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前職はトラック運転手でしたが今は神の代行者をやってます ~転生志願者を避けて自分が異世界転移し、神の代役を務める羽目になったトラック運転手の無双戦記~  作者: Ineji
第四章 タランバ奪還編

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第四十六話 獣化転換

 ハシュフィナはカナ・ビロラの舳先に座って南を眺めていた。


「シャガ……デンズ……私……どうしたらいいの?」


 交易商人から東大陸のボーガベル王国が急速に力を付け、国内では大帝国を相手に奮戦し、西大陸のオラシャントの危機を救ったという話を聞き、この国なら助力してもらえるかと安易に考えていた。

 シャガが死の間際に言った、ビリュティスがボーガベルにいるらしいという話もその考えを後押しした。


 叔父である国王の反対を押し切り、シャガ達が命を懸けて船出を助けてくれた。

 運よくビリュティスにも再会できた。


 だが。


 自分は何も持っていないじゃないか。


 国を動かすという事はそれなりの対価を支払わなければならない。

 南大陸でも当然の価値観だ。


 それなのに自分は安易に窮状を訴えて頼めば派兵してもらえると思っていた。

 他国に海を越えて兵を送る。

 これがどれだけ大変な事かまるで分かっていなかった。

 無駄にしないと誓ったはずのシャガやデンズの死がまるで無駄に思えてしまう。


 そしてビリュティス。


 きっとビリュティスは一緒に派兵を頼んでくれると思っていた。

 だが、彼女は何も言わなかった。


 あの時のビリュティスとのやり取りが思い出される。


「どうして……何も言ってくれなかったの?」


「私は今はご主人様の奴隷です。奴隷が口を挟むことは出来ません」


「だって……タランバが滅んで、ハフカラももうすぐ無くなるかもしれないんだよ……ビリュティスはそれで平気なの……」


「……ご主人様のお決めになった事です。私には意見する事は出来ません……」


「ふざけるな!」


 故郷を捨てて逃げ出し、その先で自ら奴隷になって……。

 俄かには信じ難かった。

 タランバにいた頃の彼女なら真っ先に自分を後押ししてくれたはずだ。

 だが今の彼女の態度はそれを躊躇っている様に見える。

 ただ奴隷になったという以外の何かが彼女を押しとどめているようだった。


「一体何があったというの……」


 そう呟いた時。


「ハシュフィナさん? ちょっとよろしいかしら」


 構えて後ろを振り向くとそこにエルメリアとヒルファがいた。


「あ、あなたは……?」


「私はエルメリア・ボーガベル。ボーガベル王国の女王をしておりますわ」


 女王様!


 ハシュフィナの心に一筋の光が差した。

 慌てて平伏する。


「し、失礼しました! 女王様! 私! ハフカラのハシュフィナ・クナ・ケルシオスと申します!」


「うふふ、聞きましたわ。元気の良いお姫様ですのね」


「い、いえっ! あのっ!」


 ハシュフィナの顔が赤くなった。

 この女王様の澄んだ瞳は何物をも見通しているかのようだ。


「ちょっとお話しましょうか」


「は! はい!」


 ハシュフィナに取っては願ってもない機会だった。

 とにかく少しでも女王様の理解を得られれば……。

 舳先に三人で座った。


「まず、ダイゴ候の仰った事はご理解できますね?」


「はい……ボーガベルの置かれている状況は理解できました」


「今はバッフェという大国を併合し、エドラキム帝国とのにらみ合いを続けている微妙な時期。その均衡が崩れれば多くの民が辛苦を被ることになるのです」


「はい。私の思慮が足りませんでした……しかし……」


「分かっています。ハフカラの民も又苦しんでいる。貴女はそれを何とかしたい。だから単身危険を冒してまでこの地にやって来た」


「はい。その通りです……」


「ダイゴ候とて本心は貴女の手助けをしたいと思っているのです。貴女が……私達がワン子さんと呼んでる方、そのご友人なら尚更です」


「では……」


「しかし、国としての姿勢は先程申した通りです。例え王家の人間とは言え人一人が助けてくれと言っておいそれと兵を派遣する訳には行かないのが国なのです」


「分かります……ですが」


「そう、『ですが』です。ダイゴ候はあなたがその『ですが』をどうやって押し通すか。それを見たいのだと私は思います」


「それは……どういう事でしょう」


 ハシュフィナは訳が分からなくなってきた。


 国としてはおいそれと派兵は出来ない。だがそれを押し通す何か?

