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ガチャ913回目:連殺剣

『マスター!』

『マスター様!』


 俺のピンチを察して、アズとキュビラが前に出ようとする。


「いや、このままやらせてくれ! けど、その後の判断は任せる!」


 こんなレベルの強敵連中による飽和攻撃は、今まで経験したことがない。これも経験だ。なんとか彼女達が踏み込む判断をしないよう善戦して、その上で乗り越えてみせる!


『ガチャン!』

『ガチャン!』

『ガチャン!』

『ガチャン!』


 怒りが込められた鉄靴の音が鳴動し、俺の周囲を取り囲んでいく。奴らの怒りは、激流による制圧ではなく、冷静にキレるタイプのようだ。

 囲みは空に向けてなら隙間はあるが、それも1度使えば2度目はないだろうな。それに逃げを使えば彼女達が飛び込んでくる機会を与えてしまう。

 ならここは、ひたすらに攻撃することだけを考える!


「……ふぅー」


 まだだ、まだ距離がある。もう少し、もう少し……。

 今だ!


「『地殻噴出剣』!!」


【レベルアップ】

【レベルが21から297に上昇しました】


 レベルの上がり幅と、気配の激減率からして、半分くらいは飲み込めたか。


『ゾワッ!』


 そうするとまた圧力が強くなったのを感じた。どうやらまた何かしらの虎の尾を踏んでしまったらしい。ステータスはまた上がったのかもしれないが、関係ない。レベルはさっさとスキルに変えてと。

 ここからは俺も本気で行く!


「ハーフブースト! 『威圧』『強圧』!!」


 強化された肉体から放たれる圧力を前に、ジェットパックやジェットブーツで突っ込んできていた連中が身を竦ませ、体勢を崩す。その隙に前方にいる約20体強の集団に攻撃を仕掛ける。


「『閃撃・一刀破断Ⅳ』!!」


『斬ッ!!』


【レベルアップ】

【レベルが97から256に上昇しました】


「次!」


 スキル化を済ませながら『魔導の御手』と武器交換を行い、片手にグラム、もう片方に偽・聖剣を手に持ち反転。立て直しつつあった集団に突貫した。


「『神速・殲滅剣Ⅳ』!!!」


『斬ッ!!!』


【レベルアップ】

【レベルが56から264に上昇しました】


『ガチャン!』

『ガチャン!』


 今のでまた30体ほど。これで全体の9割は黙らせられたかな。残った連中が攻撃を仕掛けてくるが、すべて無視する。

 流石に高威力『武技スキル』の連続使用は、身体に堪えたな。全身が軋んでいるのを感じる。だから今は『金剛外装』と『超防壁』で耐え凌ぎ、身体が動かせるようになるまでこのまま残心を続けよう。


「ふぅー……」


 『閃撃・灰塵』、『地殻噴出剣』、『閃撃・一刀破断Ⅳ』、『神速・殲滅剣Ⅳ』という高威力な『武技スキル』の連続使用。普通にやろうとすればクールタイムの関係で不可能だが、ちょっと前のガチャで得た『連殺剣Ⅱ』のおかげでなんとか危機を脱することはできたな。といっても、このスキルによるクールタイム無視は2つまで。最大で3つの『武技スキル』までしか連続使用はできない。

 だけど、『閃撃・灰塵』による最初の不意打ちからすぐに動かず、念の為に待つことを選択した事でこんな荒業が実行できた。あの時弱い技を先に放ち、短時間とはいえ待機を選択した事で、連中がキレて包囲を狭めてくる間に、クールタイムのリセットを図ることができたのだ。

 ちなみにクールタイムは技によってかなり違いがある。負担の少ない技はクールタイムも数秒だが、重い技であったりⅡやⅢなどの高威力版になればなるほどその時間は長くなるようだ。


「……よし。『金剛外装』」


 じっくり十数秒残心し、剥がれ掛けた外装をかけ直す。これでもう安心だ。

 改めて周囲の連中の数を数えなおしてみると……。


「ふむ、たったの4体か。減ったなー」


 さっきの『連殺剣』のせいで、クールタイムは3つ分加算されたからな。クールタイムが明けるまであと数分くらいは何もできんが……。別に普通に倒しちゃってもいいんだよな。

 いやでも、それで200行かなかったら面倒だし、適当に攻撃を捌いて最後にまとめて倒すか。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「ほいっと」


【レベルアップ】

【レベルが64から211に上昇しました】


「よーし、おわりーっ!」


 全てのレアⅡを片付けた俺は、その場で大の字に寝転がった。流石に疲れた。今日はもう終わりでいいかなと思う。


『マスター!』

『マスター様!』


 硬い地面についてた俺の頭が優しく持ち上げられ、柔らかくて良い匂いのするものが差し込まれた。そして手際よく俺の装備は取り外されていき、インナー姿となった俺の上半身を愛情たっぷりの手つきでマッサージされていく。

 ……ああ、気が安らぐ。このまま寝入ってしまいそうだ。


『お疲れ様マスター』

「ああ……今日は疲れた」

『あ、マスター様。寝落ちされる前にあちらをご覧ください』

「……んー?」


 キュビラが指し示す方向を見てみれば、そこには無数に浮かぶ煙の集団があった。宝箱への変質は同時討伐が必要なんだろうけど、それは全ての討伐が完了するまで待ってくれるスタンスなのか、それとも討伐するたびに有効時間が伸びていたのか……。まあなんにせよ、これで1個から3個の端数が複数発生するなんて事にはならなさそうだな。

 そう思って待っていると煙に変化が起き、中身が落ちてきた。


『ザアアアアアアア!!』

『ゴトゴトゴトゴトゴトッ!!』


「うわ……」


 137体のレアと、137体のレアⅡのアイテムや素材が土砂降りのように降り注ぎ、おまけで34個の『アダマンタイトの宝箱』。そして単独の宝箱として『金の宝箱』が排出されたようだ。

 まあ、一瞬でアイテムの山に呑まれたから、正確な宝箱の数は数え切れなかったけど、多分あってると思う。……多分ね?


『マスター』

「ん?」

『後で怒られちゃうかしら?』

「やり過ぎだって? ……まあ、その時は甘んじて怒られるよ。俺としては反省はしてるけど、良い経験になったから後悔はしてないからな」

『では、その時は堂々としていましょうっ』

「だな。……んじゃ、片付けたらアズのマップ機能でワープしようか。そこで遅めの飯にして……今日はもうゆっくりしよう」


 はぁ、こんなに腹ぺこなのは久しぶりだ。

 けど食べすぎると、また彼女達がそれに合わせて作りすぎちゃうかもだから、程々にしないとな……。

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