ガチャ928回目:二度目の挙式②
そして次にやって来たのは人の良さそうなお爺さんに連れられてやって来たテレサだった。あのお爺さんも昨日挨拶をしたんだが、俺は親族の爺ちゃんかなーとふわっと考えていただけに、その正体を聞いて驚かされた。式場にいる他の参列者達も驚きで目を丸くして驚いているようだな。
このお爺ちゃんの正体は、現バチカン教皇だった。そんな偉い人がテレサの親代わりとして挨拶しに来た事に、流石の俺も思考がフリーズした。
まあ事情を聞いてみれば、テレサもまた孤児であり、更にはバチカンを代表する冒険者でもあり、聖騎士の名を賜ったSランク冒険者な訳だ。バチカンの最高指導者が後ろ盾になっていてもなんらおかしな話ではないという訳だな。
そしてかのダンジョンは、入口で狩りをするだけなら負担は少ないが、奥で狩りができるのは後にも先にもテレサだけであり、彼女がダンジョンから離れた現状ジリジリと追い詰められているという。『機械ダンジョン』攻略でダンジョンから得た『ダンジョンカウンター』も、日本のすべてのダンジョンで確認したところまだまだ全然余裕があったのだが、気を利かせたサクヤさんがうちの彼女達の故郷にある最難関ダンジョンも追加で調べてみたところ、バチカンのダンジョン……『666ダンジョン』がギリギリのラインまで来ていることがわかったのだ。
それもあって、教皇が直々にやって来て俺にお願いをしに来た側面もある。次の攻略先にどうか選んで欲しいと。そういうこともあって、次の攻略先は『666ダンジョン』に決定した訳だ。
そして教皇は、俺の前までやって来ると一言も話さず、ただ頭を下げた。俺もそれに倣い頭を下げ、テレサを受け取る。
「テレサ」
「はい……ショウタ様」
元々アマチ様呼びだったけど、今日から彼女の姓もアマチになったので、呼び方は変えて貰った。
「今日から君も、俺の正式な伴侶だ。絶対に幸せにするぞ」
「はいっ。これからも、どうかお側に……」
そうして頬にキスをしてくれたテレサも俺の横に並ぶ。これで最初に予定していた4人は並んだ訳だ。続いてやって来たのは、狐族の子供達に挟まれるようにやって来たアズとキュビラだ。彼女達も他と同様純白のドレスを身に纏っている。アズの事だから黒いドレスだとか、キュビラは和服で来るかなと思ってたけど、どうやらそうでもないようだな。
『郷に入っては郷に従えってね♪』
『マスター様であれば、私達も他の奥方様も分け隔てなく愛して下さるでしょう? ですから、私達も別の衣装を着る必要はないと判断致しました♡』
「そっか。とっても綺麗だし、似合ってるよ。もちろん、お前達もな」
彼女達をここまでエスコートしてくれた子達の頭も、順番にポンポンしてあげる。今日狐族の子達は全員が黒を基調としたフォーマルな執事服を身に纏っていて、参加者の案内やら設備の準備など頑張ってくれていた。今日は彼らにとって特別な人達の大事な日なのだ。社会貢献という意味でもそうだし、その頑張って働く姿はカメラを通して全国に伝わるはずだ。その姿だけでも、批判の声は収まるはずだ。
「やったー」
「ご主人様に褒められちゃった」
「えへへ~」
「ご主人様もカッコイイですよ~」
『マスター様、あの、宜しければ……』
「ああ、他の子達も1人1人今日の頑張りは褒めてあげるよ」
『流石あたしのマスターね。うちの子達を大事に扱ってくれてありがとう♪』
『マスター様、これからも末永く、よろしくお願いいたします♡』
彼女達を抱きしめ、お返しに両頬にキスを受ける。そして狐族の子達が一礼をしてドロンと消え、アズとキュビラは俺の両隣に並んだ。
……アズの存在についてグランマや教皇はどう反応するかちょっと心配ではあったんだが、グランマはニコニコと受け入れているし、教皇は……多分見ないフリをしてくれている感があるな。一応攻略する時はアズはちゃっかり連れて行くつもりだけど、大丈夫かな?
