第百八話 誘拐
「へぇ、随分とデカい街なんだなぁ」
ベルビハスの門をくぐった俺は驚きの声を上げた。
もう夕方近くだというのに通りには多くの人が行きかっている。
「うん、アロバ王国第二の街だからね。人口も五万人以上いるんだ」
「あのでかいのは?」
道を行きかうヤクに似た大型の動物が目を引いた。
やはりヤクのように両脇や背に組んだやぐらに荷物や人を乗せている。
「ああ、あれはシギル。このベルビハスと西のシシャルの間のクァナ峠は馬車は通れないから皆シギルに乗って越えていくんだ」
「クァナ峠?」
「うん、クァナ峠はね、ケンガジョホを越えて西に行く唯一の峠で、切り立った崖の道を越えていくんだよ。越えるだけで一日たっぷりかかるから大概はここと峠の向こうのシシャルで一泊するんだ」
コルナが得意そうに説明する。
「うむ、アロバの国の王女様はキチンと自国のお勉強をなさっておられるのですね、感心感心」
「ダイゴさぁ、ボクをっていうか王室を馬鹿にしてない? ボクだってちゃんと勉強くらいしてますよーだ」
「そっかぁ、確かに自国はおろか他国の動静すらも詳しい王女とかもいるが」
シェアリアがコクコクと頷く。
「かと言えば日がな一日剣の稽古に明け暮れメシをガツガツ食った挙げ句朝はいつまでも起きてこないような王女もいるからなぁ」
再びシェアリアがブンブンと首を縦に振った。
「あう……そ、そんな王女がいるんだ……へー」
「なんだよ、心当たりあんのか?」
「ないよー、ナイナイ。ヒューヒュヒュヒュッヒュー」
「お前、口笛吹けないのに無理すんなよ」
「い、良いじゃ無いかぁ、練習だよ練習」
「ご主人様、宿を取ってきました」
宿の手配に行っていたウルマイヤがブルンブルンさせながら駆けてきた。
それを見たコルナのテンションが若干下がったようだがまぁいいか。
「おう、でどうだった」
「そ、その……銀宿が取れましたが……」
困ったようなウルマイヤの顔が全てを物語っていた。
「えーっ! またひと部屋なの!?」
「はい、この街は先にあるクァナ峠を越える為に滞留している隊商が多いそうで……」
「流石に今晩は……」
「だ、大丈夫だよ!? ボク昨日は疲れてぐっすり寝ちゃったからダイゴ達がな、何してたなんて全く知らないし」
ワン子のつぶやきにそう顔を真っ赤にして力説するコルナだが、語るに落ちるとはこの事だ。
「まぁ勇者様がそう仰るのなら」
「ダイゴさぁ、そういう時だけ勇者様って言うのやめてよね」
「ええ~、だってさ一応は勇者様のパ……一行なんだし勇者様のご意向を伺うのは当然では御座いませんか」
「わざとらしいよ。これじゃダイゴが勇者って言っても不思議はないね」
「あー、俺は勇者って柄じゃないからなぁ」
寧ろ魔王扱いされてる身だし。
「じゃ皆宿に入る前にメシを食おうか」
「へ?」
「なんだよ、デカい街だけあって美味そうな匂いを出してる食い物屋が一杯あるじゃないか。何処かで食ってからでもいいだろ」
「あ……うん、そうだね」
「それとも勇者様は早く宿でお休みになりたいと?」
そう聞いてまた何かを思い出したようにコルナは顔が赤くなる。
「い、いやぁ、ここはナニがおいしいのかなーお腹すいたなー」
コルナは一軒の食い物屋に吸い込まれるように入っていった。
「はふっ! ふっ!ふふっ!」
今夜もコルナは素晴らしい食いっぷりを発揮している。
カマネ牛に香辛料をまぶして焼いたもの、まぁステーキみたいなもんだが既に四皿目だ。
「お前さぁ、何時もこうなんか?」
「ふへっ? ほんひゃほほふぁひよ!」
