ガチャ898回目:弾幕部屋
レベル180の極大持ちか。レベル1桁ならワンチャン200越えも可能だろうけど、今はレアモンスターを10体以上討伐したせいで、レベルが150にまで上がっちゃったんだよな。このレベルだと『遺産』の消費160にすら届かないし、無印で欲しい『固有』もない。
わざと不要な物を作成して低レベルの自分を用意することも可能だが、それはなんというか俺のポリシーに反するから、やりたくはないんだよな。まあここで上がらなかったとしてもカスミ達の分は確保してあるし、上がらなければその時はその時だ。気楽に行こう。
「そんじゃ、遊ぶとしますかね」
『侵入者発見、侵入者発見。戦闘モードニ移行。タダチニ殲滅ヲ開始シマス』
そう宣言して『戦術兵器』は今まで通りビットを召喚した。
『『『ビビビビッ』』』
*****
名前:ミラービット
レベル:――
腕力:660
器用:880
頑丈:880
俊敏:240
魔力:0
知力:0
運:なし
【Pスキル】空間把握Lv2
★【Eスキル】跳弾計算
装備:乱反射鏡面装甲、高速計算装置
ドロップ:乱反射鏡面装甲
魔石:なし
*****
ほぉ、『空間把握』持ちのモンスターは珍しいな。それにレアⅡの『舞踏』なんて新スキルと、20門のレーザー砲。そしてこの装備……。
読み通りなら楽しいことになりそうだな。
「今日の締めにコイツと遊ぶ。皆は下がっていてくれ」
『はーい♪』
『ご武運を!』
皆が廊下に出て、俺だけが部屋に残った事を認識したのか、奴らは俺を最初の攻撃対象として認めたようだ。『戦術兵器』は身体の至る所から例のレーザー砲を取り出して、俺だけでなくビットや、何もない壁面へと照準を合わせた。
計算した攻撃が来るかと思ったが、まさか無差別なのか? それなら、自分を狙うレーザーを避けた際に、無差別のレーザーに巻き込まれないよう注意していれば良いだけだが……。
『斉射シマス!』
「おお……なにっ!?」
奴から放たれた無差別のレーザー砲は、一部は真っ直ぐに俺を目指し、一部はビット経由で俺を目指して伸びてきた。だが、想定外なことに回避したレーザーだけでなく、明後日の方向に放たれたレーザーもダンジョンの壁や地面に激突しても消滅せず、乱反射したのだ。
奴らの鎧だけじゃなく、まさか謎の壁も同じ機能を持っていたとは。『ver1.0』の方でのビットは、攻撃は回避せずに受け止めたし、ほとんどを攻撃の前に破壊していたから気付きようがなかったな……。反射の法則性がランダムであれば、俺の『運』が勝手に避けてくれそうだけど妙な挙動をしているレーザーは今のところ見受けられない。
こうも乱反射していては目標に当てるのは至難の業だし、ソロだと面積の問題で被弾率がぐっと下がってしまう。これでは脅威足り得ないと思っていたんだが……。
「おっとっ!」
そんな乱反射の中、明らかに俺を狙ったレーザーが複数本多角的に照射され、飛び上がって回避する。
「そういうことか」
どうやら『戦術兵器』とそのビットは、部屋の中を飛び交うレーザーに自ら飛び込み、無理矢理俺の方に反射させているようだった。それも、いずれ俺の方に向かいそうなレーザーは無視しているし、ビットの方は小回りがきくため直接的な反射をしてきている。図体のデカい本体は、1回どこかでレーザーをワンバウンドさせてからの反射を計算に入れているようだ。なかなか曲芸じみた真似をしている。
「それでも無限に続くわけじゃ無さそうだな」
レーザーは壁に当たれば当たるほど威力が減少していってるようで、本体からも新手のレーザーは供給されてない。数分も耐えていれば気にならないレベルにまで消耗しているはずだろう。
そうして回避にも慣れ、あえて弾幕の濃くなりそうな場所にわざと突っ込んだりして遊んでいると、ついに壁に当たったレーザーの一部が消滅を始めた。それからも数は減少していき、数秒もしない内に広間は静寂が包んだ。
「……もしかして、これでネタ切れなんて言わないよな?」
『第二フェーズヘ移行シマス』
『戦術兵器』は砲台の大半を格納し、そこから丸ノコを取り出してくる。どうやら、自分はレーザーに対しては無敵だから、弾幕の中で近接戦をして相手には地獄を見せる作戦プランらしい。実にいやらしい戦法だな。一般的な冒険者が戦う場合は、やっぱり第一フェーズの時になるべくビットを破壊しまくって、ナノマシンを枯渇させるところから始める感じかな。こいつも一応『極大魔石』持ちだし、ダンジョンボスやユニークモンスターが登録できない『バトルアリーナ』の中では、かなりの高難易度ボスとして君臨できそうだな。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「これで終わりだ!」
『斬ッ!』
【レベルアップ】
【レベルが150から197に上昇しました】
「ふぅー。それなりに苦労したな」
今回はビットを完全放置して『戦術兵器』を叩き潰す戦略を取った訳だが、これが良くなかった。まず回復用ナノマシンはビット専用かと思いきや、尽きていなければ自分の治療に使い始めるとは思わなかった。
けど俺も意地になっちゃって、丸ノコを捌きレーザーを回避し、奴の部位を破壊しては修復され、そしてまた攻撃を回避してを繰り返す事でなんとか討伐する事に成功した。あと、今回のこいつはビットを完全破壊してもナノマシンエラーが発生する事はないみたいだった。脳内チップもバージョンアップされてるってことかな。
「それにしてもやっぱりというか、ちょっと足りなかったな」
まあそんな日もあるか。
そう思いつつドロップした少ないスキルとアイテムを回収していると、通路に出ていたはずの仲間の気配が少ない事に気が付いた。
「ん?」
見てみれば、そこにいたのは仁王立ちしたアズと、カメラを構えたキュビラだけで、エンキ達の姿はどこにもなかった。
『お疲れ様でした、マスター様。満足されましたか?』
「んー、まあ。ぼちぼちかな」
『んふふー。やっぱりね!』
アズは満足気な顔をして、指をパチンと鳴らした。
「……?」
何をするのかと疑問に思っていると、突如として通路の左右から煙がやってきた。そして煙は俺の後ろに向かい、アズは満足気に微笑んだ。
『んふふ。マスター、お代わりよ♪』
そして煙は2体の『戦術兵器』を産み落とし、警告してきた。
『『侵入者発見、侵入者発見。戦闘モードニ移行。タダチニ殲滅ヲ開始シマス』』
『『『『『『ビビビビッ』』』』』』
「まったく、やってくれるじゃないか!」
6体のビットが出現し、合計40門のレーザー砲が牙を剝いたのだった。
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