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前職はトラック運転手でしたが今は神の代行者をやってます ~転生志願者を避けて自分が異世界転移し、神の代役を務める羽目になったトラック運転手の無双戦記~  作者: Ineji
第十一章 シストムーラ魔法争乱編

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第百三十九話 急転

 ――アーメルフジュバ宮殿。


 昨晩ダイゴ達が晩餐を楽しんだ広間に今は法皇ルーンドルファ、そして魔導法院々長サダレオ・ララスティンが対峙していた。


「さて法皇陛下、本日儂がこうして出向いて来た用向きは既にご承知とは存じ上げるが」


「ああ……昨日締結されたボーガベルとの修好通商条約の事だろ?」


「その通り。即刻破棄し、あの者共を退去させて頂きたい」


「サダレオ、君は馬鹿なのか?」


 にこやかに罵倒されたサダレオの顔が徐々に赤くなる。


「な!? この魔導法院々長たるサダレオ・ララスティンに対し何という暴言! 即刻撤回並びに謝罪を要求する!」


「彼の者は私が招いた賓客だよ? それを何故私がその彼らと結んだ約束事を反故にし、追い返さねばならんのだ?」


「魔導法院を無視して勝手に話を進めて何を言うか! 法院の意向を無視した取り決めなど無効に決まっておるだろう!」


「だが、国家法には法皇の決定裁可は何者にも優先されるとある。私はそれに則っているのだがね」


「それは詭弁だ! 法皇の決定裁可とはあくまで魔導法院の決定を承認するだけに過ぎぬ! 勝手をやって良いという事では無いわ!」


「それは魔導法院の……いや、君の勝手な解釈だろう」


「何を言うか! 法皇とは即ち国の象徴! いわばお飾りに過ぎぬ! 第一お前のその地位は本来儂が継ぐはずだった! そ、それをお前が! あの魔女が!」


 サダレオの歯噛みは今にも顔面から血を吹き飛ばさんばかりだ。

 逆立つ髪すらもうっすらと赤く見える。


「シストムーラがガーグナタに『大損害』を被って百年余、失われた魔導士を補充する為、時の法皇は魔導法院を設立し、権限を与え復興に務めた。だがそれは決して法皇がその権限を放棄した訳では無い」


「だが法院の尽力により皇国は力を取り戻し安寧の時を得た! それをお前は壊そうとしているのだぞ!」


「違うな。拡大された魔導士の数は不均衡を生み始め、経済は破綻の兆しを見せ始めている。遅かれ早かれこの国は内部から破綻する。魔導法院の魔導兵偏重政策の為にな」


 既に地方農村では破綻の兆候が見え始めていた。

 シストムーラは江戸時代の日本と同じく年貢制を取っている。

 農村では税金を納める代わりに作物、大部分は主食の小麦を納めるのだが、その比率は最近五割から七割に引き上げられていた。


 更には若者は軍に徴兵されるか、魔導力の高い者は魔導法学院への入学を許可される。

 入隊する事による生活の保障に加え、高い地位を約束された魔導法学院への入学は若者の憧れであり、それが地方の過疎化に拍車を掛けていた。



「そ、そんな事は無い! 我が法院の施策は何の問題も無い! ガーグナタ……いや、ボーガベルの侵攻に備えなければ……」


 そこでサダレオの言葉は詰まった。


「そう、だから私はガーグナタがボーガベルに敗北した機を捉え、彼の国との友誼を申し出た。国を預かる者として何か問題があるかね?」


「し、信用ならん! 魔王の国と呼ばれているのだぞ! いつ何時攻め滅ぼされるか分からぬではないか!」


「魔王? ああ、これであろう? 君もこれを読んだのかね?」


 ルーンドルファは一冊の薄い本をサダレオの前に放った。


 それは羊皮紙では無く正に紙でできた本だった。


 表紙には『魔王伝説ダンガ・マンガ』と書いてある。

 その本にはサダレオも見覚えがあった。

 ソロンテ神皇国から渡って来たドンギヴ・エルカパスが初めて彼に謁見した時に献上した物だ。


 初めて触る紙の感触もさることながら書いてある内容にサダレオは甚く驚愕した物だ。


「そ、それを知っているのならなおの事……」


「馬鹿馬鹿しい。これは単なる御伽噺だよ? 成程書いてあるのは彼の者の東大陸での行いかもしれん。だがこれはそれに面白おかしく話を肉付けした物だ。他国には講談師というそういった話を喧伝して商売にする者がいるという。これはその者向けに書かれたものだよ」


