瞬ひるんだルキュファの面前にメアリアが迫りバルクボーラを薙いだ。


「ぐおっ!」


 とっさに出した長盾ごとルキュファは馬から弾き飛ばされるが身体をひねって着地する。


「くっ、なんて馬鹿力だい!」


 見るとメアリアも馬から降りている。


「流石騎士様は義理堅いんだな」


 そう言ってルキュファは破砕剣と長盾を構えた。

 破砕剣はその名の通り切れる事よりも打ち砕くことを目的とした剣である。

 幅広且つ分厚い刀身は生半可な剣を容易に叩き折る威力がある。

 メアリアは何も言わずバルクボーラを構えた。


「うりゃああああ!」


 長盾をかざしルキュファが突撃する。

 相手の視界を妨げ、破砕剣の軌道を読ませようとさせない。


 だが、


 メアリアは真向からバルクボーラを振り下ろした。

 長盾の上辺にバルクボーラが食い込み、その勢いで長盾が大地にめり込む。


「何だと!?」


 ルキュファが驚愕したのもつかの間、


「むん!」


 気合と共にバルクボーラが長盾を真っ二つに破断する。


「もらった!」


 その隙をすかさず狙ったルキュファが破砕剣を二つになった長盾の間に突き込む。

 だがその腕に鈍い衝撃が走った。

 メアリアが神速の速さで斬り上げたのだ。

 破砕剣が真っ二つになりルキュファの手から吹き飛ばされた。


「そんな……」


 一瞬で武装を全て失ったルキュファが呆然とメアリアを見る。

片手だけで破砕剣を両断する。

 とても人間技とは思えなかった。


「お前……一体……何なんだ……」


 ルキュファの全身を恐怖の震えがおこりの様に襲った。

 メアリアは何も答えずにバルクボーラを振るった。




「とっておきを見せてあげるわ!」


 聖盾によってシェアリアの攻撃を凌いでいたテネアが叫んだ。

 呪文の詠唱が完了したのだ。


「炎弾!」


 火弾とは比べ物にならない大きさの炎の塊がシェアリアに直撃した。


「!」


 シェアリアが炎に包まれる。


「やった! あのシェアリアに魔法勝負で勝った!」


 テネアは嬉しさの余り飛び上がった。


 これでレノクロマ様に褒めてもらえる。

 あわよくば……。


 そこまで思い描いてた時、信じられない光景が目の前に展開された。

 炎の中からシェアリアが全くの無傷で現れた。

 身体はおろか、髪も服も焦げてすらいない。


「そ、そんな……何で? どうして?」


「……素質は良いけど、残念」


「ば、馬鹿にしないで!」


 テネアは再び聖盾を展開し、もう一度炎弾を撃とうと詠唱を始めた。

 シェアリアも呪文を詠唱する。

 だがそれは呪文というより歌を歌っているかのようだ。


 なにそれ……。


 シェアリアの周囲に魔素が集まってるので呪文の詠唱には間違いない。


 だけどこれは……。


 そうテネアが思った瞬間。


「……炎弾」


 シェアリアの放った炎弾が聖盾に直撃し、これを吹き飛ばす。


「あうっ!」


 その衝撃でテネアは後ろに尻もちをついた。


「ど、どういう事……」


 シェアリアの炎弾はテネアのそれよりおおよそ三分の一の詠唱で放たれた。


「まさか、超高速言語詠唱?」


 他大陸の何処かに高度の魔法文明を誇る国があり、そこでは独自の超高速言語を使った呪文詠唱で更に短時間で呪文を発動できるという。

 テネアも当然それを知ろうとしたが、東大陸のエドラキム帝国でもその内容はおろか国名すら知る事は出来なかった。


「貴女、それを何処で覚えたの!?」


 テネアは戦いを忘れ思わず聞いた。


「……私が創った。色々組み合わせて」


「な……」


 テネアは言葉が出なかった。


 超高速言語を創る?


 そんな事が一介の、自分の同年齢の少女に出来るはずがない。

 出来るとすれば最早それは人の所業では無い。


「……でも、こんなのは只の余興」


 そう言ったシェアリアが両腕に赤い魔法陣を展開した。


「…………」


 テネアはもはや何も言えずにいた。


 余りにも自分の常識とかけ離れた事が立て続けに起こり、思考が完全に停止してしまった。


「……丸焼きになるのは貴女。『炎爆弾フレイムボンバー』」


「え……」


 魔法陣から撃ち出された巨大な火球が自分に迫るのをテネアは為すすべなく見ているしかなかった。

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