どうやら
「ふへっ? そんな事無いよ」
と言ってるらしい。
果実酒を流し込むと、
「いつもは父上がダイゴみたいに口うるさく言うから」
「俺の故郷じゃメシ食ってる時に喋るなって普通に言われてたけどなぁ」
「へえ~ダイゴの故郷ってどこ? 中央大陸?」
「ん~説明すると長くなるうえに多分ご理解が頂けないので省略」
「なんだよ~けち臭いなぁ」
「んじゃぁ簡単に言うとニホンって所。こことは別の世界」
「あはは、何言ってんのさ。ダイゴ、からかうのも程々にしてよ」
「まぁ、こうなる訳だ」
「だって余所の世界ってケドリア教じゃ神様の国だよ? ダイゴはどう見ても神様には見えないよ……ん?」
そう笑って言ったコルナの眼前にウルマイヤが立った。
顔は穏やかだが身体中からドス紫の気配が噴出している。
「『洗……』」
「やめれ」
俺はウルマイヤの後頭部に軽く突っ込みを入れる。
「はうっ! あ……も、ももも申し訳ございません!」
「あ? う、うん」
慌ててペコペコ頭を下げるウルマイヤを何が何だか分からないコルナがキョトンと見ていた。
その時、
「コルナ様!」
店の入り口から入ってきた男がコルナに声を掛け、コルナは目を見開いた。
「え? ブニオン?」
「おおお、お探ししておりました!」
コルナがブニオンと言った中肉中背の男は駆け込んでくると膝をついてコルナの手を取ろうとしてきた。
「ちょおっと待った」
「は? あ、貴方たちは一体……」
俺の足で制されたブニオンが驚いた顔でこちらを見る。
なるほど従者と呼ぶに相応しい人畜無害そうな顔だ。
だがワン子もニャン子も表情が少し険しい。
これはこの男が相当な剣術の使い手で油断ならないと言う事だ。
「金を持ち逃げしたどっかの従者に代わって勇者様の従者をやってる者だ」
「も、持ち逃げ! それは誤解です! コルナ様! どうか話を聞いてくだされ!」
「って事らしいがどうする?」
「うん。ブニオン、話を聞かせてよ。どうしていなくなったのさ」
「はい。あの時私は馬車の手配をしに言ったのですが、うっかり国王陛下からお預かりした金貨の入った革袋を開け、それをヒディガの者に見られてしまったのです。すぐに多勢に襲われ、必死に逃げました。それでやっとのことで連中を撒いてコルナ様のいらっしゃった場所に戻ったところ、すでにそのお姿は無く、聞けば旅の商人と既に馬車に乗って街を離れたとの事で慌てて馬車を求めましたが既に皆出払っており……」
必死のブニオンの話をコルナは真剣に聞き入っていたが、俺達は冷めた……と言うか疑い全開の表情で聞いていた。
「そう言う訳で以来、コルナ様の足取りを追いかけ、ようやく追いついた次第で御座います」
「そうだったんだ……良くわかったよ」
「いや、全く分からん」
「え? 何でさ」
「まずそんな大金を目につくように出さないだろ? 従者がそんな脇の甘いことでどうすんの?」
「そ、それは……」
「何人も従者がいるならともかく一人しかいないのにコルナから離れるってどうなのよ。それで姫様置き去りにして逃げましたってアンタ従者としては失格だよ。何があっても主のそばにいてこれを守る。これが従者じゃないのかね?」
俺の言葉をブニオンは神妙に聞いている。
「ちょっと、ダイゴそんな言い方あんまりだよ」
「いえ……この方の仰る通りです。姫様を置いて逃げ出すなど従者として失格。やはり私はカロルデに戻り、国王陛下とセソワ姫に事の顛末をお話して罰を受けます」
「そんな……」
「ああ、そうしろ。後は俺たちに任せておけ。金は置いてけよ」
