第百四十五話 廃墟
――二日後
アジュナ・ボーガベルは十隻の魔導輸送船を従え、西大陸東側の海上を北上して一路バロルガッセへと向かっていた。
海岸線を大きく迂回するため、約三日の行程だ。
「今回の支援、なぜお受けしたのです?」
展望デッキで珈琲を飲んでいたダイゴの脇で本日の午睡番のアレイシャが唐突に訊いた。
「ああ、これは多分向こうの罠だな」
「罠?」
「法都のど真ん中で余りにも簡単に脱走が出来たなんて都合良すぎだろ?」
「ではあの者は間者?」
その言葉だけでアレイシャの身体から殺気が滲み出る。
「それは無い。多分俺達をおびき寄せる為だけに義国は滅ぼされたんだろうなぁ」
そう言いながらダイゴがアレイシャのなだらかな丘を撫でるとたちまち殺気は霧散してしまった。
「そん……な……」
アレイシャは叔父であるデレワイマス大王が女色の為、もしくは些細な事で領国を安易に滅ぼしていた旧ガーグナタ王国を思い、胸が痛んだ。
ダイゴがニャン子に呼ばれて法都に転送した時にアルシュナの素性は鑑定済みだった。
以前のウルマイヤの様に洗脳された気配はない。
人質を取られているなど強要されている可能性も否定はできないが、いずれにせよそれ自体はダイゴにとっては些末な問題でしかない。
「セイミアもグラセノフも俺達がバロルガッセに着くのと入れ違いにシネアポリン攻略部隊が来ると踏んでいる。問題は……」
「問題? まだ……何かある……と?」
「それすらも罠の可能性がある」
「それは……一体……」
「さぁてなぁ。そこまで分からないから可能性なんだ」
セイミアもグラセノフも絞り切れずにいる。
だから当たってみるしかない。
それが今回のバロルガッセ遠征の理由だった。
だからダイゴはシネアポリンから出発する際はわざと白昼堂々周囲に見せつけるようにゆったりと発進している。
「もっとも……」
アレイシャに覆い被さりながらダイゴが言った。
波打つ銀髪が日の光を浴びて煌く。
「必要な配置は全部済ませてある。今回は総力戦だ」
「総力……戦?」
沸き上がる快感に流されながらアレイシャはかろうじて聞き返した。
「ああ、出し惜しみは一切無しでぶっ潰す。奴との縁もここまでだ」
耳元でのダイゴの囁きを最後にアレイシャの意識は白く塗りつぶされていった。
――バロルガッセ王国王都デマジュル
「そんな……これが……嘘……嘘です……」
アジュナ・ボーガベルのブリッジにアルシュナの悲痛な声が響いた。
辺り一面は焼け野原と化し、動く物は何も無い。
道のいたる所に炭化した焼死体が転がり、市民の憩いの場であったであろう公園らしき広場には無数の焼死体が折り重なっていた。
「酷い……」
惨状にクフュラが震える声を上げた。
戦争が嫌いなクフュラにとってもっとも直視したくない光景。
だが彼女はジッとその有り様を見つめている。
「俺のいた世界の戦争の行き着く先はこれだ。大量破壊兵器による無辜の民の大量虐殺」
「これは……こんなのが……戦争なんて……」
「こんなのは戦争じゃないよ……ただの虐殺だよ」
呻くようなクフュラの声に震えるようなコルナの声が重なる。
騎士が家名と己が誉れを高らかに謳い上げ、槍や剣を交わし、魔道士達が煌びやかな魔法で色を添える。
戦勝に沸き金色の畑を凱旋する騎士団を農民達が歓声と国家の合唱で迎え、着飾った娘達が英雄達を射止めようと目印である黄色い布を振る。
そんな艶やかな光景はそこには無い。
あるのは騎士も貴族も平民も、男も女も、老人にも子供にも等しく降り注いた死。
「ストルプルドはその力を手に入れた。だから俺はそれを全力で叩き潰す」
「ご主人様……」
苦渋に満ちたダイゴの顔を見たエルメリアにも笑みは無かった。
アジュナ・ボーガベルは未だにあちこちで煙を上げている王城の中庭に着底した。
一帯も瓦礫と死体で埋め尽くされ、耐え難い死臭が辺りを覆っている。
「うぇ……」
真っ先にアルシュナが口を押さえて嘔吐した。
「出せるモノは出しときな」
「だ、大丈夫です……」