 それが分かっていれば最初からやっている。


「例えば貴女は派兵の対価として何かを差し出せますか?」


「……何も……ありません……ハフカラは……貧しい国で……何も……」


 それこそ無理な話だった。

 ハシュフィナは姫でこそあれ本家筋からは外れた傍流だ。

 自由になる土地も財も何もない。


「以前のボーガベルも貧しい国でした。エドラキム帝国による侵攻で滅亡の淵に立った時、先代国王は私達三人を帝国に差し出す事で国体を維持しようとしました」


「え……しかし……まさか! 私? い、いや……私なんか……とても!」


「うふふ、あなたも十分価値はありますよ。でも重要なのは貴女がダイゴ候にその価値をどう知らしめるかなのです」


「価値を知らしめる……」


「私を差し出すので助けてください。それでもダイゴ候は受けてくれるでしょう、でも本当に重要なのは貴女には貴女なりの自分の価値の賭け方があるという事では無いでしょうか」


「私なりの価値の……」


「今夜じっくり考えてみなさいな。きっと出した答えにダイゴ候は応えてくれるはずです」


「…………はい」


「このヒルファを付けます。何かあったらこの子に申し付けてください」


「あ……女王様、ありがとうございます……」


「うふふ、いいのですよ」


 そう笑ってヒルファを残し、エルメリアは去って行った。


「私の価値……それは……」


 ハシュフィナはぎゅっと握ったおのれの拳を見つめた。

 エルメリアの言いたかった事がおぼろげに浮かんできた気がした。




 翌日。


 もう日も随分と高くなり、もうじきクニエスに到着という慌ただしい時に、ハシュフィナが自分から俺の所へやってきた。

 酷く思いつめた、それでいて決心を固めた顔だった。

 昨晩はヒルファの所で寝たらしい。

 朝一番でヒルファが知らせに来た。


「私と勝負してください」


「勝負? なんで?」


 意外な発言に俺が聞き返すと即座にハシュフィナは言った。


「エルメリア女王陛下のお話を聞きました」


 多分帝国へ奴隷姫として献上されそうになった話だろう。

 一体誰に聞いたのやら。

 大方察しはつくが。


「それで、君は一体何を差し出すのかい?」


「私自身です。私を差し出します。それでどうかハフカラに派兵してください」


「その前に君は君自身がそれに見合う価値があると思っているのかい」


「それをダイゴ様に認めて頂くために勝負していただきたいのです」


「ほう」


「私には他に何もありません。これしかないのです。何卒お願いします」


 成程、ただ自分を差し出す、って訳じゃなく自分はそこまでの価値があるという事を自他ともに証明する為に勝負をするって事か。


 多少短絡的で乱暴な考えにも思えるが、確かに価値はある。

 なるほどただ奴隷になるので派兵してくださいってのよりはよっぽどいいじゃないか。


 果たして誰かさんの入れ知恵なのか。

 エルメリアは何も言わずいつものようににこやかにしている。


「で、君が勝ったら」


「ハフカラに派兵してください。その上でダイゴ様にお仕え致します」


 まぁ、当然そうなるな。


「負けたら?」


「私をお好きになさってください。殺して頂いても構いません」


 やはり命を賭けて来た訳だ。


「分かった、その提案受けよう」


「ご主人様!」


 セイミアが口を挟もうとする。


「いや、セイミアの言いたい事は分かる。確かにまだ国内の基盤が固まらない内に他大陸に干渉するのは時期尚早だ。だが彼女は言って見ればたった一人で俺達に戦争を挑む積もりなんだ。自分とハフカラの命運を賭けてな。誰かさんも俺に単身勝負を挑んできたじゃないか」