「な、なんと……」


「そんなモノを鵜呑みにしてボーガベルが魔王の国だ、攻めてくるなどと騒ぎ立てるから馬鹿だと言ったのだ」


「ぐ、ぐぐぐ……」


 サダレオの顔は益々赤くなり、髪も赤みを増してきた。


「そして君があの商人と結託して裏で何をしようとしているかも分かっているよ」


 その言葉を聞いた途端、赤かったサダレオの顔と髪は紫になった。


「なん……だと……」


「国庫が厳しいというのに随分な買い物をしたらしいね。まさか年貢を八分に上げるつもりじゃないだろうね? そうすれば地方農村は破綻だよ?」


「だ……だまれ」


「それにカンシドゥンの魔石鉱山に相当数の兵をつぎ込んでいるそうじゃないか。だが交易所にはそれだけの魔石が流れたという記録は無い。一体何処に……」


「だまれだまれだぁあまぁぁれぇええええええっ!」


 ルーンドルファの言葉を遮るように逆上の雄たけびを上げるサダレオ。

 それに呼応するかのように扉が開いた。


「陛下!」


 ルーンドルファの侍従達が追い立てられるように駆け込み、その後にガイツを筆頭に兵たちが雪崩れ込んできた。


「成程、随分思い切ったね」


 そう言ったルーンドルファだが、こうなる事はとうに予想済みだった。


「この宮殿は今より魔導法院の管理下に置かれる。陛下は大人しくして頂きますぞ」


 息を荒げたサダレオが唸るように言った。


 さて、皇帝陛下には上手くやって貰いたいものだな……。


 表情一つ変えぬ涼やかな顔でルーンドルファはそう思った。







 ――アーメルフジュバ市街の茶店。


「……」


 顎に手を当て、考え込むダイゴをワン子達が心配そうに覗き込んでいる。


 原因はドンギヴが放った、


『元の世界に戻りたいと思いませンか』


 の一言だ。


「どういう意味だ」


 そのダイゴの問いに、


「いえいえ、今はまだ例えばの話ですよ。このお話はいずれ近いうちに改めて。ではワタクシは人探しの途中でござりまするのでこれにて」


 そう言うや身を翻してドンギヴは雑踏に紛れていってしまった。


「あ、おい!」


「追いましょうか!?」


 すかさずワン子とアレイシャが追跡しようとする。


「……いや、いい」


 そう言ったダイゴの顔はワン子がハッとするほど深刻な顔つきだった。



 そして今。


 出された茶が冷めるのも構わずダイゴは考え込んでいた。


情報開示ステータス』に一切情報が出てこない時点でドンギヴがこの世界の人間でない事は分かっていた。

 更にムルタブスで出会った男が日本語に反応した事から、この世界に何らかの方法で流れてくる人間がいる事も分かっていた。


 だが、戻れる方法があるという事は完全にダイゴの意表を付いていた。


 とてもそんな方法があるとは思えなかった。


 神の代行者に匹敵する能力がある人間がいないのは神から聞いて分かっている。

 準じているのはソルディアナの様な大地の守護者たる五体の地の竜だけだ。


 それらの者ですら時空を操る術は無い。


 ダイゴの使える固有神技スキルである『転送』も離れた場所に瞬時に移動する事は出来るが時空を飛び越える事は出来ない。

 又、闇魔法『暗黒球ダークタマー』や 『黒昏流星群ブラックスターオブリヴィオン』で使う暗黒素子は物体を消滅させるだけで、例えば収納可能な保管庫の様な使い方は出来ない。