まあそれはさておき、これで本来の結婚予定者は全て揃った。このまま次の段階へ進むべきなのだろうが、俺はそのまま待ち続けた。何も知らない人達は何かトラブルでもあったのかとざわつくが、嫁達や一部の関係者たちは静かな物だった。
「……」
にしても長いな。準備に手間取ってるのか?
迎えに行くべきか悩んだ所で、ようやく司会に動きがあった。慌てて渡されたカンペに、驚きを隠せないでいる。
「え、えー。お待たせしました。続けて飛び入りでの新婦の入場です! 皆様、ご静粛にお願いします」
そうして扉が開かれ、静寂が包む式場に2人のドレス姿の女性が入って来た。
1人は俺が幸せにすると宣言したサクヤさんで、もう1人はタマモだった。
今まで詳しくは聞いてこなかったが、サクヤさんはやっぱり未亡人で、旦那さんとはダンジョン以前に死別していたとかなんとか。彼女には正式なプロポーズをして、迎え入れる事については喜んで受け入れてくれたんだけど、他の嫁達と並んで式を挙げる必要に関しては不要だと、ついさっきまで拒否を続けていた。けど、俺が一向に折れなかった事と、他の嫁達の猛プッシュ、更にはドレスをすでに用意している事もあって、ようやく折れてくれた。
まあ彼女としては未亡人の自分を迎え入れる事が、俺の醜聞に繋がると気にしていたみたいだけど、正直俺は今までもこれからも、周囲に自分がどう思われようがあんまり気にならないんだよな。ただ、うちの嫁がそのせいで馬鹿にされるのなら戦争でもなんでも起こして構わんとは思ってるけど。
「サクヤさん、緊張してる?」
「……ずるいわショウ君。私に内緒でドレスまで用意しているなんて」
「とても似合ってますよ。それに、とても綺麗だ」
『傾国の美女EX』が解除されたとはいえ、彼女の美貌は他の追随を許さない。そんな中での『ハイ・ヒューマン』への進化だ。もはや彼女の美しさは、かのEXスキルすら凌駕したと言って良い。
この式場の誰もが彼女に見惚れていた。
「ショウ君。私を、幸せにしてくれる?」
「勿論、全霊を賭けて」
そう伝えると彼女は微笑み頬にキスをしてくれる。それだけで腰が砕けそうになったが、なんとか耐える。
そして最後に迎えるのは、アヤネと並ぶレベルで見た目が少女なタマモだ。彼女はサクヤさんにプロポーズする際、キュビラ達の言う通りにブラッシングをすることであっさりと墜ちてしまったのだ。まあ、元々俺が彼女の求める異性の条件を最初から全部満たしていたってのもあるみたいだけど。ブラッシングで恐れを取り除いたら、好意が爆発するとは流石に思わなかった。
アズもキュビラは、その変化はお見通しみたいだったけど。
「タマモも緊張してるのか?」
『……御主人、本当にわっちも参加して良いのかえ?』
「くどいぞ。お前はもう俺の物だ。他人がどうこう言おうが関係ない。だから正式にお前も嫁にする」
『御主人……。くふっ、強引な所も素敵なのじゃ♡』
タマモは嬉しそうに尻尾をブンブンした。
こらこら、あんまり振るとドレスがめくれるだろ。
彼女を抱きしめ、頬を差し出す。するとタマモははっとなり、思い出したかのように慌てて頬にキスをしてくれた。別にこれは必要ではないんだけど、皆が通った道だしな。1人だけやれないのは心残りになるだろうし、差し出してみたんだが……。うん、タマモも嬉しそうだし、他の嫁達も微笑ましく眺めてくれていた。
さて、今回の嫁はこれで全て揃った。あとはこのまま式を挙げて、披露宴を終えれば、二回目の結婚式も完了だな。
三回目は……流石にもうないな。これ以上俺は誰も迎える気はない。そこは公言するべきかは相談するとして、俺の気持ちだけは皆に伝えておかないとな。
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