 返り討ちにしたけどな。


「それは……確かにそうですが……」


 顔を赤くしてセイミアは下がった。


「ただし、勝負の相手は俺じゃない。ワン子だ」


「え?」


 ハシュフィナが戸惑った表情を浮かべる。


「当然だろ? 俺が戦ったら君の価値を判定出来ないじゃないか」


 というよりこれはハンデだ。流石に今明かすわけにはいかないが。


「それは……」


「勿論ワン子にも本気でやってもらう。それともお友達とでは本気は出せないか?」


「……分かりました。約束は守ってください」


 暫く俯いていたハシュフィナだったが決心したように顔を上げていった。


 お、自信があるのか。


「よし、話は決まった。ワン子それでいいか?」


 ワン子は一瞬だけ辛そうな顔を見せたがすぐに何時もの表情に戻った。


「畏まりました」


 そう言ったワン子を見るハシュフィナの表情も厳しいものになった。


 クニエスに到着した俺達はカナ・ビロラを出て郊外に停泊中のアジュナ・ボーガベルにカーペットで移動した。

 流石に二人が本気を出したら船が壊れかねない。


 ハシュフィナはカーペットに少し驚いた表情をしたが、硬い表情のまま乗っていた。




「では、両者前へ」


 アジュナ・ボーガベルの格納庫内。

 俺の前で二人が対峙する。


「ビリュティス、本気で行くよ」


「来なさい、ハシュフィナ」


「はじめ!」


 ハシュフィナは自分の得物を抜いた。

 握りがトンファーのような形をしているが棒の部分がスピードスケートのような片刃の剣になってる。

 切っ先は両方に付いている。また握りにも微妙に角度の付いたガードが付いてあり、まるでカイザーナックルのようだ。


 ワン子も双短剣を抜いた。


 先にハシュフィナが仕掛ける。


「セィッ!」


 ワン子の懐に飛び込んでからの短いほうの切っ先での突き。

 当然ワン子は寸でかわすが握りを回し今度は長いほうの切っ先が振り下ろされる。

 更にそれをかわすと次は直蹴りが放たれる。


 又それをかわすとすかさず短い方がまた飛んでくる。

 この連撃が一瞬の内に次々と襲ってくるが、ワン子も寸で見切ってかわしていく。


 ハシュフィナの闘法はこの変幻自在な得物と体術を組み合わせた物のようだ。

 全身これバネのような柔軟さと鍛え上げられた筋肉がこれを可能にしているのだろう。


 ワン子も体術の組み合わせを使うが双短剣はハシュフィナの得物程の変幻さは無い。


「そこっ!」


 くるっと回ったハシュフィナが後回し蹴りを放とうとする、いや、あれはフェイクか?