 恐らくは神による制限が掛かっているのだろう。

 ダイゴにしてもそうなのだ。

 とても能力も持たない只の転移者に為せる事とは思えなかった。


 だがドンギヴの口調は確信している響きがあった。


「ねぇ……ご主人様……帰りたいの?」


 沈黙に耐え切れなくなったコルナが口を開いた。


 ワン子達がハッとする。


「ん? 何処にだ?」


 ダイゴの答えは他人事の様で皆は拍子抜けした。


「何処って……元の世界……」


 そう言ったコルナは今にも泣きそうだ。


「ああ……あのなぁ、お前達置いて帰りたい訳無いじゃん。前にも言った……ってコルナは居なかったから知らんだろうが、もうココが俺の世界。俺の故郷だよ」


 ダイゴの言葉に皆が顔を綻ばせる。


「だよね! でもご主人様考え込んでたから……」


 目じりに涙を浮かべてコルナが訊いた。


「そりゃ考えるだろ。アイツのロクでも無さすぎる企みが垣間見えたんだから」


「どういう事?」


「いいか? アイツが言った事は俺ですら出来ない事なんだ。それをアイツはやろうとしている。それがどれ程ロクでもない事か」


「しかし……あの者のでまかせと言う事も……」


 それまでずっと押し黙っていたアレイシャが口を開いた。


「まぁあの見てくれだけならそうも思うわな、だがセネリ」


「ああ、ドンギヴは胡散臭いしロクでもない商売をしているが言った事には嘘のない男だ」


 かつてアルボラス傭兵団としてドンギヴの斡旋を受けていたセネリが不承不承に言った。

 もっとも最後の最後でセネリ達は鬼人族デドル傭兵団の餌にされそうになったのだが。


「そうですね~あの人の話はちょくちょく聞きましたが左程悪い話はありませんでした~」


 商人でもあるメルシャも頷く。


「まぁそうなると実際元の世界に渡る方法はあるとする。そうなるとそれは恐らくとてつもなくロクでもない物だと思うんだ」


「その方法は分からないのですか?」


 ダイゴが話し始めた事でワン子がすかさず新しい熱い茶を差し出しながら訊いた。


「皆目見当つかないな。『叡智』でも出てこないし」


「あの……」


 それまで遠巻きに聞いているだけだったファムレイアが漸く口を開いた。


「ダイゴ様は……本当に異界から来られたのですか?」


「ああ……そういやアンタはドンギヴから何を聞いている?」


「い、いえ……特には……ただ……」


「ただ?」


「ダイゴ様の力はこの世界の在り様を変える物だと」


「うーん、そこまでの物ではないんだけどなぁ」


「で、では……」


「まぁ異界か。そこから来たってのは当たりだ」


「やはり……」


 スミレイアがそう言ったその時、外から声が掛かった。


「おや、ご主人様ではないか」


 見ればヒルファを連れたソルディアナがいた。


「おう、お前達何ほっつき歩いてんだよ」


「うむ、リセリと一緒にハニキュアを見ていたのだがな、あ奴め十二作目の『ロイヤルフラッシュ・ハニキュア・ダイナマイトビューティー』で音を上げてしまってのう。こうして気分転換で街に出て来たのじゃ」


