ガチャ923回目:4度目の記者会見 前編
『パチパチパチパチパチパチ!!』
「あーどうもどうも」
前回同様の拍手喝采を受け、軽く手振りして応える。そうしてそのまま着座すると、拍手はピタリと止み、直立不動のまま俺の反応を待っていた。
「座ってもらって大丈夫です」
彼らは軍隊のように動きを合わせ、スッと着座した。ううん、相変わらずの統率力。
そう感心していると、いつもの女性がマイク片手に立ち上がった。
「アマチ様、本日はよろしくお願いします!」
『よろしくお願いします!』
「はい、よろしくー。それではご存知の通り、今回は関東第一エリアの最難関が1つ、No.450『機械ダンジョン』の完全攻略が完了しました」
『ワッ!』
再び起きる喝采をある程度浴びてから手で制す。そしていつもの流れと行きたいところだが、先に一言……いや、空気が悪くなっちゃうし、やっぱ後でいいか。
「ではいつも通りで行きましょうか」
「はい、アマチ様。今回も最難関ダンジョンの攻略、お疲れ様でした。今回はどのような点で苦労されましたでしょうか」
「あー、そうですね。苦労という意味では第五層と第六層かな。あそこはどちらもレアモンスターの出現方式が特殊で、理解はすぐにできましたが扱いに苦労させられました。例えば……アイラ、第六層レアⅡ大量出現の無編集映像よろしく」
「畏まりました」
そうして100体越えのレアⅡ集団の映像に会場に驚きと興奮の声が上がり、同時に手元の画面には生放送によるコメントが弾幕のように流れていった。せっかくだ、このまま殲滅するまでの映像を流してしまおう。
アイラに目配せし、映像に連中のステータスと出現条件を載せてもらう。これは煙が見えないと真実には辿り着けないので、「レア討伐後一定条件を満たした状態で最上階へ移動する」とした。まあ嘘ではないし大丈夫だろう。そう思っているとアイラが耳打ちしてくる。
「ご主人様、宜しいのですか?」
「まあそろそろ良いんじゃないかな? 最初は俺の戦闘映像を世界にばら撒くと、敵対勢力に対策されかねないと思ってたけど、今は明確な敵対組織は無いに等しいからな」
征服王は死んだし、『炎』のあいつはアレ以降絡んでこないし。一応マリーの国のフランスからは、一部集団から聖女を返せと抗議メッセージが届いているらしいが、相手する気はない。
それにマリーに聞いたところ、そいつらは例のルールを押し付けて来た嫌いな連中だって話だったので、そのメッセージにはお返しとして、雁字搦めルールを強要して来た事でマリーは心身ともに衰弱していたので俺が引き取ったとメッセージを添えて返答してやった。
それも、世界中誰にでも見える形で大公開してやったのだ。雁字搦めルールの詳細付きで。それ以降連中の応答はないけど、息してるのかな?
「世界中からフランスとその組織に大バッシングがあったようですし、息していないかもしれませんね」
「そっかー」
カタコンベはその内挑戦したいとは思ってるけど、この調子じゃまだかかりそうかな。
「そういや例の招待状は出した?」
「はい、協会経由で。早ければもう向かって来ていることかと」
「おっけー」
2人でコソコソと話していると、映像の再生が終わったようだ。会場も放送も興奮冷めやらぬ様子で騒ついている。まあもう少し待ってやるか。
しばらくその状態で待ち、ちょうど良いタイミングで手を叩いて注目を浴びる。
「はい。というように、あんな感じの状態になったので、大変でしたね。楽しかったですけど」
「なるほど、ご回答ありがとうございました!」
「はいでは次の方ー」
そうして次々と質疑を受けては回答していき、ある程度の問答が終わった事を知覚していると、珍しく最初の彼女が再び手を挙げた。
「アマチ様、再びの質問で恐縮ですが、宜しいでしょうか」
「他の方はないようですし、どうぞー」
「はい、ありがとうございます。支部長からの情報や掲示板で報告されていた内容によりますと、アマチ様は第五層でトラブルに巻き込まれたと伺っております。その件についてお答え頂けますでしょうか」
おっと、そっちから爆弾をふっかけて来るとは。やるなぁ記者さん。
そろそろ名前を覚えてあげたほうがいいかな?
「そうですね……今回の攻略において1つ、嫌な事件に仲間が遭遇してしまいました。これを説明するには第五層の厄介な点から説明しないといけませんね」
そう題して、起きた事件の概要と、第五層の面倒な点を説明。そしてキュビラに起きた出来事の説明と、その時隠し撮りさせていた映像を公開。会場は静まり返り、放送でも怒りを露わにしたコメントが続出した。
「まあ、考えは人それぞれですし、ダンジョンは別の世界からやって来た資源であると同時に侵略であることに変わりはありません。ダンジョンが出たことで文明が発達して助かった命もありますが、その裏側でダンジョン攻略やスタンピードによって、モンスターに命を奪われた方々がいらっしゃるのを忘れてはいけないと思います」
そこで一旦一区切りを入れ、話を続ける。
「ですがそれはそれとして、元がダンジョンボスだろうと迎え入れた以上彼女達は俺の家族です。そして、後日彼女達とは籍を入れるつもりでいるので……俺の女を泣かせたコイツらをどうしてやるべきかと頭を悩ませましたが――」
「ご主人様」
アイラが俺の両肩に手を置いた。そうしてもらう事で俺はハッとなり、怒気が漏れ出ていた事を察した。すぐさまそれを抑え込み、一度深呼吸をする。
「……まあ、知らなかったかもしれないので俺からは何もしないでおきます。ですが、今後俺の見える範囲で彼女らを貶めるような事をする奴を許すつもりはないとだけ伝えておきます。それから今回の件でちょっとやる気が削がれたので、国内のダンジョン平定は緊急性が高い案件でもない限り、しばらく休みたいと思います。再開は未定でーす」
まあ最後のは方便だが。ちょっと国外の難関ダンジョンも気になってるんだよなー。
あと、言論統制をするつもりはないが、周囲が過ごしやすい環境になるには多少の劇薬は必要だろうと思う。サクヤさんほどの改革を行う訳ではないし、俺の活動休止をネタにするくらいは問題ないよな……?
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