 右足は高々と上がり上段からの変則的な蹴り降ろしになる。


 これもワン子はバックステップで寸での所でかわすがそこへ振り下ろされた得物が来た。

 不自然な体勢でこれをかわした瞬間を狙って二撃目の足が振り下ろされる。


 だがワン子は身体を捻って下段からの回し蹴りを放ち、交差した足で絡め取る。

 おおっ、足技だけのドラゴンスクリューみたいだ。


「!」


 ハシュフィナの体が一回転するがその最中に得物の突きが繰り出される。


 初めてワン子が双短剣の片方で受けた。

 キンと高い音が響き、両者が飛んで距離を置く。


「ビリュティス……腕は鈍ってないね」


 全く息も上げずにハシュフィナが言った。


 ワン子も勿論息は上がっていない。

 状態異常無効のスキルしか付けて無いとはいえ、眷属であるワン子の強みは疲労が全く無い事だ。

 だから息も上がらないから攻撃が鈍る事は全く無い。

だがそのワン子に全くハシュフィナは引けを取ってない。


 双方が得物を構えなおす。


「フッ!」


「ハッ!」


 瞬間的に双方が前に出、拳、蹴り、そして得物の連打が繰り出される。

 腕や足がまるで何かを振り回すような速度で繰り出されていく。

 それが交差するたびに何かをはじく音や鋭い金属音が絶え間なく響く。


 これが獣人同士の戦闘か。

 戦闘慣れしたメアリアも呆然と見ている。


 無限に続くラリーの様な連撃の応酬だったがやはりハシュフィナの息が上がって来た。

 ふっと息をついたその隙に腹にワン子の一撃が入る。


「くっ!」


 その勢いを逃しながらハシュフィナが後ろに下がった。

 だがふうっと息をついただけでもう呼吸が整っている。


「ハシュフィナ……腕を上げましたね」


 ワン子が静かに言った。


「ずっとあなたに追いつき……いいえ、追い越したかった! そして追い越す! シャガ達や国のみんなの為にも!」


 そう言ったハシュフィナは目を少し細めた。

 そして突如歌を歌い始めた。

 高く澄んだ声が響き渡る。

 その歌は聖歌のような荘厳さと清らかさを響かせる。

 そう、まるで詠歌チャントの様な旋律だ。

 だが歌詞は分からない。

 翻訳されない?


 その時周囲の空気に変動が起こった。

 いや、空気じゃない。これは……。


「! 魔素の急変動!? どうして!?」


 シェアリアが叫んだ。


「ハシュフィナ! 止めなさい!」


 ワン子も叫んだ。


「まさか!?」


 ハシュフィナのステータスを見ると値が五割増を示していた。


 これが獣化転換か!


 元のワン子のそれが三割増しだからそれよりも上だ。

 一部の獣人が持つ固有スキルである獣化転換は魔獣のように魔素を体内に取り込むことで運動能力を飛躍的に増加できる。

 まさかこの詠歌が魔素を励起させ体内に取り込む鍵とは。

 まるっきり魔法の呪文詠唱じゃないか。


「がぁあああああああああっ!」


 叫んだハシュフィナが一瞬で十連撃を叩き込む。


「ぐっ!」


 ワン子は得物を避けるだけで蹴りと突きを全て受けてしまった。

 勢いで吹き飛ばされる所で追撃の後回し蹴りが直撃する。


「ワン子さん!」


 クフュラが叫んだ。メルシャは顔を覆っている。


 今までワン子が攻撃を喰らう場面なぞ俺を含め誰も見た事が無い。だがそれが現実に起こっている。


 間髪入れずに直蹴りを喰らってワン子が吹き飛び、すかさずハシュフィナが追撃する。


「負けられない! 負けられない! 負けられないんだよおおおおっ!!!!」


 ハシュフィナの絶叫が響き渡り、得物の握り部分のガードを使っての連打がワン子に叩き込まれる。


「シャガやデンズ! 皆が私の為に、ハフカラの為に命を落とした! その為なら私だって命を捨てる! 獣化転換が怖いの!? 腕は鈍って無くても心は落ちぶれたの!? 蒼狼の誇りは何処に捨てたああああああ!」


