ガチャ920回目:Shall we ダンス?
「くっ!」
『ミシッ……!』
「うおおっ!?」
『ミシベキッ……!』
見えはしなくとも、あらゆる手段で感知ができるおかげで、全ての攻撃をギリギリで回避することができていた。だが、相手は一歩も動いていないのに、こっちは攻撃することもできず動き回らされている。
相手の『魔力』は有限だ。その内尽きるだろうが、これがもし本物の『麒麟』なら『魔力:∞』でも不思議じゃない。それを想定して動くのなら、ここはこの猛攻の中を潜り抜けて、致命傷を与える手段を模索するしかない。
となればまずは……。
「10倍マジックミサイル3連!」
『ドドドンッ!』
『……!』
奴が初めて動いた。といっても、ダメージを嫌うように身をよじった程度だが。あと、直前に回避しようと動こうとした節があったが、マジックミサイルの速度が速すぎて対処できなかった感じだな。
さて、このマジックミサイル。ブーストしても威力参照されるのは恐らく『知力』ステータスだし、属性も存在しないため、普通の手段ではこれ以上威力を上げる方法がない。けど、1つだけ威力底上げができる方法があるんだよな。今俺のスキル欄には存在しないが、在庫として存在している『魔力溜め』だ。清算は最後にするスタンスなのでこれも最後まで取っておこうと思っていたが、今はコイツ相手にどの程度効果があるか調べてみたくなった。
確か直近で手に入れていたのは、『忘れ去られた女神像』が持つ『魔力溜めⅤ』だったな。それも確か倍加で2つになってたはず!
「アズ! 在庫にある『魔力溜めⅤ』を準備しておいてくれ!」
『了解よ!』
アズがガサゴソとスキルを用意している間も、敵の空間破壊は続いている。奴の周辺にあるあちこちの空間が、捻れ、ひしゃげ、押し潰され、吸引されて行く。
それらを1つ1つ的確に回避しつつ、俺は『解析の魔眼』で発動直前の情報や、初動から発生までのフレーム単位での間隔など、ありとあらゆる情報を読み解き、空間を破壊する能力の知識と情報を蓄積していった。
まず、奴の空間破壊能力は視線が起点になっている。有効範囲は奴の目前を中心として縦に直径5メートル、横にも5メートル、奥行き30メートルもあるようだ。そして厄介なことに、常時『神速』で動き回っても奴は常に俺を視界の中心に捉えてくる。『超効率型ロックオンシステム』なんてものを採用してるし、それがある限り奴のターゲットから外れることは不可能だろう。
弱点があるとすれば、振り向きが少し遅い点と、発動の瞬間から実際に空間が捻れ曲がるまでに一瞬のタイムラグがある点か。
『マスター、あったわよー。どうすれば良いー?』
「俺と一緒に踊ってくれるか?」
『……喜んで♪』
アズが飛び出し30メートル以内に近付くと、奴はぐりんと首を動かした。それを予測していた俺は、すかさず10倍マジックミサイルをお見舞いしてやる。
『……!』
「よそ見すんなよっ!」
再びターゲットを俺に切り替えた『麒麟』から空間破壊の能力が行使されるが、その瞬間『次元跳躍』を使用。アズのすぐ隣までやってきた。
『はい、マスター♪』
「サンキュ!」
俺達は左右に飛ぶが、再び奴のターゲットはアズへと向いた。彼女の表情からは問題ないという意思が読み取れたため、俺はその隙にスキルの詳細を確認することにした。
名称:魔力溜めⅤ
品格:≪伝説≫レジェンダリー
種類:ブーストスキル
説明:魔法を2秒以上維持し続ける事で威力を最大4倍にする。魔技スキルの場合4.5倍にする。
★消費魔力が最大で2倍になる。
なるほど。仕様は『力溜め』と似たような感じか。なら早速取得してと。
「10倍マジックミサイル3連!」
魔法を発動するが、すぐには放たず手元に留める。『力溜め』と同じ要領ならこのまま待機すれば……うん、ダメだな。変化ない。
となれば、ただ維持するだけじゃなく魔力を与え続ければ良いのか?
どんくらい与えれば良いのか分からんが、とりあえず垂れ流してみる。すると、徐々にマジックミサイルから感じる圧力が強まっていき、ちゃんと2秒ほど経つ頃には、2倍の魔力消費とは思えないほどに膨れ上がった弾丸が完成した。
高レベル帯における2秒って割と致命的な時間ではあるし、意識を逸らすと消失する魔法そのものの特性はそのままだから、集中を切らしたらアウトな訳だが……。それでも、同じ威力の球を複数並べるよりは効果的だろう。
早速戦場へと意識を戻すと、そこでは文字通り踊るように空間破壊を回避し続けるアズの姿があった。
「アズ!」
『ええ!』
ターゲットを取るため、接近して攻撃をしていたアズが距離を取る。
「食らえ!!」
『―――――!!!』
閃光が『麒麟』とその周囲を包み込み、爆発音が遅れて聞こえた気がした。
「どっひぇー」
まるで爆撃だな。
ただの10倍じゃ軽傷しか負わせられなかったのに、溜めたらこんな威力に跳ね上がるのか。神獣を模した超硬質ボディの『麒麟』もどきの、首から上が吹き飛んじまった。
それでもまだ死亡判定にはなっていないらしく、ギギギギと無理やり身体を動かして敵を探そうとしているようだ。空間破壊の用途以外にも、ちゃんと目で見て敵を識別していたようだし、頭が吹き飛んだせいで俺達がどこにいるのかわかっていないようだな。このまま放っておいたら他のスキルで全方位に無差別攻撃してきそうだし、さっさと始末をつけるか。
「ハーフブースト! ふぅー……いくぞ! 『神速・殲滅剣Ⅴ』!!」
『斬ッ!』
中身が剥き出しになった部分を集中的に狙う事で『麒麟』の身体をどんどん解体していき、身体の体積が半分くらいになったところで煙となって消えていった。
【レベルアップ】
【レベルが23から941に上昇しました】
【管理者の鍵(450)を獲得しました】
「ふぅー、攻略完了っと」
200×2のレベルを『スキル生成』に回して、人数分の進化セットの確保も完了。残るレベルは541もあるし、久々にガチャ20連分もできそうだな!
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