ガチャ908回目:壁の中の新手
『ガイン!』
『ガガガッ!』
「くっ!」
連携しない攻撃というのは、得てして隙を生み攻撃のチャンスを生み出すと思う物だが、同じ練度の奴らがする事で、ここまで軌道が無茶苦茶になるとはな。弾かれた攻撃がどういう軌道を辿るのか多少想定はしていたものの、ジェットブーツの慣性のせいで思わぬ方向に逸れることがしばしば……。
結局、安全に戦うなら初手から大きく避けることが無難であることに気付いたのだった。2体ならまだしも、それが6体にもなると本当に厄介だな。
「だがこうなってくると、これでは修練には向かんな」
練度は高いのに正確性に欠ける攻撃。それを簡単に回避できるようになるのは望ましいが、あまりやりすぎても今度は正確無比な攻撃に対して影響が出てしまいかねない。これは、そういう攻撃もあるんだな程度の認識で十分か。
「3倍マジックミサイル6連」
『ドドドドドド!』
【レベルアップ】
【レベルが90から93に上昇しました】
やっぱ、一気に倒すのは気持ちが良いな。格闘武器ではなし得ない手段だ。……そういう多対一を制する格闘系の『武技スキル』とかも、探せばあるのかな?
「よし、そんじゃ次の部屋に行こうか」
『はーい♪』
『はいっ』
◇◇◇◇◇◇◇◇
「おらっ!」
左手で振動剣を砕き、右手で相手の頭部をぶち壊す。武器持ちの相手を一撃で倒す際の練習としては、この階層のモンスターはちょうど良い事に気がついた。なんせ、戦闘中大きく動かなければ他のモンスターが割り込んでくることはないのだ。なので準備ができ次第奴らの知覚内に移動すれば、後は勝手に突っ込んでくるのだ。
まあ、わんこ蕎麦みたいに待っていれば次が来る訳じゃなく、移動する必要はあるけど、このくらいは許容できるな。
ちなみにコイツらの感知範囲は、『解析の魔眼』で詳細に視る事ができた。大体縦幅横幅ともに1メートルに、長さが10メートルほど。案外、狭い上に短いんだよな。
なのでナイトを倒したら隣のナイトの視界に入り、倒したらまた隣のナイトに。その繰り返しである。慣れたら早い物で、一部屋10体前後が2分程度で終わってしまうくらいだ。そんな調子で何部屋か攻略し、順調にマップを埋めていると、ソレはいた。
「……ん?」
今までと同様、各壁にできたへこみの内部に存在するナイトの数を数えた時に、妙な出で立ちのナイトがいたが、あまりに自然すぎて一度スルーしてしまった。そしてその疑問を解消するため視線を戻せば、明らかに壁のへこみにそぐわないサイズのナイトがいた。
通常のナイトは壁の中で直立不動の姿で収まっているが、そいつは中腰のような格好で待機していた。にもかかわらず頭の位置は同じなのだ。二度見するのもやむなしだな。
「レアモンスター……だよな?」
だが、そいつのいるへこみは他のナイトと同様のつくりをしていて特別感は無いし、見た目の装飾も通常のナイトと遜色はない。ただ、そのサイズがおかしくて、狭いところに無理やり詰め込まれたような感じだ。
*****
名前:戦術兵器ver1.0 Type大騎士
レベル:145
腕力:1520
器用:1230
頑丈:1660
俊敏:550
魔力:0
知力:1200
運:なし
【Pスキル】身体強化Lv8、体術Lv8、剣術Lv8、盾術Lv8、姿勢制御Lv8
【PBスキル】破壊の叡智Ⅱ
★【Eスキル】絶対感知Ⅱ、慣性制御Ⅱ
装備:真・高周波ブレード、エネルギーラウンドシールド、多機能戦術兵装、クロックアップ回路、ジェットブーツ
ドロップ:守衛の思考回路
魔石:特大
*****
この階層における戦闘で、雑魚からレアモンスターの煙が出た覚えもないし、この部屋自体来るのも初めてだ。そしてこの階層は、しばらく冒険者が来ていないはずでもある。
となると、こいつは時間経過で自然発生するタイプのレアモンスターなのか? 『運』関係なしに出現するのであれば、こいつは冒険者にとって当たりとなるか、ハズレとなるかだが……。それなりに強敵ではあるが、見た感じ攻撃パターンは今までの雑魚と大差は無さそうなんだよな。感知範囲は、図体がデカい分ちょっと伸びてはいるけど、部屋の真ん中まで届いていないくらいには短い。
「とりあえず動き回られて他の雑魚を起こされちゃ面倒だし、雑魚から先に始末するか」
『ゴーゴゴ?』
『プルプル!』
「お、雑魚やりたいか? んじゃ任せる」
『ゴー!』
『プルプル!』
エンキとイリスがそれぞれ1対1で大騎士の両隣のナイトに勝負を挑み始めた。そうして眺めていると、討伐してはアイテムを抱えて戻ってきて、アズ達にそれを預けると、えっほえっほと次のナイトへと挑んでいく。アイテムは全部終わってからでも良いのに、律儀だなぁ。
そうして数分も経つ頃には、部屋に残っているモンスターは大騎士一体となっていた。この間も特に動く事はなかったし、本当にあの感知範囲にさえ入らなければ襲ってこないんだな。
「『絶対感知』はたしかに範囲にさえ入れば絶対に見つけてくるんだろうけど、実際の性能としてはちょっと名前負けしてる気がするな」
『隠密無効は厄介だけど、有効射程が狭すぎるわよね』
『これが機械の限界ということなのでしょうか』
「まあⅡでこんなんだし、Ⅴに伸びたとしても射程は知れていそうではあるよな」
さて、正直第一層のレアⅡにジェットブーツが付与された程度の強さしか持っていない気もするけど、挑戦してみるとしますかね。
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