ガチャ912回目:オモチャを求めて
「いやぁ、堪能したなぁ」
俺は満足気に呟いた。
あの後、俺たち全員でジェットブーツを1回以上試し、レアモンスター専用の部屋でひたすら遊び倒していたのだ。
『ゴゴー』
『ポッポポ!』
『プルーン』
自分達の身体に合うよう調整された装備なんて中々お目にかかれないからか、エンキ達も楽しめたようだ。うちの子達は皆譲り合い精神があるから取り合いにはならないが、それでも1人分しか無いのは面倒だ。人数分とまではいかなくても、後何個かは確保しておく必要がある。
あと、この装備は他よりも機械としての側面が強い。いくら品格が高いと言っても、他の防具よりもメンテナンスの重要性は高いはずだから予備はしっかり欲しいよなー。……うん、やっぱ人数分は欲しいわ。
「よし、アズ。今までの通り道全てにレアは湧いているか?」
『ええ。いーっぱいいるわ♪』
「んじゃ、全部更地にする勢いでやりますかね」
『マスター様、レアⅡは何体まで同時に湧くと思われますか?』
「ん? んー、そうだな……。制限が設けられている可能性もあるか。そうなると、さっきの10体が最大数として考えれば丁度良かったりするか」
でもそれはそれとして、一気に湧いてくれたら面白くもあるよなぁ。数十体の聖騎士に囲まれながら、一気に殲滅をする……。これほど気持ち良い事もそうはあるまい。
「あー、考えてたら気になって仕方がない。 早速狩りに行くぞ!」
『はーい♪』
『はいっ♡』
◇◇◇◇◇◇◇◇
「ふー、ようやく戻って来れたな」
この最上階から出発して、かれこれ2時間ほど経過していた。マップ埋めをしながら一旦最下層にある次の階層へと繋がる広間まで降りていき、そこからは各部屋のレアモンスターを全て殲滅。ついでにマップ埋めの際に殲滅しておいた部屋に再出現したレアも倒していき、最終的に討伐したレアの数は137体にまで増加。レベルも188にまで上昇していた。
当然、俺の周りを飛ぶ煙の数も同数の137個ある。……いや、あるはずなんだが、いかんせんこの煙は透明ではないため、ここまで密集されると周りが見えないのが難点だった。
というか、その数が増せば増すほど周囲の煙による支配率は格段に増加していき、数が50を超えた段階で戦いの相手すら近距離では見えなくなった。振り切るためにダッシュをして煙から抜け出す事で、ほんの一瞬見えるが、すぐに視界を埋め尽くされてしまった。そして注意していないとダッシュした先が壁だったりする事も多々あり、結局煙はもう目隠しデバフと割り切り、気配を読む事でなんとかする方向に切り替えた。
更に数が80を超える頃には手元すら見えなくなり、結果マップを呼び出しても何も見えなくなってしまったのは笑いが出た。幸い、煙が追従するのは俺だけであり、マップの見えるアズがちょっと離れた位置から誘導をしてくれたので、なんとか道に迷うことなく戻ってこれたのだが。
「何事も、やりすぎは良くないよな」
『ふふ、そういうことですね』
『マスター、遠目から見たら煙の塊が動いているように見えて面白いわよ♪』
「映像には残らないし、現場でも『運』の低い奴からは見えないから、周りから見れば俺の動きはさぞ滑稽に映るんだろうな」
にしても、ちと腹が減ったな。飯にしたいところだがこの状態で拠点を取り出しても、俺だけじゃなく全員が何も見えない状態で食事を摂る事になりそうだし、それはちょっとな……。
「これが終わったら、第六層の最下層までマップでワープして、そこで飯にしようか」
流石にこの戦いが終わった後、降りていくのは面倒だし、感知範囲は広くないとはいえ、油断して絡まれて煙に変化されたらもっと面倒だ。これくらいの横着は許されるだろう。
『はーい♪』
『マスター様の勇姿、しっかりと残しておきますね♡』