ダイゴとアルシュナ、そしてウルマイヤの周囲をワン子、ニャン子、アレイシャとコルナが囲んでいる。
「皆剣を握ったままだな……」
鎧が溶融した状態の焼死体は恐らく兵士だろう。皆やはりグニャグニャに溶けた剣を握りしめたまま倒れている。
「皆……皆……ごめん……なさいです……」
ダイゴの言葉にアルシュナは涙を流す。
城は竜息の一撃で粉砕されたらしく、原型をとどめてはいない。
それでもアルシュナの勘を頼りに瓦礫を踏み越えて、謁見の間に辿り着いた。
「ひっ!」
不意にアルシュナが悲鳴を上げた。
見ると抱き合った形で倒れている焼死体がある。
脇には高熱で溶けた王冠らしき物が転がっていた。
「お父様! おかあさ……ま……いやあああああっ!」
堪えきれなくなったアルシュナが絶叫した。
「落ち着け、アルシュナ」
「あああああああっ!」
「見てろよ、『復活』」
ダイゴの手に紫の魔法陣が展開し、焼死体がみるみる復元されていく。
「あ……あ……」
呆然とアルシュナが見守るなか、壮年の男女が目を覚ました。
すかさずワン子とニャン子が背嚢に入れていた薄手の毛布を素早く掛ける。
「う……こ、これは……?」
「おとうさまぁっ! おかあさまぁっ!」
「ア……アルシュナ! 貴女、無事だったのね!」
アルシュナは王妃らしき女性にヒシと抱きついた。
「よかったです! よかったですぅ! うわああああん!」
「あ……あの、貴殿等は……」
「ああ、私は東大陸ボーガベル帝国のダイゴ・マキシマと申します」
「ボーガベル! あ、あの魔王の国の!」
「い、いや、あの……」
「ぞうでずぅぢぢうぇ! ごのおがたごぞぞのまおうざまでずぅ!」
涙と鼻水で顔をクシャクシャにしたアルシュナが手をダイゴの方に差し出しながら幾分自慢そうに言った。
「な、何と……」
「いや、ちょと待って……え?」
素っ裸に毛布を被っただけの王と王妃が跪き、勢いアルシュナもそれに倣った。
「魔王様であれば我らを生き返らせることなど造作も無いこと、感謝のしようもありませぬ」
「再び娘に会えるなど、これも魔王様のお力の賜物、何と御礼を言って良いのか……」
「……あー、ちょっと落ち着いたところで話をしましょうかねぇ」
アジュナ・ボーガベルに戻ったダイゴ達は平服に着替えた国王夫妻から事の顛末を聞いた。
「あの日、ここデマジュルに魔道法院の使節が来ました。そして使節団長のオゲラーという者がいきなりアルシュナを差し出せと」
「はぁ、それはまたどうして?」
「我が娘は産まれながらに稀有な才がありまして、魔力とその顕現力が常人の数倍はあるのです」
「それって……もしかして魔導杖ってか魔石と同じ?」
「流石は魔王様、その洞察力、まさに神の如し」
「いや、そういうの良いから先進めて」
「これは失礼を。娘は産まれながらに魔石の力を持っておるのです。この透き通るような翡翠色の髪と瞳がその証とか」
そう言う国王も王妃も髪色は茶色だ。
「それはまたどうして、自然にそうなったとか?」
「それは分かりませぬ。ですが以前、妃が懐妊中に重い病に掛かりまして、それをシストムーラの大魔道士、ソミュア・クリュウガン殿に治癒して頂いた事がございます」
「はぁ……」
サダレオ法院長の事をあれこれ言ってたが実はソミュアも何かしらやったんじゃねぇのか……。
ダイゴの頭にそんな疑念が浮かんだ。
「それで?」
「当然、私が拒否したところ、突如空より現れた船から無数の兵士が降ってきて瞬く間にアルシュナを攫って行きました」
「気嚢艦に鋼魔兵とやらか……」
「直ちに追撃を兵に命じた所、直後に城に現れた灰色の竜が火を噴いて……」
「で、この有り様と」
「はい……魔王様、娘はなぜ……」
「あー、簡単に言えばサダレオ法院長に手込めにされそうだったんだな」
「なんとぉ!」
「ひいぃっ!」
ダイゴの言葉に王は怒りの、王妃は恐怖の悲鳴を上げた。
「つかさぁ、何で俺、魔王『サマ』なの?」
「それは……以前の事ですが……」
