ガチャ932回目:強制付与
「さて、ガチャからは案の定『弱体化』とアタッチメントが出た訳だが……とりあえず皆に順番に『弱体化』を付与していくな。タマモ、やり方なんだが……」
『はい、御主人! 直接付与であれば簡単なのじゃ。相手に直接触れて、付与したいスキルを強く念じるだけじゃ』
「なるほどな。じゃあ最初の実験台になってくれるか?」
『はいなのじゃ!』
目の前にやってきてお座りをするタマモを撫でる。心地良さそうに目を細める彼女に向けて、『弱体化Ⅴ』の付与を強く念じた。
【識別個体名:タマモに弱体化Ⅴを付与しますか?】
おお、メッセージが出た。周りからの視線も集まってるし、このメッセージは皆にも見えているんだろう。こんな機能があるってことは、流石は最高ランクの『幻想』だな。
「付与する」
【スキル保持者の意志を確認】
【実行します】
【識別個体名:タマモに弱体化Ⅴが付与されました】
【強制的にスキルを発動しますか?】
「……これ、発動しなかったらどうなるんだ?」
『発動しなかった場合は、対象の中でスキルが眠りにつくのじゃ。そうするとスキル欄にも名前が載らないから、付与されたことが分からないのじゃ』
「あ~……じゃあ、1度は強制発動しておかないと、相手も自由にはスキルを使えないのか」
『そういうことなのじゃ』
「んじゃ発動を許可する」
その瞬間、タマモから発せられていた強者のエネルギーが急激に萎んでいくのを感じた。『弱体化』は自分の意志でどれくらい弱くできるかの設定ができる。最少は1/2で、分母を+1刻みで増加していき最大はスキルレベル×10まで可能。
……にしても、これがステータス1/50の効果か。俺の場合は1/10とか1/20とかを多用していたけど、確かにこんなの乱用してたら皆もガチャを知らずともおかしい事に気付くわな~。
『す、すごく弱くなったのじゃ~!』
ふむ。タマモが秘宝を使わずにいた場合のステータスは、『土の大精霊』戦後のレベルアップの効果で大体平均して13000くらいには育っていたはず。それが1/50になったということは、全ステータス260くらいになった訳だ。
大体、平均的なレベル30の冒険者と同等クラスということかな。
「んじゃ次に、強制の解除をするか。そうすればスキルの操作権はタマモに残るんだな?」
『そうなるのじゃ。もしスキルそのものの付与を取りやめたい場合は、付与する時同様に直接触れる事で取り除けるのじゃ』
「……あれ? そんなこと書いてたっけ」
『あ、そうだったのじゃ。ごめんなさいなのじゃ。マスターの眼は、知ってさえいればどのようなスキルでも詳細が記載されるのじゃった。わっちもサクヤで初めて知ったから、視えないのが普通と思っておったのじゃ……』
「怒ってないから大丈夫だぞ」
しょぼんとするタマモを撫でてあげる。まあ、そういう事なら仕方ない。
死闘の直後に自分のスキルの詳細を思い出してカミングアウトする馬鹿たれもいたので、この程度可愛いものだ。
「じゃあ今サクヤさんには……?」
「いいえ、付与は続けて貰っているわ。私もこのスキルには悩まされもしたけど、助けられても来たから。今度は自分で扱いたかったもの」
「そうなんですね。まあ、スキルがあろうとなかろうと、俺は既にメロメロですけど」
「ふふ、よく知ってるわ」
そうしてイチャつきつつ、タマモの強制発動を解除してサクヤさんにも強制付与+発動+解除の3コンボを実行する。メッセージを無視して素早く連続で行っても機能自体はつつがなく発揮されたのを確認した俺は、そのまま各人に同様の処置を行い、続けて妊娠中の子達のお腹にも強制付与+発動までの処置を施した。
「お腹の子に1/50は強すぎるから、ひとまず最小の1/2で作用させておいた。もしこれでも彼らが動くたびに何かぶっ壊すようなら、その時はまたかけ直すよ」
相手のステータスも分からないのに、最大級に『弱体化』を付与したら、最悪ステータス1以下なんてことにもなりかねない。そうなったら、赤ん坊は虚弱体質になりかねないし、それはつまり病気にもなりやすくなる。それじゃ流石に本末転倒だからな。その辺は、生まれてからゆっくりと徐々に調整していけばいい。
俺の考えを皆に共有すると、全員が納得してくれた。そうした傍ら、向こうの世界の住人ことペット組が何やら議論をしていた。
『それにしても、生まれてくる子供はどっちなのかしら。人間? それとも『ハイ・ヒューマン』?』
『『ハイ・ヒューマン』は超越者的存在ですが、レベル1000を超えた個体にしか到達できない境地です。いくらマスター様の子供とはいえ、最初から『ハイ・ヒューマン』で生まれてくるとは思えないですね』
『種も母体も、どちらも途中からの変化というのが悩みの種なのじゃ』
『我が知っておる限りでは、『ハイ・ヒューマン』の子供は全て人間だったはず。ただ、これは『ハイ・ヒューマン』の番が人間だった可能性が高い故、あまり参考にはならぬかもしれぬが』
『じゃがなんであれ、御主人の御子に違いはないのじゃ。わっちらはめいいっぱい可愛がるだけなのじゃ』
『ふっ、然り』
『流石ですお姫様。その通りですね!』
『あんたに先に言われるのはシャクなんだけど、まあ良いわ』
全く、仲良いなお前ら。だがその通りだ。生まれてくる子がなんであれ、俺達は全力で愛情を注ぎ育てるだけだ。
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