ガチャ877回目:ペットからの昇格
レアⅡに関してはあっさりと倒してしまったのだが、特に続きが出てくる事も無く、ドロップリストにも記載が無かったように鍵の欠片を入手する事もできなかった。俺の直感でもこれ以上の探索は無意味だと判断できたし、マップで答えを見たアズもその判断に間違いはないと念押しをしてくれた。
なので俺達はそのまま第一層の出口付近に拠点を建て休むことにした。
そして翌朝。遅めの朝食を終え、俺はのんびり横になりながら端末を見ていた。
『マスター、何見てるのー?』
「んー? 俺のスレー」
やっぱ、昨日の戦いは色んな人が見てたみたいだな。エンリルを空を飛び回らせたことも、あちこちのビルで警報を鳴らしたことも、鉄骨渡りしたことも、武器破壊したこともだ。
にしても、あの警報音って結構な広範囲にまで丸聞こえだったんだな。その上、探知範囲外にいるモンスターも、音が聞こえる範囲にいたらそっちの方を向いて隙だらけになって、倒しやすくなるって弱点は知らない情報だった。俺はいつも通り好きに行動していただけなんだが、知らないうちに他の冒険者も助けていたのか。
あと、掲示板で話題になるまで気付かなかったんだが、今回のメンバーを決めた際はあんまり深く考えてなかったけど、今のうちのチームって嫁が1人もいなかったんだな。確かに俺が変な事を仕出かしてもアズはニコニコして見守ってるし、キュビラは心配はするけど全肯定してくれるから、止めてくれる人がいないのは事実かもしれない。
『んふ、どうしたのマスター♪』
目が合ったアズが嬉しそうに微笑んだ。まあ、アズの膝枕は普通にしてれば目線が通るはずがない。自分の胸を掻き分けて、わざわざ覗き込もうとしない限りは。
『マスター様、何か興味深い事でも書かれていましたか?』
「んー、そうだな。このチームを考えたとき、今動ける中でのベストメンバーをチョイスしたつもりだったんだけど、人間は俺1人だけだったんだなーって気付かされた」
『あはっ、そうかもね♪』
『奥様達は、皆さん『弱体化』を使わざるを得ない為、ダンジョンは危ないですもんね』
『普通の攻撃なら過保護なマスターがいれば全部防げるし、マスターが与えた『金剛外装』なんてスキルもあるから平気だけど、『威圧』系統のスキルや効果は防げないからね~。『弱体化』でステータスが弱まってる時に受けたら、心身に何か影響が出てもおかしくはないわ』
「やっぱそうなのか?」
まあ単に危ないからって理由だけで遠ざけてはいたけど、思い返してみれば『魂圧』なんてスキルとかはまさにそうだよな。弱くなってる時にそんなもん受けたら、本人だけでなくお腹の子にまで影響が出かねん。まあ、機械しかいないダンジョンでそんなことしてくる奴がいるのかって話だが。
『なんせ、未だにタマモは、マスターから受けたアレのせいで夢に出てくるそうだもの。流石にそこまでのトラウマを覚えてるなら、あたしも溜飲は下がったし、これ以上虐める気にもなれないわね』
「そ、そうなのか。それはちょっと可愛そうだな」
そういやあの時、タマモは漏らしてたもんな。幼女に見えない傷を負わせてしまったという事象は、言葉にすると中々よろしくないが、どう考えても俺より年上だろうから、そこは気にしないようにしよう。でもあまりにも重い罰になっちゃってるみたいだし、なんとかケアできればいいんだけど……。
「キュビラ、なんかいい案ある?」
『そうですね……。お姫様と私は種族は違えど似たようなところがありますし、わ、私がマスター様にしてほしい事でしたらあるのですが……』
キュビラは言いにくそうにモジモジしている。身体が動くたびに尻尾もゆらゆらするから、見てて飽きないんだよな。
「ん? なに、言ってみ?」
『……ブ、ブラッシングをしていただけると』
「……あ~」
そういや、撫でるだけでブラッシングしてあげたことはなかったな。確か嫁達の何人かが、キュビラが自室でのんびりしてる時に、尻尾を1本1本丁寧に梳してるのを目撃したって言ってたし。アズやキュビラの生活用品はアイラが用意してあげたらしいが、多分その中にブラシも入ってたのかもしれんな。