「さぁさ、ここらで一服致しましょう、美味しいお茶が入りましたわ、あまーいお菓子も……」
「『エルメリア、停止』」
「あ……」
何時の間にか忍び寄ってたエルメリアだったが間髪入れずに発したダイゴの『命令』を受けてその場でマネキンのように停止した。
「あ、あの……このお方、女王陛下ですよね?」
「ああ、あまり気にせず先を続けて下さい」
変な姿勢かつ笑顔で微動だにしないエルメリアを呆然と見て言った国王にダイゴはヒラヒラと手を降った。
「は、はい。我が国に薄い本が旅の商人から献上されました。城下でもいたく評判のようで、それが魔王様の征服記でして」
「それ、作者とかありました?」
「ええ、確かにアリメルエ・ルベガーボとか……」
『ご……ご主人様……こ、これは……その……』
ダイゴの頭に停止しているエルメリアの念が恐る恐る飛び込んできた。
『そうか……やはり魔王の出所はお前だったか……』
講談師が広めたとされる『魔王ダンガ・マンガ』の征服物語。
だがアロバを始め各地で聞かれたその物語は作り話と言うには余りにも詳しすぎた。
『こ、これはですね、ご主人様の偉業を広く他大陸にしらしめようと……』
『お陰で俺はアロバじゃ美少女に失禁されるほど怖がられたんだけど?』
『そ、それは随喜の涙というものでしょう』
『出てくる場所が全く違ってたな』
『……エルメリア、素直に謝ろう。私も一緒に謝るから』
突然シェアリアからの念話が割り込んできた。
『何だシェアリアも絡んでたのか』
『……うん、一緒に抱き合わせで趣味の漫画を売った』
『一寸待て、まさかあれか?』
『……うん、まおグラとかまおレノとか、グラレノが一番売れた』
『お、おおお、お前なぁ……』
エルメリアとシェアリアが文化の発展に不可欠と、紙の量産と木版印刷の導入を急いでいたがまさかそっち方面の文化のためだったのか……。
『アーメルフジュバの練法堂で即売会も計画してたんだけど』
流石にダイゴも怒る気が失せていた。
『はぁ……取り敢えず今はいいや、追って沙汰を決めるわ、解除』
「りますわー」
解除命令でエルメリアが再び動き出した様を国王達はポカンと見ていた。
「少々お見苦しいところをお目にかけて申し訳ない。まぁあれはよく出来た創作で私は決して魔王などと言う者では……」
「それは違いますぞ」
「へ?」
「この世で無類の力を持ち、全てを統べる者、魔力の精髄をきわめし王の頂点たる者こそが魔王なのです」
「はぁ」
まぁ、魔王って呼び名が良い意味での、って所もあるんだろうなぁ……。
『如何です、ご主人様。私の努力は決して……』
『お前は黙ってて下さい』
『うう、いけずですわ、殺生ですわ』
「まぁそれはそうなんでしょうが、私は一応皇帝なのでそこの所はお間違いのないように」
「分かりました、まお……いえ皇帝陛下」
「……それで今後のことですが、貴国の殺害された人々を生き返らせる事は出来ます」
「何と! 流石はまお……皇帝陛下!」
「ああ! 素晴らしいですわ! まお……皇帝陛下!」
「……ですが問題はその後です。他の都市の状況は今確認中ですが、同様となると復興には多大な時間と資材、人材が必要になってきます」
「う……」
国王は言葉に詰まった。
「国が壊滅的被害を受けた現状、人だけ生き返っても待っているのは飢えを筆頭としたこの世の地獄です」
「た……確かに」
ダイゴの魔法ですら破壊された建物をマンガの魔法のように元通りにする事は出来ない。
今までもダイゴは自分で、もしくはエルメリアやシェアリア、そしてウルマイヤ達によって多くの人々を生き返らせてきた。
だが、それはオラシャントの様に国に復興できる力があったり、ガーグナタやシムオの様に国そのものはそれ程損害を受けていないからだった。
国の中心たる王都がぺんぺん草一本生えない程に破壊された状況のバロルガッセにそのような余力は微塵もない。
「例え地方都市が健在でも、王都がこの状況では新たな戦乱を招きかねません」
「では……如何すれば……このまま民を見捨てろと……」