 その言葉にクリュウガン姉妹を除く全員が苦労人リセリに同情した。


「あ、あの……こちらは?」


「ああ、眷属の一人ソルディアナと侍女のヒルファだ」


「こ、こんな小さい……」


 スミレイアの声にソルディアナがジロリと彼女を見た。


「お主、それを我に向けて言ってるのではあるまいな? こう見えても我は竜の一族にして齢数千を生きる身じゃ」


「竜……ってまさかルナプル……」


 そう言ってファムレイアはハッと口を噤んだ。


「ほう、お主、ルナプルトを知っておるのか?」


「……」


「誰でい、そのルナプルトって」


「我の弟じゃ。赤竜ルナプルト。つい今しがたそこで会ってな」


「はぁ? 地の竜が平気でうろついてんのかよ。ここは」


「誰か探していたと言っておったがのう」


「探していた?」


 そう言えばドンギヴの奴も誰かを探していた……。


 まさか……。


「ご主人様……」


 メルシャが同じ結論に至ったらしく真顔でダイゴに聞いて来た。


「だろうな。なぁアンタ達本当に何も知らんのか?」


「な、何をでしょう?」


「ドンギヴとこの大陸の地の竜がツルんでる」


 その時、無言で席を立ったウルマイヤがドス紫の気を噴出させながら姉妹に手をかざした。


「『カツ……』」


「やめときよし~」


 自白魔法を掛けようとしたウルマイヤのわき腹をメルシャが背後からくすぐる。


「ひゃあっ! や、止めてくだ……きゃはははっ!」


「止めるのはお前だって」


「は、はい。申し訳ございません」


 ダイゴに窘められてシュンとなるウルマイヤ。


「ドンギヴが地の竜を名乗る方を連れてサダレオ法院長の元に頻繁に出入りしているのは知っていますが、何を話しているのかまでは……すみません」


「それで納得すると思うかい?」


「……本当なんです」


 ダイゴの言葉にファムレイアはそう言って下を向いた。


「ふうん」


 ダイゴのその言葉に眷属たちの雰囲気が変わった。


「え?」


 驚いたファムレイアが外を見ると茶店は沢山の兵士に包囲されている。

 その数およそ二百人。


「こ、これは……」


「ってアンタが手配したんじゃないのか?」


「し、していません! 私!」


「……」


 否定するファムレイアに対しスミレイアは無言。


「まぁいいや」


 兵士の中に見知った男がいた。

 サダレオの孫のマシュカーン・ララスティンだ。


「マシュカーン! これは一体どういう事ですか!?」


「サダレオ法院長の命により、その者達を然るべき場所へ移す事になった。大人しくご同行願おうか」


 マシュカーンはにべも無く言った。


 その口調にもはや敬意など微塵もない。


「ほう、随分格が下がったようだな」


「そんな……折衝は私達に任せると言う事では無かったのですか?」


「どういう事だ? この方々は国賓だぞ!」


 クリュウガン姉妹が食ってかかる。


「ふん、それはルーンドルファ法皇陛下が独断で呼んだだけで魔導法院の預かり知らぬ所。そして先程法皇は魔導法院によって全ての権限を剥奪された」


「何ですって!」


「それではまるっきり叛乱ではないか! 本当にやるつもりなのか!」


「フン、国を売り渡そうとする逆賊には当然の事をしたまでだ。さぁ大人しく来てもらおうか?」


「断る」


 手をヒラヒラと振りながらダイゴもにべも無く返す。


「ふん、抵抗するなら力づくでご同行願うが?」


 額に青筋を浮かべたマシュカーンが手の骨をポキポキと鳴らす。


「面白い。どうやるのか見せて貰おうか?」


 その言葉でワン子、アレイシャ、セネリ、コルナそしてメルシャが立ち上がった。

 当然ながらソルディアナも瞳を輝かせている。


「あ……あ……」


「……」


「アンタ達は向こうに行った方が良いんじゃないか?」


 狼狽える姉妹にダイゴがそっと言った。


「「……」」


 少し下を向いて思いつめた姉妹だったが、目を合わせて頷くとキッと顔を上げた。


「私達もご一緒します。いえ、一緒に行かせてください」


「これはアンタ達の仕組んだことじゃ無いんだな」


「はい……私達にも知らされていませんでした」


 俯きながらもファムレイアが言った。


