ガチャ903回目:合流
『マスター、ここからどうするの?』
「まずはエンキ達を迎えに行こう。今日はこの階層を、あっちこっちに走り回る事になりそうだしな」
『畏まりましたっ♡』
『レアのドロップはレアⅡに集約されるから、ロストする心配はしなくて良さそうね』
「観客に倒された場合はそうでもないが、そんときゃそん時だな。人格はともあれ、このクラスのレアⅡを倒せる人材が俺たち以外にもいるってのは、普通にグッドニュースではあるし」
そういうと、キュビラがいつも以上にくっついてくる。
『マスター様……』
「何も言わなくていい。そいつらの処置は俺に任せてくれ」
『はい……』
「んじゃアズ、入口まで案内頼むぞー」
『オッケー。道中レアが1体遭遇しそうではあるけどどうする?』
「当然倒す」
さっきのとは別にレアⅡが発生するなら、それはそれで見ておきたいしな。
◇◇◇◇◇◇◇◇
入口に戻る途中、俺は宣言通りレアモンスター1体をしばき倒した。その結果煙は明後日の方角へと飛んでいき、アズ曰くしっかりレアⅡらしき反応へと変わったそうだ。実際に見た目や強さが異なるかは遭遇してみないと分からないから、楽しみではあるよな。
ちなみに、この階層は雑魚の数が本当に多いので、ここにくるまでの過程でまた1体追加でレアが出現していた。その煙もまたどこかその辺に飛んでいったが、本当にこの階層はちょっと動くだけでレアが出てくるよなー。
『ゴゴー』
『ポー!』
「おう、皆お疲れ」
入口に到着すると、うちの子達が出迎えてくれた。皆珍しく、我先にと褒めて褒めてと群がって来たので、順番に1人ずつ頑張りを褒めてあげた。
そして作戦を聞いていた彼らはキュビラも心配だったようで、俺に褒めてもらった子達は続いてキュビラの元へと駆け寄った。
『キュイー』
『♪♪』
『プルーン』
『……はい、ありがとうございます。私は大丈夫ですから』
うちの子達は優しいなぁ。おかげでキュビラもだいぶ元気になったみたいだな。そう思っていると、そんな光景を眺めていた外野から声がかけられた。
「あ、あのー……」
「え? ……ああ」
そういやいたっけ。完全に忘れてた。
「えーっと、皆さんは呼びかけに応じてくださった方々ですよね。この度はご協力ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げると、彼らは皆慌て始めた。なんでも、上のランクの人に頭を下げられるのは居た堪れないらしい。聞けば、ここに来る冒険者は皆が大体AからCランクで、彼らは上澄みのAやBらしい。また、A+ほどの人材はこのダンジョンにはあまり来ないそうなのだ。
というのもこのダンジョン、今まで見て来た通りにスキルの旨みがほとんどなく、得られるのは機械の部品ばかり。一応未知の文明の遺産ではあるから市場価値が高く、それなりに高値で取引はされているみたいだけど、財布は潤っても自身の強化には繋がりにくい。そのため、そんなに人気はないが、混雑する事もないため彼らはここを選んでるのだそうだ。
だがそれはつい先日までのことであり、俺が昨日第三層で全域フィーバータイムを巻き起こしたから、人気に火がつきそうではあると掲示板では書かれていたが……この後の階層のネタバレになりそうな気がしたので、見るのはそこでやめたんだよな。
「とにかく、説明したようにこの階層はレアモンスターの湧き方が特殊みたいで、俺にも制御できません。本来なら湧かせたレアモンスターは責任もって俺が処理するべきなんでしょうけど、出口でレアを倒したら入口でレアⅡが湧く可能性もあるので、手に負えないんですよね。なので皆さんには申し訳ないですが……」
「構いません。私達も貰った分が多すぎてこれ以上の続投が不可能だと話し合いしましたから」
「だからオレたちはここで撤退するよ。そのついでに、第四層より上にいる冒険者には、できるだけ声を掛けるから安心してくれ」
「ああ、それと掲示板にも注意喚起を流しておくぜ」
「助かります」
現状、レアモンスターの消失時間は1時間とされている。俺は今まで湧かせたレアには責任持って対処して来たから、その事実をこの目で見たことはなかったけど、サクヤさんも間違いないと言ってるし、レアの強さがどうあれそこは間違いないのだろう。
だが問題はレアⅡだ。こいつも同様に1時間で消えてくれるならいいけど、それ以上なら厄介なんだよなぁ。最悪1日放置してても存在し続けるなら、攻略後に管理者権限で削除するか、直接出向いて討伐するしかないだろう。
「一応レアやレアⅡの気配は覚えたので、もしこの階層から消えているようなら俺が直接掲示板に情報を投下しときますね。ただ、最低でも今日1日はこの階層は訪れないほうがいいかと」
「助かります!」
「流石レアモンハンターさん。レアモンスターの気配が分かるなんて、すげえや……」
マップ機能をそれっぽく言い換えただけなんだが、嘘は言ってないし、ものはいいようである。
「ああそれと……実は1チームだけ呼びかけに応じなかったんですよね。俺のお願いを拒否するのはまあ自己責任だから良いんですけど、うちの子が元モンスターだからって罵倒してきたんですよ」
キュビラを抱き寄せ、頭を撫でた。それだけでここにいる人たちは全てを察してくれたようだ。
「えっ、それって……」
「こんな可愛い子に罵倒……?」
「ここにいないチームでそんな事言いそうなのって……」
「……あいつらだろうな。Bランクに上がれないと嘆いてはいたけど、B以上は裏条件があるからな。そりゃそうだって話だ」
「この子に罪は無いってのに」
「そんな言葉を投げかける時点で、上がれなくて当然よね」
裏条件……。ああ、本人たちの品性がいるとかいうアレか。
確かその条件も、Bに上がれば教えてはくれるけど、下位の冒険者や一般には教えちゃならないってルールがあるとか受付組が言ってたな。まあ、そんな事を簡単に漏らすようなモラルが無い奴は、上に立つべきではないので至極当然のルールではあるが。
あとキュビラに罪があるか無いかでいえば、知らなかったとはいえ無いとも言えない難しいラインではあるよな。でも、侵略目的のダンジョンを作った訳ではないし、スタンピードはキョウシロウさんの頑張りもあって一度も起きていないし、タマモみたいに外部に手を出してたわけではない。なので、俺的には無罪だ。
「そいつらが生きて帰れるかは知らないですけど、一応目の前でやられそうになってたら助けるつもりではいます。寝覚めが悪いですし。ただ、そういうことがあった事については掲示板と協会には先に報告してもらえると助かります」
「「「「わかりました」」」」
よし。これで生きて帰っても針のむしろだろう。ついでに、記者会見の時にダシに使わせてもらうかな。アズもキュビラも、俺の大事な家族で、身内で、嫁であると。
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