ガチャ904回目:温情
「「「「それではお気を付けて!」」」」
「そちらこそー」
冒険者チームと別れた後、俺は時計を見た。11時か~……。
『マスター、どうするー?』
「んー、ちょっと早いけど飯にしよっか。ここからは長くなりそうだ」
『はーい♪』
『分かりましたっ』
ここからはレアとレアⅡが入り乱れて戦う事になりそうだし、食えるうちに食っておかないとな。
◇◇◇◇◇◇◇◇
いつもなら昼食後に少し休みを挟むから、大体1時間くらいは経過しちゃうもんだけど、今回はレアがいるからなー。30分くらいで済ませたが、それでも最後の1体以外は消えてしまっていたらしい。まあこればかりは仕方がない。寄り道したり休憩したりと、探索以外のことの時間を割いてたからな。
ただ、レアⅡらしき影は未だ健在みたいだ。アズのマップにはしっかり映っているらしく、この階層の奥の方で蠢いているらしい。
『それでマスター、どっちから狩る? オススメは複数合体のほうよ♪』
「んー? いや、レベル的に単独レアⅡの方が良いかな。そっちに案内してくれ」
『……はーい♪』
アズにも何か言いたい事があったみたいだが、ぐっと飲み込んだようだ。今聞いてもはぐらかされる気がするし、今日の夜……アズが素直になった辺りで聞いておくか。小さな歪みでも、残しておくと後でぶり返すと面倒だからな。
そうして雑魚を倒しつつ、新たなレアを2体ほど量産しながら進んでいくと、目的のモンスターがいるところへとやって来ていた。
「おー、想像よりデカいな」
食らいつき攻撃をするその姿は、壁から壁へ移動するだけで向こうの景色を全て塞ぎかねないくらいの巨体だった。通常のレアでさえ全長10メートルはくだらない長さをしてたけど、コイツの場合はもっとか。胴体の太さも二周りくらいデカいし、迫力も通常のレアの倍以上と評するべきか。
詳細はどれどれ……。
*****
名前:戦略兵器ver2.0 Typeデスワーム
レベル:220
腕力:2500
器用:2500
頑丈:2500
俊敏:1800
魔力:0
知力:200
運:なし
【Aスキル】隠形Ⅳ、気配断絶Ⅳ、気配感知Ⅲ、反響定位Ⅲ、ウェポンブレイクⅡ、アーマーブレイクⅡ、悪食LvMAX
★【Eスキル】金属同化Ⅱ、一体化Ⅱ、自由自在Ⅱ、溶解液Ⅱ、丸呑みⅡ、高速消化Ⅱ、悪食者の魂Ⅱ
装備:なし
ドロップ:悪食蚯蚓の配線
魔煌石:中
*****
レアⅡはレベルの割にスキルレベルがちょっと低いが……まあそこは良いか。
目の前にいたのはレアⅡだけではなく、通常のレアモンスターと人間もいた。アレが例の連中だろう。キュビラが何も言わずに背後に隠れちゃったし。
「阿鼻叫喚だなぁ……」
その様子は正に満身創痍そのもので、傷だらけだし装備もボロボロ。盾役や後衛関係なしにまともな状態の者はおらず、悲惨なくらいズタボロだった。このボロボロ加減は、『ウェポンブレイク』と『アーマーブレイク』の効果かな。
それよりも、アズがさっき別の方をオススメした理由はこれだったか~……。これ、どうみてもあと少し到着が遅れてたら全滅してたろ。
「おーい、そこの連中~!」
レアの喰らいつき攻撃は、騒音を立てながら壁の中を移動する為、付近にいると振動と爆音で三半規管がやられかねないんだよな。それがレアⅡになったことで更に煩くなっていたので、それなりの大声で声をかけてみた。
それが功を奏したのか、連中は俺の存在に気付いたようだ。それは、人間だけでなく、『反響定位』を持つレアモンスターもだ。
『ドドドドド!!』
新たな得物の発見に、近くにいた通常レアが攻撃対象を俺へと切り替えた。助けを求められる前に手を出すつもりはなかったが、俺を攻撃してくるというのなら話は別だ。
「『一刀両断』」
『斬ッ!』
飛び掛かって来た敵を両断し、煙へと変える。煙はやっぱりどこか遠くへと飛んで行った。
これで、煩さが2/3くらいにはなったかな?
『ドドドドドドド!!』
いややっぱまだ煩えわ。レアⅡもこっちをターゲッティングしたみたいだな。
「エンキ」
『ゴ!!』
エンキが通路内に壁を生成し、飛び出して来たレアⅡを押さえつける。更に壁の上から殴りかかることでレアⅡの巨体を壁の中へと弾き返した。
うーん、大迫力。あ、ターゲットが俺に向いたから、連中の一部が後ずさりをした。逃げるのは構わんが、死ぬぞ?
「言っとくが、その奥にもレアモンスターの反応はあるからな。離れるのは勝手だが、死んでも知らんぞ」
「「!?」」
「それで、助けはいるか?」
「た、助けて!」
「助けてくれ!」
「助けてください!」
助けを求めたのは3人。他2人はさっき後ずさりしてた奴らで、苦虫を噛み潰したような顔のままだ。やっぱ俺に助けられるのは癪なのかね? まあ、俺は人類の敵を排さずに配下にしたモンスターの主人だもんな?
その考えはまあ分からんでもないが、己の命と天秤にかけるほどなのかね?
「だそうだが、キュビラ。こいつら、助けたほうが良いか?」
「「「「「!?」」」」」
そこでようやく連中は、キュビラの存在に気付いた。キュビラも俺の後ろに隠れてはいたが、溢れ出る尻尾の存在でバレバレだと思うんだがな……。まあ、連中もそれだけ必死ということか。
『マスター様の指示に従います……』
「いや、コイツらは1度俺の提案を蹴った。その上で図々しくも助けを求めてる。だから俺としてはどうでもよくて、こいつらに罵詈雑言を並べ立てられたキュビラがどう思うかを聞いてるんだ。助けるか助けないかは、キュビラが決めてくれ」
キュビラが助けないと決めても、それはそれで構わないと思ってる。なんせ、俺がここから勝手にレアⅡを狩るだけだしな。
だが、そこにキュビラの気持ちがついて来てるかどうかで、この後の展開が大きく変わる事だろうし、ここはキュビラに答えを委ねたい。
『私は、彼らに心無いことを言われました』
「そうだな」
『……突如として世界に現れ、大混乱を巻き起こしたダンジョンが、実は私たちが元居た世界からやって来たものだと知って、私達を恨むのも理解できます。ダンジョンはあまりにも多くの人々の命と、平穏を奪いました。人間の皆さんにとって、私は言葉を解するだけのモンスターなのかもしれません。ですが、歩み寄らなければ理解は得られないと私は思います』
「ふむ」
『だから私は、どんなにひどい言葉を投げかけられても、彼らを見捨てるのはよくないと思うんです。マスター様、どうか彼らを助けてあげてください』
「……ああ、わかったよ」
キュビラを抱きしめていると、アズがこっそりとサムズアップしている気配を感じ取った。うん、今の光景は俺達が到着した瞬間からばっちり録画できたみたいだな。これとレアⅡの討伐映像を交えつつ、記者会見で流してやるかな~。
これで彼ら異界の住民に対する偏見が、少しでも散ってくれればいいんだが……。
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