「はい……ここに」
ブニオンは背嚢からズシリとした革袋を卓の上に置いた。
恐らくは金貨が百枚は入っているだろう。
「では姫様、私はこれで。無事魔王を討ち取ってお戻りになられる事を祈っております」
頭を下げてブニオンは店を足早に出ていった。
「ブニオン! 待って!」
「追うなよ、コルナ」
席を立ったコルナだったが俺に言われて振り返った。
「何でさ! 聞いたでしょ? 襲われて逃げてただけだって! 急いで追おうとしたけど馬車が無かったって!」
「それをどう証明する? 嘘をついてないってどう証明するんだ?」
「そんな……何でそんなこと言うのさ! ブニオンは妹のセソワがボクの為に探してきてくれた従者なんだよ! 悪い人じゃないよ!」
「コルナ……」
「ボク、ブニオンを連れ戻してくる。それでダイゴに潔白を誓わせるよ。それなら良いでしょ?」
そう言うやコルナは店を駆け出ていった。
「……無理もないと思う」
最初に口を開いたのはシェアリアだった。
お転婆姫とはいえ世継ぎ王女として箱入り同然に育てられてきただろうコルナは人を疑うと言う事を知らない。
その点では王立学院に学んで多少なりとも世俗に交わったシェアリアよりもやはり世継ぎ王女として王宮の庭園に囲われて育ったエルメリアに通ずるものがある。
コルナの天真爛漫さはその為と言えるが、逆にそれはある種の危うさをも持っている。
ブニオンが置いた革袋は残されたまま。
「ここで別れるって言うかと思ったんだけどなぁ」
「……それは無い」
「そうか?」
シェアリアは自信ありげにコクコクと頷くと煮込みを口に運んだ。
「如何いたします?」
ワン子の問いは自分が出るかと言う事だ。
既に偵察型疑似生物にコルナは追尾させているので皆落ち着いたものだ。
「それには及ばないよ、俺が行くさ。あ、お姉さん肉焼き一つ包んどいて」
給仕に声を掛けてから俺は店を出た。
夕暮れの街をコルナが走る。
「ブニオン! ブニオン何処!?」
声に道行く人が振り向くがブニオンはいない。
もうこれからカロルデ方面に向かう馬車は無い。
夜半にクァナ峠を越えることも不可能だ。
ベルビハスの何処かにいるはずだった。
「姫様……」
ふとブニオンの声が聞こえてきた。
だがコルナには姿が見えない。
「ブニオン!? 何処だい?」
「姫様……こちらでございます……」
声は路地裏から聞こえてくる。
ダイゴを気にして姿を見せないのかな……。
躊躇わずにコルナは路地裏に入っていく。
既に路地裏は暗くなっていたがコルナには関係ない。
ダイゴとブニオンが話をすればきっと仲良くなってくれるよ……。
「ブニオン? どこだい?」
そう言ったコルナの視界が真っ暗になる。
何かの袋を被せられたらしい。
「なぁむぐっ……」
声を出そうとするも袋の上から口を塞がれ、更に縄で縛られた。
そのまま馬車に乗せられたらしく、ガラガラという振動が続く。
暫くして馬車は停まり、コルナは何処かの部屋に運ばれた。
袋の顔の部分が切り取られ、視界が開けた。
どうやら蔵のような所に連れ込まれたらしい。
薄暗い明りに何人もの男がにやついた笑いを浮かべている。
「な、何だお前たち!」
「姫様、一人でノコノコとおいで頂き誠にありがとうございます」
男たちの間から見知った顔が同じようににやつきながら出てきた。
先程別れたブニオンだが、コルナが見た事のない表情を浮かべている。
そこには誠実さの欠片もない。
「ブニオン?」
「コルナ様、全くお手間を掛けさせてくれる方ですなぁ」
「な、何を言ってるのさ……ま、まさか……」