「ああ。今は見えないだろうけど、よろしく」
そうして見えない中をまっすぐに進むと、周囲に漂っていた煙が一斉に動き始める。100を超える煙が部屋の中央で整列を始めた。1列につき12個の煙が並び、それが11列と余りで5個。あんなに数がいてもしっかり並びはするんだな。
そしてその数の煙が一斉に膨れ上がり、中から聖騎士が生まれ落ちた。
「うお……!」
すげえ数のレアⅡの群れだ。こうなる可能性は確かに考えてはいたが、実際に目にするとその圧迫感は半端じゃないな。
『これは……。このダンジョンのコアを、だいぶ消耗させそうな数ですね……』
『そうねえ。このまま摩耗させたらどうなっちゃうのかしら?』
『こんなことができるのはマスター様くらいですけど、自分のダンジョンをこんな風に造らなくてよかったです』
『ほんとよねー。全部100体型にしておいて良かったわ』
なんか、気になる会話をしてるな。この数のレアを召喚することは、ダンジョンに負担をかける行為なのか。まあでも、彼女達の反応を見る限り今以上の負荷を掛け続ければという話のようだし、これくらいじゃ大きな影響はない感じかもだけど。
『ガシャン』
そう思っていると、最前列の左端の聖騎士が前に出た。流石に今回ばかりは、奴らの騎士道に付き合うつもりはない。
「『金剛外装』、『超防壁』、『魔導の御手』、『天罰の剣』!」
前に出ていない奴を攻撃すれば、恐らく全部襲ってくるだろう。そうなる前に、こちらも最低限の準備は整えておく。
今回もメイン武器は巨神の剣だ。なので御手3本には、前回同様グラム、グングニル、レリック・ウルスラグナを持たせる。さーて、とりあえず縦一列くらいは初撃で吹き飛ばさせてもらおうか!
「『閃撃――』」
巨神の剣を背負う形で構える。
今回はブースト無しで行ってみようと思う。『武技スキル』を扱う上で、軽めの技って結構大事なんだよな。あまりに軽すぎると片手剣のグラムじゃ心許ないが、両手剣の巨神の剣なら、十分な威力が出せるはずだ。
「『――灰燼』!!」
飛翔する燃える斬撃が直線状にいる聖騎士を貫き、そのまま最後列の存在までを焼き尽くした。余ってた5体の内1体もやれたみたいだから、今ので12体持って行ったわけだな。
【レベルアップ】
【レベルが188から221に上昇しました】
よし、早速スキルに変えてっと。……ん?
『ガシャン!』
『ガシャン!』
『ガシャン!』
聖騎士達が臨戦態勢に移った音だろうが、何かがおかしい。妙な圧力を感じる。
まるで、怒りに打ち震えているかのような……。
*****
名前:戦術兵器ver2.0 Type聖騎士(暴走)
レベル:180
腕力:2820(+940)
器用:2145(+715)
頑丈:3000(+1000)
俊敏:1200(+400)
魔力:750(+250)
知力:1800(+600)
運:なし
【Pスキル】身体超強化Lv2、体術LvMAX、剣聖Lv2、神盾術Lv2、姿勢制御LvMAX
【PBスキル】破壊の叡智Ⅲ
【Mスキル】浮遊術LvMAX
★【Eスキル】絶対感知Ⅲ、慣性制御Ⅲ
装備:偽・聖剣、エネルギーグランドシールド、多機能戦術兵装、クロックアップ回路、ジェットパック、ジェットブーツ
ドロップ:聖騎士の思考回路
魔石:極大
*****
うっわ、マジか。機械人形のクセに、バチ切れしてるのか? 俺が騎士道に反する行為をしたから?
しかも、レベルはそのままのくせに俺がノーダメージで済む『腕力』3000に迫ってきやがった。聖剣の威力は身をもって知ってるし、この集団相手で被弾したら切り刻まれかねんな。そんな存在が、まだ125体も……!?
これは、ちょーっと……やばいかもな。
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