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ガチャ924回目:4度目の記者会見 後編

 先ほどの発言で騒つく会場とコメント欄だったが、とりあえず無視することにした。


「……今まで世界に貢献して来たってのに、俺からは1度もワガママも注文も言わずに来たんだ。奴隷じゃないんだし、たまには良いだろ」

「ご主人様」

「ん?」

「ぼそっと独りごちたつもりでしょうけど、マイクに乗ってます」

「……oh」


 咳払いで誤魔化して、話題を変えることにした。


「あー、では続いて、あのダンジョンで得た秘宝級アイテムの紹介に入りたいと思います」


 気を取り直して、『ダンジョンカウンター』と『超広域位相電波塔』の解説をした。後者はサイズがデカすぎるので、『マジックバッグ』から頭だけを出す感じに留めておく。


「これからは『ダンジョンカウンター』を用いることで、危険水域にあるダンジョンの特定が可能となり、それを指標にどのくらいダンジョンに人材を派遣するべきかの判断ができるようになるかと思います。日本の保有ダンジョン数は世界の中でも指折りに多いですけど、それでもよその国と比べれば安全に維持できている方だと思います。それでももし瀬戸際のダンジョンがこの国にあるのなら、攻略優先度を上げて俺が乗り込んでも良いかなとは思ってます。国の危機に対してまで、俺の気分でワガママを言う気はないですしね」


 まあ、それでも2箇所同時に危険ダンジョンが存在するとかでなければ、難易度次第ではカスミ達やエスに投げても良いかなと思ってるけど。


「ああでも、危険域に達しそうだからってわざと手を抜いて、危険だから俺を呼ぶなんて真似をするようなら、俺も動かないですけどね。……流石にそこまで終わってる人は、今のこの国にはいないか」

「アマチ様。ご質問宜しいでしょうか」

「どうぞ」

「この『ダンジョンカウンター』は、以前入手された『ダンジョンマーカー』のように量産は難しいのでしょうか」


 ああ、最初の海底スタンピードの時に得た奴だな。あれは協会経由で世界中の海底ダンジョンの位置特定に役立ったんだったよな。

 アレって今、どこにあるんだっけ?


「今はサクヤ様のところに全て戻って来ております」


 アイラがこそっと耳打ちをしてくれた。流石サクヤさん。ちゃんと回収してくれてたんだな。まああれも、また数ヶ月もすれば次の世代のダンジョンが出て来るだろうし、海底ダンジョンは増えるだろうからな。また活躍するだろうし、それを見越してあるんだろうな。

 おっと、思考が逸れた。『思考加速』のおかげで1秒にも満たないが、沈黙し続けるのは……いやでも、多少の沈黙は場合によっては有りか?


「これは『機械ダンジョン』の第四層にあった隠し部屋で入手した宝箱からのアイテムになります。モンスターを倒して手にしたものではないため、恐らく『機械ダンジョン』では二度と手にすることはできないでしょう。まあ、同じアイテムが別ダンジョンから排出される可能性はなくはないですから、アイテムの特性から考えて他の400番台ダンジョンで眠っている可能性はありますね。ただ、現状これ1個だけです」

「お答えありがとうございます。ではこの『ダンジョンカウンター』は、国内でのみの使用をお考えで?」

「優先はしますけど、攻略が進めば国外への貸し出しもありかなとは思いますね」


 その内日本国内では不要になっていく可能性が高いからな。まあいつになるかは不明だし、なんなら次の100個出現時に、楔の外側を囲い込むように大量に出現する可能性だってある訳だ。そう言う意味でも国内は早めに平定して、国を囲い込む海も楔の範囲に取り込みたいところだが……。

 けどそれは太平洋は良くても、日本海側は絶望的だな。次はその辺にダンジョンが出てくれたら、日本の土地を囲い込んで管理もしやすいんだが……。


「ではアマチ様、次に『超広域位相電波塔』についてですが……」

「ああ、これはまあダンジョンに存在する黒塔の代替品になるかと予想はしてるんですが、いかんせん出たばかりで試せてはいないんですよね。なのでその辺は、協会に任せようかなと。それから国外には……国内への敷設が全て終わった後になりますが、まあ貸し出しって形が丸いのかな。貸し出しする国や費用は国ごとに異なってしまっても仕方ないかなーとは思いますね。その辺は今までのツケを払う形で。この辺も協会に……というか、外交担当の宝条院家に丸投げします」


 そうして簡単に2点のアイテムについては質疑応答し、他にも細かい点などの質問はあったがそれらは今後協会から発表があると思うので、この場での回答は差し支えさせてもらった。というか、これら2つのアイテムについてはこうしたらいいんじゃないかと思ってたことを口にしただけで、それ以上は何にも決めてないからな。聞かれても困る。

 さて、他には無さそうだし、最後に発表だけしておこうかな。


「それでは最後に、さっきもお伝えはしましたがアズとキュビラとは籍を入れますが、もう少ししたら第二回目の結婚式をしようかなと考えてます。会場は前回と同じで、対象人数は7人を予定してます」

「おめでとうございますアマチ様。前回の結婚式では、入口に設置された人形もそうですが、アマチ様やその奥方様の気品に当てられて失神者が多数出てしまいました。今回改めて気を付けておくべきところはありますでしょうか」

「あー……。正直気絶者が出てしまうのは多少仕方がない部分もあると思うんですよね。それに、うちの嫁達は前回以上にオーラが強くなってると思うので、気を付けていても気絶者は絶対出ると思います。気配やオーラを抑える方法も会得してはいるんですが、そういう場ですので抑えが効かなくなるのはご理解いただければと」


 『弱体化』のスキルって、一度有効化すると意識しない限りずっとONのままだったりするんだけど、何故か幸福感に包まれると、オーラが『弱体化』の効果を無視して溢れ出ちゃうんだよな。

 正直この辺の仕様は謎だけど、出ちゃうんだからしょうがないよな。

 そうして結婚式の話題によって和やかな空気になったところで、そろそろ終わりかなと思ったところで、通知がやって来た。


【ダンジョンNo.588のスタンピード設定が無効化されました】


「この番号は、ロサンゼルスか」


 てことは、エスがやってくれたみたいだな。『豊穣のダンジョン』のお隣で相当簡単なダンジョンって話だったけど、今のエス達には腕慣らしどころか、準備体操にもならなかったんじゃないか?

 とにかく、めでたいニュースが飛び込んできた事でちょっと延長戦に入ったが、最終的に記者会見は晴れやかなムードでお開きとなったのだった。

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