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ガチャ909回目:立体迷路を越えて

「っせい!」


『ドゴッ!』


 雑魚よりもちょっと強めに攻撃すれば、振動剣も敵の頭部も粉々に粉砕できた。本当に想像通り。第一層のレアⅡにジェットブーツを履かせた程度の実力しかなくて、弱かった。


【レベルアップ】

【レベルが102から154に上昇しました】


「ま、所詮はレアってことだな」

『マスターの練習相手にもならないなんて、つまらないやつね』

『ふふ、でも登場時のインパクトはマスター様も楽しめたようですし、良いのではないですか?』

『ま、そうねー。ならギリギリ合格点上げても良いかしら』

「判定が厳しいなぁ」


 さて、煙は……ん?

 大騎士の身体から煙が溢れ、いつものように塊になったが……挙動が変だな。大騎士の死体があった場所で止まるでも、どこかに飛んで行くでもなく、ゆらりとこっちに近付いて来たぞ。


「……ああ、そういう」


 俺が下がれば一緒に動き、俺がジャンプすれば上昇してくる。そして『空間魔法』で足場を作って空中に留まれば煙も同じように停止した。これは……どこかで見たな。『696ダンジョン』の第三層だったか。

 モル君の同胞達を根絶やしにしていた時も、煙はこんな挙動だった気がする。レアの条件を複数回満たさないと次が出ないとか、大体そんな感じの仕様だな。


「アズ、キュビラ。この煙は見えているか?」

『ええ、バッチリよ』

『マスター様のお側であれば、『運』が共有されておりますから』

「やっぱそういうもん?」

『はい。離れると減衰して、一定距離よりも更に離れると、加護が無くなってしまうようですね』


 昨日のあの騒ぎも、運に見放された結果によるものか。まあでも『運』があってもあの連中の性根は変わらなかっただろうし、別人に入れ替わるなんて事もなかっただろうけど。

 しかしまあ、先の一件を思えば、小狐達を社会復帰させる目的で営業をさせても、俺から離れた状態では豪運も何もなくその手の邪魔は入りそうだよなぁ。やっぱ帰ったら記者会見でぶちまけるしかなさそうだ。

 この手の問題は社会問題にもなり得るレベルで厄介なものだ。根絶しようとすると不可能に近いが、今回に限って言えばその根っこにあるのは未知への恐怖と、スタンピードによって命を奪われた人達の遺恨だろう。決して、種族の違いによる差別などではない。

 その手の差別は大昔は知らんが今の日本では縁遠いものだしな。細かいことを気にしない人が多いから、馴染みない価値観だし、そこは心配するだけ無駄かな。


『マスター、あの時のこと考えてる?』

『マスター様、私なら大丈夫ですからっ』

「いや、奴らもそうだがそれと同じ思考回路の人間にはきっちりと罰は与える。思い上がる気はないが、この国や世界の安全は俺が握ってるんだし、俺が嫌がる思想は表立っては出せない風潮にしておかないとな」

『何か考えがあるのね。楽しみだわ♪』

『マスター様……♡』

「さて、ここまで雑談してても煙は俺にまとわりついて来ている」


 『空間魔法』を解除して地面に降り立つが、やはり煙は俺に追従して来た。


「だから今まで通りマップを埋めて、他のレアモンスターを探して討伐しよう。それから念の為、アズ」

『んー?』

「100体討伐はこの状態だと無理だから、ここから先の雑魚は任せて良いか?」

『任せて。殲滅してあげる♪』


 んじゃ、雑魚はアズに任せて張り切るとしますかね。何体倒せば湧くかな~。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 雑魚はアズに任せる事となった事で、攻略速度は格段に上昇した。なんせ、部屋に入った瞬間に黒い太陽が発動し、雑魚は起動前の状態で無抵抗のまま吸い込まれて行き、時折味方が感知範囲に引っかかって起動する事はあれどその時にはもう手遅れ。空中に居てはジェットブーツも機能する事はなく、連中は太陽の中で焼き尽くされアイテムだけが吐き出されるのだった。

 そしてレアモンスターはというと、大体4部屋につき1体の割合で出現しているようで、偏って連続出現する事もあればしばらく遭遇しない事もあった。まあ、こいつらの出現頻度に関しては俺が来るよりも前に確定していた事実だから、俺有利に働かないのは仕方のない事だろう。


『ねえマスター、見てよこれ~』

「んー?」


 アズに見せられたのは俺達が進んできたマップの情報だった。どうやら最初に討伐した雑魚連中が復活しているようなのだが、レアの反応がそこらじゅうにあったのだ。といっても、1部屋につき3体までが限度らしく、部屋全てがレアで埋め尽くされていたりはしないようだったが。


『もうこっちに戻ってレアを叩いた方がはやくない?』

「まあ、5体倒しても5つ分の煙がウロウロしてるだけだしな……。まあでも、何があるか分からないし、このままマップ埋めを優先しよう。それで何もなければ、湧き直した連中を狙えば良いさ」

『はーい♪』

『マスター様の仰せのままに♡』


 そして更にマップを埋め続け、討伐したレアの数が10体になったころ、それはあった。


「この部屋だけ造りが違うな」

『この大部屋、どことも繋がっていないみたいね?』

『次の層への入口が隠されている……というわけでもないみたいですね』


 この階層はやはりというか立体的な迷路になっているらしく、映し出されたマップには縦長の構造が表示されていた。いま俺達がいるのは、マップの最上層部分。第五層から続いていた道は丁度中央部分にあったため、恐らく最下層が最終層である第七層に続いていると見て良いだろう。

 となれば……。


「ここに入れば、レアが湧いてくれるんだろう。アズ、道中のレアは全部大騎士で間違いないか?」

『ええ。全ての赤丸が反応してくれてるわ』

「じゃ、レアⅡはここで纏めて湧かせられるのか。レアがあれだったから大して期待はできないんだけど、何が出てくるやら」


 個別で出てくれるんなら、ここで一気に進化セットを荒稼ぎできるんだが……。そう上手くはいかないかな?

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― 新着の感想 ―
確かに世界の安全とかは握ってるけど、傲慢になったなあ…
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