 また後ろ上段回し蹴りからの二連撃だ。今度の速度は避けられそうも無い。

 当たれば確実に脳天を割られる。

 そう思った振り下ろされた足と蹴り上げたワン子の足がぶつかりハシュフィナが弾かれた。


「!?」


「ハシュフィナ……今の私の誇りはご主人様と共にあるの。それを見せてあげる」


 そう言うやワン子は眼を閉じ詠歌を詠い始めた。


 キィィィィィィィィィン


 金属音のような音を立てて空気が震える、魔素の共鳴現象だ。

 それもさっきのハシュフィナの比ではない。


「な……」


 攻撃に転じようとしたハシュフィナだったが動こうとした刹那、短剣の柄が鳩尾にめり込んでいた。


 無拍子だ。


「あ……」


 ハシュフィナはそのまま倒れた。


「勝負……有りだな」


 俺が言うとワン子は無言で頭を下げた。


「エルメリア、蘇生」


「畏まりました」


 ワン子の鳩尾への一撃はそれだけでハシュフィナの心臓を止めてしまった。

 すぐにエルメリアが蘇生を掛ける。ワン子には既にシェアリアが回復をかけている。


「がはっ」


 ハシュフィナが息を吹き返した。


「あ、私……」


「勝負はついた。いい勝負だったがお前の負けだ」


「……そう、ですか……」


 がっくりうなだれるハシュフィナ。


「仕方……ありませんね……」


 そして脇に佇むワン子の方を向くと


「やっぱりビリュティスはビリュティスだったね……」


 少し悲しそうに、だが満足そうに笑って言った。


「ハシュフィナ……」


「さて、ハシュフィナは負けたので約束どおり俺の奴隷になってもらおう」


「……分かりました」


 うなだれたハシュフィナが搾り出すように言う。


「シャガ……デンズ……みんな……ごめん……」


「まぁそう悲観するな。ハフカラにはちゃんと派兵してやる」


「え!!」


 驚いた顔を見せるハシュフィナ。


「で、でも……」


「俺の奴隷になったんだから要望は聞いてやらないとな。」


 まぁ最初からするつもりだったんだけどな。

 向こうでセイミア達がやれやれといった顔をしている。


「そ、それじゃ……」


「うん、覚悟は十分見せてもらったし」


 ハシュフィナの眼からポロポロと涙が零れ落ちた。


「ありが、ありがとうございます! ありがとうございます!!」


「ただーし!」


 俺は声を高くして言った。


「今日からお前の名前はニャン子、な」


「へ!?」


 感動の涙を流し始めた矢先に言われた予想外の言葉にハシュフィナの表情は凄く複雑な物になった。


「だーかーらー、お前は今日からニャン子。判ったな」


「な……なんですかその妙な名前は……」


 ハシュフィナって呼びにくいからなんだけど黙っとこう。


「ハイ決定! じゃこれからよろしくなニャン子」


「え、ちょ、ちょっと待って下さい!」


「さっき負けたら好きにして良いって言ったじゃん」


「うっ……あうう、そうは言いましたが……」


「宜しい。では今日からニャン子君はそこのヒルファと一緒にラデンナーヤとワン子に付いてみっちりと侍女の仕事を学ぶこと、いいね」


「はい……かしこまり……ました」


「あうう……分かりました……」


「ニャン子さん、そこは畏まりましたですよ」


 早速ラデンナーヤの厳しい指導が飛ぶ。


「か、畏まりました」


 以前同じことを言われたクフュラが複雑な笑顔を見せる。


「宜しい。ではラデンナーヤ。二人に侍女服を誂えてやってくれ。丁度試作のがあったろ? アレで良いや」


「畏まりました。二人ともこちらへ」


 ヒルファとニャン子は連れられていった。


「……最初から行くつもりだったのに友人同士を戦わせて。ご主人様、人が悪すぎ」


 シェアリアの厳しい突込みが入る。


「だってあの場の適任者はワン子しかいないだろ」


 拳で語るでも無いし二人のわだかまりが溶けたのかは分からないけど、何か変化はあったと思う。


「……それはそうだけど」


 シェアリアもやれやれという表情だ。


「とにかく、行くと決まれば早速準備だ。セイミア?」


「既に必要資材の手配は完了して魔導輸送船三隻に積み込みを開始してますわ。明日にも出発できます」


「うん、流石セイミアだ。反対しててもやることは早い」


「それは勿論ですわ。こうなることは最初から分かってましたもの」


 眷属一同頷いている。


「ワン子も構わないな」


「はい……私からも改めてお願いします」


 ワン子は兄から絶対に戻ってくるなと言われていた。

 それ以外にも心に何かあるようだがハシュフィナと戦って決心がついたのだろう。


 翌日、魔導輸送船三隻と合流したアジュナ・ボーガベルは一路ハフカラに向けて出発した。

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