「まお……ダイゴ様! お願いです!」
突然話をジッと聞いていたアルシュナが声を上げた。
「ダイゴ様のお力で何卒バロルガッセを救って頂けないでしょうか!」
「救うったって具体的には?」
「分かりませんです!」
「え?」
「私は頭が良くないのでどうすればというのは分からないです! ですがまお……ダイゴ様はそれが出来る人だと思うのです」
「魔王だから?」
「はいですっ!」
「はっきりさっぱり言ってくれるねぇ」
「だからお願いです! どうか!」
「しかし、例えばこれだけの規模の都を再建するとなると国家予算にも匹敵するよ? 流石にそれだけの巨費を何のゆかりもないバロルガッセにポンと出すって訳にはいかないよ」
ダイゴの言葉に国王が肩を落とした。
実はバロルガッセではガーグナタ滅亡後ボーガベルの次の目標はシストムーラと予想を立て、事あらば義によってシストムーラを支援する機運が高まっていた。
だが、実際はバロルガッセはシストムーラの流れを組むストルプルドに滅ぼされ、ボーガベルの支援を受けている。
こうして自信を含めた蘇生措置を施されるのだけでも過分な扱いというのに、その上王都の再建などとても頼める状況ではない。
三十万もの人間がいたこのデマジュルの復興はほぼ一から都市を作り直すに等しい大事業だ。
だが、今のバロルガッセに独力で成し遂げる力は全く無かった。
それでも尚復興を求めるという事は即ち国を差し出すという事だ。
「ならば! こ……この私を差し上げるのです!」
しばらく色々な格好で悩んだアルシュナが意を決したかのように言った。
「ア、アルシュナ!」
「ああ……」
「だーかーらー、どうしてそうなるのさ」
「東大陸ではそうすると聞いたのです! 魔王様は若い姫の身を引き換えにその願いを叶えたのです!」
「とんだ風評被害だなぁ」
全くこの世界の人間はどうしてこうひょいひょい、自分を差し出すかなぁ……。
勿論転移してからこっち、それがこの世界の価値観だということはダイゴも重々承知している
だが元の世界の価値観を引きずるダイゴにとってはどうしてもある種の後ろめたさを感じてしまう。
時代劇でよくある、
『ふっふっふー、そちの村も飢饉で大変よぁ』
『ううっ、どうか今年の年貢は……』
『よいよい、儂がそれくらい融通してやるわ。その代わり……』
『あっ! 何をなさるのです! ご無体はお止め下さいです!』
『ふっふっふー! よいではないか良いではないか、ほおれ』
『あーれーでーすー』
そんな光景が自分とアルシュナに変換されて浮かんでくる。
いや、それしか無いって思うのは分かるんだけどさ……。
そう思いながら以前そうなったアレイシャを見た途端、
「大丈夫です」
アレイシャが瞑っていた片目を開けてそう言うと、アルシュナの元に歩み寄った。
「あなたに確固たる決意があるのならばご主人様は必ず受けてくれますよ」
「あの……貴女は?」
「私はアレイシャ・ガーグナタ。元ガーグナタ王国第一王女で、今はダイゴ皇帝の奴隷姫」
「ア、アレイシャ姫!? もうかなり前に事故で前王夫妻と一緒に亡くなったと聞いてましたです」
アレイシャは静かに首を振った。
「姫としての私は死んでいました。ずっと復讐の虜となっていた私はご主人様に救われたのです」
「そうなのですか……まお……ダイゴ様! アレイシャ様もこう仰ってるのです! なにとぞです!」
「あのー、娘さんああ言ってますが、ご両親のご意見は?」
最後の砦、国王夫妻に投げたダイゴが見たのは想定外の反応だった。
「ううっ……む、娘には常日頃、義国の姫として産まれたからには、己を捨て義に忠ぜよと教えてきました。あの決意の顔は正に義に生きる者の顔。私は国王として、父として感動に打ち震えております」
「アルシュナ……己が身を挺して国を……民を救おうと思う気持ち……母は嬉しく思います。陛下、何卒汲んでやって下さいまし」
「はぁ……」
涙を流して感動する王と王妃を見てダイゴは復活魔法がどこかズレたんじゃないかと思った。
「だ……駄目なのです?」
