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無料ガチャ058回目:エンキのおつかい

 エンキは走った。生みの親であるショウタのお願いに応えるため、記憶した通りの道筋をなぞる。


『シャー!』

『シャー!!』


 背後から追いかけてくるラビリンストラップの群れに反応し、挟み撃ちをする為正面に潜んでいた者達も姿を現した。

 だが、エンキはそいつらの行動を気にも留めず、攻撃もろとも軽く飛び越えスルーを決め込む。無視されたトラップは地面へと潜航し、追いかける群れへと加わった。そんなことを何度も繰り返し、時折やってくる分かれ道を記憶をなぞりながら走り抜けていると、ようやく目的の一団を発見した。

 最初に気付いたのは、チーム内の斥候役。この階層のモンスターは非常に巧妙に姿を隠している為、彼ら斥候役は特にダンジョンを進む際、最大限警戒をしながら慎重に行動していた。その為、背後から現れた集団にも即座に気付けたのだ。


「皆、後ろだ!」

「はあっ!? 何だあれ!?」

「こっちに走って来てるのって、もしかしてゴーレム!?」

「あ、待って待って! あの子エンキちゃんだよ!」

「エンキっていうと、レアモンハンターさんの?」

「そういえば来てるって話だったよな」

「三層で大発見があったんだっけ?」

「間違いないのか?」

「ええ。だって私、彼のお人形を持ってるもの! 間違い無いわ!」

『ゴゴー』


 そんな会話が聞こえてきて、エンキは安堵した。自分を知ってる人達なら、話は早いだろうし、おつかいも問題なく片付く気がしたのだ。


「けど背後のアレって……、ワームの群れじゃねえか!」

「追われてるのか!?」

「助けが必要か? いや、でもあの数は俺達でもヤバいぞ!」

『ゴ』


 認識してもらった以上、これ以上連れていく必要はない。エンキはそう判断し、足を止め振り返った。

 モンスターの集団がこちらを見失わないよう距離を置きすぎず、かつ攻撃もされないギリギリのラインで走っていた為、モンスターとの距離はほとんどなかった。その為追いかけていた先頭集団は、エンキが止まると同時に背後の仲間と連携する為に飛びかかりを行った。


『『『『『シャー!!』』』』』

『ゴ!』


 エンキはそれら飛び掛かりや溶解液を無視し、力を込めてストンピングを行った。振動は床や壁、天井へと伝播し、攻撃の機会を窺っていた後続の連中も全て暴き出した。


『!?』

『ゴゴゴ!!』


 エンキは続けて軸足の方でもストンピングをする。すると、宙に投げ出された全てのモンスターに向かって通路のあちこちから金属製の槍が出現。全てのモンスターを一撃で蹴散らし、アイテムへと変えさせた。


「す、すげえ……」

「これがレアモンハンターさんの仲間か……」

「エンキちゃんすごい……!」

『ゴゴ~! ゴ?』


 エンキは結果に満足し、槍を消し去ると振り返った。そして自分のファンを名乗る女性が尻餅を付いていることに気が付くと、彼はその人の目の前にやって来て、紳士的に手を差し伸べた。


「わ、えっ?」

『ゴ~』

「あ、ありがとう」


 立ち上がった彼女にエンキは満足そうに頷くと、自分の体内から紙を一枚取り出し、彼女に手渡した。

 女性は戸惑いながらそれを受け取り、中を見て驚愕した。


「これは……! 皆、見て!」


 仲間達も興味深くそれを覗き見て、同じ反応を示した。


『冒険中失礼します、レアモンハンターです。本日はこの5階層に挑戦しようと攻略し始めたのですが、どうにもここのレアモンスターは、狙った場所に出現するタイプではない上に、壁の中を自在に動き回るタイプのようなんです。こっちが遭遇するよりも前に他の方々が巻き込まれる可能性が高かった為、皆さんには伝令を送らせてもらいました。レアの強さは推定レベル150前後。レアⅡに至っては200を超える可能性が高いので、皆様には安全のために第五層の入り口か出口まで送らせていただければと思います。ご協力いただいた暁には、彼らが討伐してドロップした雑魚のアイテムは全てお譲りします。また、この協力要請は強制ではありません。自分たちで何とかできるというのであれば無理強いはしませんので、その時は彼らにそうお伝えください』


 その内容を見た彼らは顔を見合わせ、そのままエンキに向かう。続けてその視線は、エンキが倒した後回収され一纏めにされた大量の魔石やドロップアイテムへと辿り着いた。

 それは、少なくとも魔石と素材が100個以上ずつ。更には同数の『隠形』と『気配断絶』のスキルまで。アイテムだけでも数日分、スキルを含めれば数ヶ月分の稼ぎを得られてしまうだろう。例えしばらく狩りができなくても、損失はなくむしろプラスになると。

 冒険者にとって狩場のブッキングはよくある話で、相手とランク差があれば低位のランクが道を譲り、同格であれば話し合いでケリをつける。話し合いの中では時には共闘したり、もしくはドロップアイテムの譲渡や分配なども盛んに行われているが、高ランク者からアイテムの譲渡がされることは非常に珍しい事だった。


「レアモンハンターさんって、聞いていた以上に人格者なんだな」

「一気にランクアップなんてしたら普通調子に乗ってもおかしくないのにね」

「内面でもSランクって訳だな。妬けるぜ」

『ゴ~』


 エンキが照れたように顔を撫でる。その仕草は本当に人間のようで、彼らはエンキの反応に顔を綻ばせた。そして彼らは再び顔を見合わせ、頷き合う。


「エンキちゃん。私達、戻る事にするわ」

「この場所は第五層のちょっと奥の方だが、入り口でも構わないか? こんなにアイテムを貰ってしまったら、荷物が嵩んで攻略は終わらせた方が良さそうだからさ」

『ゴゴ~』


 エンキはサムズアップした。そうして率先して前を行き、アイテムは全て持ってあげる。そうして彼は来た道を戻りながら、第五層の入口を目指した。

 今ならまだ、通って来たルートのモンスターは綺麗さっぱりいなくなっているはずなので、再出現しない内に走り抜けるべきだと判断したのだ。今頃他のルートでも仲間達がこちらと同様にモンスターを倒しているはず。そうなれば、いつどこでレアモンスターが出現してもおかしくないのだ。


『ゴー!』


 それでもエンキは、お使いをこなせたことで、後で褒めてもらえるかなと、期待に胸を膨らませるのだった。

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― 新着の感想 ―
本作品の1番の萌えキャラはエンキ説ある
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