コルナの顔が青ざめていく。
「そう、そのまさかでございます」
その様を愉しむ様にブニオンの顔がますます醜悪に歪んでいく。
「な、なんで……」
「私にはもう一つギシャム・ジンドという名前がありましてね。ヒディガの幹部をやっております」
「なんだって……それじゃ……」
「そう、金を持って消えたのもその後の事もある方に依頼されて貴方様に死んで頂く為でございます」
「そんな……」
「しかし、世間知らずのお姫様を始末するのに我がヒディガは予期せぬ損失を被りました。私が消えた後に手下、ああ、あなた方が乗った馬車の御者をしていた男があなたに近づき町外れに連れ出して始末する手はずだったのですが、あのダイゴとやらに邪魔されてしまいました……全く忌々しい」
「だ、誰が……何でボクを殺そうとするの?」
「それは別にあなたが知る必要は御座いません。くれぐれも言うなと言われておりますのでね」
そう言ってブニオンことギシャムは太い紐を両手でビンと張った。
「私は女を絞め殺すのが大好きでね、あなたも良い顔で死んでくださいよ」
そう言って呆然とするコルナの首に紐を回す。
「うそだ……ブニオン……」
「いいですねぇ、その絶望しきった顔。それが苦痛の末に悦楽の顔に変わっていく。たまりませんねぇ」
「ふざけんな、バァカ」
ふいに入口に声が響いた。
「な、誰だ!」
「決まってんだろ。俺だよ俺」
見張りの男たちが足元で崩れ落ちてる所をダイゴは入口に手をかけて立っていた。
「ダイゴォ!」
「おう、良い頃合いだったろ?」
「テ、テメェ何故ここが……」
「あん、お前の動きはずうぅっと見張ってたんだよ、間抜け」
「そ、そんな馬鹿な! 尾行など無かったはずだ」
「それがきっちり尾けられてたんだなぁ、ばーか」
「く、くうっ」
「さぁて、色々歌って貰うぞブニオンさんよぉ」
「ふん! たった一人でノコノコやってきたところでこれだけの人数にどうするって言うんだ」
周りの手下が一斉に得物を抜いた。
「……お前ら本当に学習能力が欠如してんだな。今まで多大な損害を出してたのを忘れたのかよ?」
「てめぇ! イキがるのも大概にしとけよ!」
「その台詞そっくり……」
ドン!
ダイゴの台詞が終わらないうちに背後から短剣が突き入れられた。
「あ……?」
ギシャムの顔がニチャリと歪んだ。
「ヘッ!」
「ダイゴォ!」
ダイゴが背中を弄って手を見る。
「何じゃこりゃあああ! ……なんてね」
そう手を広げながら笑った。
男の短剣の剣身が瞬時に展開した『暗黒球』によって消失した。
「ゲウッ!」
そのまま肘打ちを喰らい、男は血を吹きながら昏倒する。
「なんだ今のは!?」
「ナイショ」
「くっそう、馬鹿にしやがって!」
「馬鹿を馬鹿にして何が悪い」
「王女は後回しだ! コイツを絞めちまえ!」
ヒディガの構成員達がダイゴを囲む。
「逃げて! ダイゴ!」
「あ? 逃げるくらいならハナから来てねぇって」
短剣からこん棒、棘のついた鉄球を鎖でつなげたいわゆるモーニングスターみたいなものまで振りかざして襲い掛かる。
「死ねぇ!」
そう言って振り下ろされたモーニングスターが簡単に受け止められる。
「げ?」
「流石俺だ。なんともないぜ」
そのまま鉄球を鷲掴みにするとそのまま引き抜き、柄の部分で持っていた男の頭部を強打する。
男はウンとも言わずに昏倒した。
流石にこの街中で殲滅はまずいからなぁ……。
そう思いつつも奪ったモーニングスターをヌンチャクよろしく振り回して次々と相手を討ち殴っていく。