「まぁ良いけど、落ち着いたら色々話してもらうぞ?」


「分かりました……」


 姉妹は揃って頷く。


「と、いう訳でお前らにはついてはいかん。ここを通らせてもらうぞ」


「ハッ! そんな態度を取って良いのかぁ? 宿舎の女王たちがどうなっても良いというのか?」


 マシュカーンがにやけながら言った。


「あー、そういうつまんねぇハッタリは要らねぇわ。じゃぁ通るぞ」


 ダイゴは全く意に介さない。

 既に念話で宿舎を包囲されたエルメリア達が機動馬車ベルナディンで脱出準備に入っているのを確認しているからだ。


「な! お! て! と、取り押さえろ!」


 自分がかましたハッタリが全く効かず焦ったマシュカーンの号令で兵達が動き始める。

 だがそれは同時にワン子達眷属の攻撃開始の合図でもあった。


『殺すなよ!』


 ダイゴの念話を受けワン子、アレイシャ、セネリ、コルナそしてソルディアナが扇状に飛ぶ。


 ダイゴとクリュウガン姉妹の前には金色蛇鎖アネル・クヮヴァルを解いたメルシャとウルマイヤ、そしてチョコンとヒルファが立っている。


「あーヒルファは戦わなくて良いんだからな」


 ヒルファが眷属達、特に同じ獣人であるワン子やニャン子に憧れて日々鍛錬を積んでいるのはダイゴも重々承知している。

 そして『獣化転換』を使った時の戦闘力の異様な高さも。


 だが、それは一ミルテ(約一分)しか使えず、使った後の消耗も激しい。

 とてもでは無いが戦闘に加わらせられないし、そもそもそんなつもりはダイゴには無い。


 だが当のヒルファは姉妹、そして主であるダイゴを護るように足を踏ん張り、身構え、正面の仇為す者達を見据えている。


 その姿を姉妹はじっと見つめていた。


 ああ、あの時もそうだったっけ……。


 ファムレイアはボーガベルでヒルファが友人を護ろうと奮闘した時の姿を思い出した。

 その姿に心打たれて思わず回復の手を差し伸べたのだった。




「なななな……なぁっ!?」


 抜剣した左右の兵士達が次々と倒されていく。

 それも相手は剣すら抜いていない相手にだ。


 その様を信じられないといった表情でマシュカーンは見ていた。


 何だ……何が起こってるのだ……。


 短髪の少年にも見える只人族、話に聞く獣人や耳の長い森人族達は素手で兵達を殴り、蹴り飛ばしていく。


 無数の剣戟や槍の突きをそれこそ滑るようにすれすれでかわしながら確実な一撃で兵士達を昏倒させていくのだ。


 銀髪の女に至っては何も動作をしていないように見えるが周囲の兵が次々にうめき声を上げて倒れていく。


 周囲は忽ち地面に這いつくばる兵士達で埋め尽くされていった。


「おい」


 不意に掛けられた声に我に返り下を見ると漆黒の礼装姿の少女が睨めつけていた。


「木偶の棒、お前が指揮官のようじゃな? 我が主の邪魔じゃ。死にとう無ければさっさとそこな雑魚どもを連れて去ねい」


 見上げてはいるが明らかに見下げているような視線と口調にマシュカーンは逆上し剣を抜いた。


「ふ、ふざけるなぁ!」


 パキィン!


 次の瞬間ソルディアナの放った張り手がマシュカーンの剣を打ち砕いた。


 慌てて魔導杖を構える。


「な、何だ貴様は……」


 その問いにソルディアナはニヤリと笑う。


「我か? 我はなぁ……どーらごーん」


 次の瞬間、強烈な張り手を喰らったマシュカーンは


「べっぷぅっ!」


 という悲鳴を上げてクルクルと回って地面に転がり落ちた。


「マシュカーン様!」


 慌てて兵士たちが駆け寄るが、マシュカーンは白目を剥いて失神していた。


「貴様如きにまともに名乗るのは面倒じゃ」


 そう吐き捨てたソルディアナは次々と周囲の兵を同様に張り飛ばしていく。



「こんなもんで良いか。じゃあ行くぞ」


 マシュカーンを始め大半の兵が地面に倒れ伏し痙攣している中、ダイゴ達は悠々と停めてある馬車に向かって歩き始めた。


 だがそれを遮ろうと、また追おうとする兵はもはやおらず、残った兵は呆然と見送るしかなかった。

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次回をお楽しみに!

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