心配そうにアルシュナが訊いてくる。
「いや……だめっつーかさ」
「はっ! もしかして私に魅力が無いとかですか? そ、それは女王様やそこの獣人の方や森人族の方に比べればこの辺は小さいですが……」
アルシュナは控えめな自分の胸を見た後、チラリとコルナを見た。
「あああっ!? 今ボクを見たね!?」
「み、見てませんです! 全然見てないです! ましてや勝ったなんて微塵にも思ってないです!」
「ひっどーい! じゃぁ比べてみようか? ボクの方が絶対あるから!」
「望むところです!」
「止めんか君たち、それ以上はいけない」
二人が唐突に服を脱ぎだそうとするのをダイゴは冷静に止めた。
「あ……」
「う……」
「はぁ……わかったよ……サダレオ法院長が狙ってる以上は守ってやりたいしな」
ダイゴの脳裏にシネアポリンに残してきた双子の顔が浮かぶ。
「で、では!」
「ああ、ただし先々の復興に関わる事に関してはまた別に国王と話をさせて頂くよ」
「ありがとうございます! 不束者ですが! 末永くよろしくお願いしますです!」
「あー、うん、まぁ宜しくね。 んじゃ早速支援作業に入ろう」
ダイゴの言葉を合図にしたかのように上空で待機していた魔導輸送船十隻が降下し、次々と浮遊台車を吐き出していく。
カーペットにはグラセノフ麾下の第一軍から抽出した二千名、兵士型や作業型のゴーレム。
そして様々な支援物資や資材が満載されている。
地に降り立ったゴーレム達はカーペットと連携して瓦礫の撤去をテキパキとこなし、瓦礫に埋まった遺体を掘り起こすと、何カ所かに纏めるように運び出していく。
比較的瓦礫の少なかった城の庭は瞬く間に整地され、次々とテントが設営されていく。
パイプ状のフレームで構成されているそれは、ダイゴが元の世界でイベント関係の仕事をして得た知識でこちらの世界の職人によって再現されたテントだ。
二アルワ程で立派なテント村が出来上がった。
既にルファ副侍女長の指揮の元、大量の食事や衣服、毛布の配給の準備が進められている。
ゴーレム達は別の場所にもテント村を設営する為移動していった。
「じゃウルマイヤ。頼むぞ」
「はははいっ! 顕現せよ! 機甲聖堂レミュクーン!」
ウルマイヤがレミュクーンを呼び出し融合した。
「『復活』!」
レミュクーンからウルマイヤの澄んだ声が響くと王都全体を覆うかのような紫の超巨大魔法陣が出現し、その光を浴びた焼死体が次々と元の姿へと復活していく。
「ああ……まさに魔王様の御力……です」
アルシュナがダイゴの脇でその様を見て感動の涙を流している。
「あのねぇ、やってるのはウルマイヤだかんね?」
「でも、それは魔王様のお力の賜物なのですよね?」
「うん、まぁそうだけど……」
「ならばやっぱり魔王様のお力です! 素晴らしいです!」
「はぁ」
だめだ、コイツは放っておくと魔王教とか立ち上げかねん……。
そんな事を思いながら、目の前のテント群に目をやる。
「さぁ皆さん、こちらで服と毛布をお配りしてますわ、お並び下さいですわ」
「食料の配給はこちらだよー、暖かいのもいっぱいあるよー」
設営されたテント前でエルメリアとコルナが声を上げる。
生き返った人々は各所に散った第一軍の兵達に誘導され続々とテントに集まってきた。
厚手の麻で出来た簡易服に袖を通し、侍女達から受け取った熱い麦粥を啜っている。
「こんな所、なんとかプルドに襲われたらひとたまりもないぞ?」
周囲を見渡しながらメアリアが言った。
「だろうな。現にもう来ている」
「何だって!?」
「南西から飛行物体が二十。例の気嚢艦って奴だろう」
「どうするつもりだ?」
「どうするもこうするも迎え撃つさ……うん、美味いな、メアリアも食べな」
ダイゴは元クフュラ親衛隊だった侍女のシルシアから受け取った麦粥に舌鼓を打ちながら余裕ありそうに言った。
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次回をお楽しみに!