「キュビラ、ブラシは持って来てるか?」
『は、はい』
「じゃあ、悪いけど練習させてくれ」
『……はいっ♡』
そうして小一時間ほどかけて、ゆっくり丁寧にキュビラの尻尾をブラッシングしてあげたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
『……♡♡』
キュビラが滅茶苦茶幸せそうな顔で寝転がっている。狐族にとって、これは最大級のご褒美なのかもしれない。
『んふ、正解よマスター。といっても、誰からでも良いってわけじゃなくて、一番信頼できる大好きな人からって前提はあるけどね』
「なるほど。……となると、タマモには効果半減したりしない?」
『感情面ではそうでも、気持ち良さはあるはずよ。だからマスターが思うように、お詫びとしては十分なんじゃない?』
『マスター様の腕前なら、お姫様もきっと喜んでくださいます♡』
「そっか」
にしてもブラッシングか。仲良くするためのツールとしても使えそうではあるし、俺のお詫びが終わったら、タマモはサクヤさんからしてもらうのも良さそうだよな。
……うん、タマモをブラッシングするサクヤさん、滅茶苦茶絵になりそうだな。俺も撫でられたい。
「ああそうだ、サクヤさんで思い出した」
『ん-?』
『どうされました?』
「アズも俺のスレッド見たからわかるだろうけど、今回のうちのチームは人間が俺だけっていう他に、嫁がいないとも言われてたんだよ」
『そうねぇ。マスターの無茶振りを止めてあげられる人は、ここには居ないわね。あとで一緒に怒られてあげましょうか?』
「まあそれは良いよ、俺が勝手にやる事だから。それよりも……2人とも」
『うん?』
『はい』
改めて言うとなるとちょっと緊張するな。私達はペットであって、そういうのじゃないと拒否られたらダメージ追いそうだ。
「クリス達と後日結婚式を挙げる予定なんだが、その時にアズ、キュビラ。お前達も俺と結婚してくれないか?」
『えっ、良いのー!?』
軽っ。
でも、好意的に受け取ってくれたみたいだ。
『私なんかがマスター様の番に……。よろしいのですか』
キュビラも喜んでくれているのがよくわかる。その表情も、耳も、尻尾も。
「俺としては、お前らの事も既に嫁として見てたからな。他の嫁達も俺がそういう前提で視てることは気付いてくれてるはずだし。なのに、スレッドでは嫁扱いされてなかったからな……。そこでようやく、お前達に気持ちをしっかり伝えていなかった事に気付いたんだ。こんなタイミングで悪いな」
『んふ、良いわ。マスターらしいし、許してあげる♪』
アズは腕を組んでふんぞり返っているが、照れ隠しをしているのが丸わかりだった。表情と尻尾は正直なんだから。
『マスター様、末永く宜しくお願い致します』
「ああ」
逆にキュビラは先程とは打って変わって、耳も尻尾もピンと立て、三つ指で丁寧に頭を下げていた。いつもの甘々モードとは違って、真面目な彼女もいいものだ。
『それでマスター、サクヤももちろん搔っ攫うんでしょ?』
「そりゃ当然」
『お姫様はどうされますか?』
「タマモは……違くない?」
『あいつは中々の骨董品だけど、もうマスターくらいしかもらってくれる人いないんじゃない?』
『そうですっ。お姫様より強い殿方なんて、マスター様しかありえませんっ』
「えー?」
なんでこの2人はこんなに乗り気なんだろうか。
『じゃあさ、今度アイツをブラッシングする時の反応で決めましょうよ♪』
「あー、好きじゃないと効果半減するって話?」
『マスター様のテクがあれば、お姫様もメロメロですっ♡』
狐族はチョロイけど、タマモは妖狐族だ。だから、チョロさは伝播してないと思いたいところだがなぁ。まあそれは良いや。にしても、今日はもうのんびりしすぎて出発が遅れちゃったな。
仕方ない、時間が時間だし、このまま昼飯を食べるまでのんびりして、それから第二層の攻略をしていきますかね。
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