「アチョーッ!」
「ギャッ」
「ホアタ―ッ!」
「ゲッ!」
「アタァッ!」
「ギッ!」
すぐに十人ほどが床に這いつくばり、鼻や口から血を流しながらうめき声をあげている。
「な、なんだこの野郎は……」
ブニオンことギシャムが呆然とする中、一人を殴り飛ばしたはずみに鉄球をつなぐ鎖が切れ、男の顔面にへばりついたまま壁まで飛んで行った。
「めんどくせえ、手前らまとめて……」
残った柄を放り投げてダイゴが魔法を放とうとしたその時だった。
「全員そこを動くな!」
「な!」
入口から怒声が響く。
「警兵だ!」
警兵とは衛兵から独立した治安維持や犯罪を取り締まるいわゆる警察機構で、アロバのみならず多くの国で取り入れられている。
「ずらかれ!」
中にいた男たちが騒然とする。
「ここにヒディガの者たちが集まっているとの知らせがあった! 全員動くな!」
たちまち軽装鎧に身を包んだ警兵たちが雪崩れ込み、ヒディガの者たちと小競り合いが始まった。
「大人しくしろ!」
「ヘイヘイ」
やはり警兵に囲まれたダイゴも手を挙げた。
「くそっ! 離せ! 離しやがれ!」
既にギシャムも取り押さえられている。
「ダイゴォ!」
拘束を解かれたコルナが警兵に囲まれたダイゴに駆け寄る。
「ボクは第一王女コルナ! この人はボクの従者だよ! 手荒な真似は許さない!」
コルナは警兵に首から下げてたアロバの紋章を見せる。
「こ、これは失礼を!」
ダイゴの周囲にいた警兵が跪く中コルナがダイゴに飛びついた。
「ダイゴォ……これはダイゴが?」
「いや……俺じゃないよ」
ダイゴはキナ臭そうな顔で辺りを見回している。
「え? それじゃあ……あ……」
コルナは夢中でダイゴに抱きついていた自分に気づき慌てて離れる。
「……」
だがダイゴはそれを気にするでもなくどこか遠くを見ているようだった。
コルナが連れ込まれた場所はヒディガの隠れ家として使われている街外れの穀物倉だった。
野次馬が集まり騒然とする中ヒディガの連中が警兵に連行されていく。
ブニオンことギシャムは縄をうたれて連行されていったが、コルナ達をチラと見た目が笑っていたのがダイゴには気になった。
何にせよ警兵が介入してきたのではこれ以上の事は出来ない。
ダイゴにとっては残念と言えば残念だし微妙に腑に落ちなかった。
何しろ警兵の入ってくるタイミングが良すぎた。
「コルナ姫様は勇者の神託を受けて東大陸に向かっているそうで、ここは我々にお任せください」
散々事情を説明して警兵隊の隊長がそう言ったのは既に半アルワ経っての頃だった。
「ブニ……あの者たちは?」
「明日我々が厳しく詮議を行います故、コルナ姫様に置かれましてはご心配には及びません」
「でも……」
「コルナ、行こう」
「う、うん。じゃあ頼んだよ」
「はっ、お任せください」
直立して返事した隊長に見送られダイゴとコルナは現場を後にした。
既に夜の帳が下りた街をダイゴとコルナが歩いていく。
コルナはいつもの元気が消え失せ、トボトボとついてくる。
「ダイゴ……」
「ん?」
「ゴメン……ボク……」
「コルナが謝ることじゃないよ」
「でも……」
それ以上は言葉は続かなかった。
「飯途中だったろ? 宿でお前の分取ってあるから」
「うん……」
その夜、銀宿『煌く鷲亭』のダイゴ達の部屋。
事情を察した眷属達が各々の夜具で寝ている中、すっぽり隠れるようにして震える夜具があった。
「……っ……ぅっ……」
暫くしてその夜具の主はダイゴの所に潜り込んできてぎゅっとしがみ付くと声を殺して泣き始めた。





