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ガチャ902回目:迷宮破壊

 巨大蚯蚓の攻撃を避けつつ、俺はアズに気になっていたことを聞いた。


「なあアズー。キュビラは本当にこっちに来れるのか?」


 エンキ達にはお使いをお願いする際、冒険者達を連れて付近の出入り口に向かうよう指示を出していたが、キュビラにはアズが追加の指示を出していた。誘導の成否に関わらず、レアモンスターを連れて俺のいる場所に戻ってくると言う内容だ。


『ええ。マスターも見たことあるでしょうけど、タマモがやっていたように『妖狐魔法』には自分の分身を取り憑かせる事で、相手の位置を正確に把握するためのスキルがあるの。それにあの子にはこの階層のマップを隅々まで覚えさせたから、自分とマスターの位置関係から、マスターの元に辿り着くまでの道のりが手に取るように分かるはずよ』

「あー、なるほど。合わせ技ってことね。にしてもすごいな……。スキルがというより、それをあんな短時間で覚えて行動に移せるキュビラがだが」

『んふ。なんていったって、あの子はうちの軍団の知将だったんだもの。その肩書きは伊達じゃないわよ♪』


 そういえばそんな称号を持ってたっけ。俺の中では愛らしいモフモフ要員ではあるし、彼女もその立ち位置を望んでいる節があるが。

 そんなことを考えていると、彼女の声が通路に響き渡った。


『マスター様!』


 キュビラがやって来た。その背後には3体のレアモンスターの姿が。最初確認した時は彼女に絡んでいたのは1体も居なかったはずだが、ここにくるまでに遭遇していたか。

 コイツは壁や地面をすり抜けながら攻撃をしてくる厄介な特性はあるが、()()()()()、攻撃地点まで移動してからようやく攻撃を仕掛けてくるため、すべて単発攻撃なのだ。そのため、攻撃ごとにクールタイムが存在し、結構暇な時間が多かったりする。

 だから1体から4体に増えたところで、大した問題にはならなさそうだった。


「キュビラ、おいで。よく頑張ったな」

『マスター様……!』


 キュビラを抱きしめ、彼女をお姫様抱っこしながら攻撃を回避する。それだけで彼女はうっとり顔になり、先ほどまでの悲しげな表情は吹き飛んでいた。まったく、本当に可愛いなこいつは。そんなキュビラにどんな暴言を吐いたのかとっても気になるところだが、それはまた後だ。キュビラがここまでやって来た以上、そろそろ時間か?


「アズー」

『ええ、マスター。先輩達は全員第五層の入口まで戻っているわ。例の連中以外の要救助者も、しっかりそこにいるわね』

「よし。なら早速動くか。アズ、ついてこい!」


 俺は大きく跳躍してその場から離れ、直線通路を突き進む。そしてある程度距離を離したところで振り返り、再び巨神の剣を取り出した。片手はキュビラを支えるために使用中だが、相手はレベル100台のモンスターだ。壁の存在が気になるが、まあ片手で十分だろう。


「キュビラ、しっかり捕まっていろ。アズは俺の背後で屈んでいろ」

『はいっ!』

『はーい♪』

「まずは201レベルをオーブ化してっと……」


 オーブは背後にいるアズに投げ渡して、剣を横に構えた。


「ハーフブースト!」


 力を解放し、剣に『力溜め』の効果を乗せる。そして完璧に力が溜まったことを知覚したところで技の始動へと動いた。


「『戦乱波濤・二式』」


 世界がスローになり、大剣に込められた力が膨れ上がるのを感じた。広く深く伸びた知覚が捉えたのは、前方から迫り来るモンスターの群れと、手に握った破壊の感覚。そして最後に、俺の胸の中でしがみつく彼女の熱量だけだ。


「『迷宮割り』!!」


『斬ッ!!!』


 剣を横に薙ぐと、前方のモンスターだけでなく、左右に伸びるダンジョンの壁すら真っ二つに斬り裂いた。その衝撃は壁の内部に隠れていたレアモンスターの身体だけでなく、両隣の通路に出現していた雑魚モンスターや、近くを通っていた別のレアモンスターまで。それら全てが一撃の元に消え去り、煙となったのだった。


【レベルアップ】

【レベルが1から188に上昇しました】


 おーおー、それなりに上がったな。まあ相手が極大でも155でしかないし、ただのレアモンスターだから複数まとめても上がり幅はそう大きくはないが。やっぱりレアⅡを倒さないと200には届かないか。

 そう思いつつ剣を収納していると、熱い視線が注がれている事に気がついた。


『マスター様♡♡♡』

「おおう……」


 完全に目がハートだった。これは落ちたな。

 ……いや、最初から落ちてたわ。


『マスターすっごいわね! ほら見てよ、この裂け目。壁の向こう側が見えてるわよ!』


 アズもアズで大興奮だった。にしても結構な破壊力だったな。さすが、『五輪の書』から取得した『戦乱波濤』だな。ハーフブーストかつ片手だったから技としては未完のはずなのに、ここまでの威力が出るとは。

 さて、レアの煙はどこへ行くかなっと……。


「おお?」


 2人と戯れていると、4つの煙と離れたところにあった煙が1ヶ所に集まり混じり合った。どうやらここのレアⅡは特殊な部類の奴らしいな。

 さて、どんな奴が出てくるか――。


「あっ」


 一塊になったそれは、壁を貫通して明後日の方向へと飛んで行った。やっぱりこいつもレアと同様、その場では湧かずに遠くで出現するタイプか。一応その可能性を見越して、遭遇してすぐに倒したりせず要救助者が全員撤退するまで維持をしていたんだが……。懸念通りになったな。

 てか、一纏めになったってことは、レアⅡをすっ飛ばしてレアⅢに生ったりするか? 問題があるとすれば、煙が向かっていった先は、悲しみを抱えていたキュビラが走って来た方角と一致するところだが……。まあ、それは因果応報ってことで。

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