ガチャ875回目:第一層の大トリ
さて、二棟目のビルの屋上に着いた訳だが……。例の台座もなければ、宝箱も見当たらない。そして大して広くもない屋上を全員で歩き回っても、宝箱が出現することはなく、見事にからぶった。
「あー、やっぱ外から見えないだけでなく、ついでにギミックを解かないと出現しないタイプか」
『ズルできないよう設計はされてるみたいね』
『レーザーを潜り抜けてまでゴールに侵入される可能性を、放置はしなかったようですね』
んじゃあとは、どこのギミックが宝箱の出現条件に設定されているか、か。これは流石に最上層だと思うが、1階からセンサーでチェックされてたりしたら面倒だな……。
ま、1個ずつ上から順に調べていくか。
「アズとキュビラはここで待機していてくれ」
『はーい♪』
『はい♡』
「エンキ達は、一緒に来るだろ?」
そう聞くと、各々が自分の定位置である腰背首肩頭に飛びついて来た。全く、嫁達がいないからか、ここぞとばかりに甘えてくるな。
んじゃ、さっき柱を渡っている時に見えた窓から内部に侵入するか。そうして俺は、他のビルからレーザーで狙われるよりも早く、1階下の部屋へと侵入を果たす。
「おらっ」
内部にいたモンスターは警戒音を鳴らす前に撃滅し、ドロップしたアイテムはエンリルに回収させる。そのまま全員で手分けして隠されていたスイッチを探し出し、起動させる。すると先ほどと同様に天井の中心部がぱかりと開き、梯子が降りて来た。そしてそのまま登れば、アズとキュビラと一緒に、宝箱が出迎えてくれたのだった。
『おかえりなさいマスター♪』
『階段が出現するのと同時に出て来ましたよ』
「おお、そうか。簡単なシステムで良かったー」
宝箱を開け、中の金属片を回収していると、アズが腕を引っ張った。
『それとねマスター、柱が消えちゃったのよ』
「マジで? かなり早かったな」
見れば、確かに一棟目のビルから伸びていた柱はどこにもなく、スカスカになっていた壁面も元通りになっている気がした。
『それと、柱の消失と同時に、一棟目の内部にいたモンスターも解いたギミックも、全部復活して元通りになっているみたいなの。流石にレーザー持ちは復活していないみたいだけど』
「ほう。ってことは、ビル内から誰もいなくなる事が条件で、元通りになる仕様かな?」
『かもねー』
『ではマスター様、出発なされますか?』
「ああ。とりあえず宝箱は全部開けちまおう」
そこからは、降りる時はギミックを破壊し、登る時はギミックをちゃんと解いたりしながら全4つのビルを制覇して行った。
そして地上に降り立ち、マップを完璧に埋めることができた事実に1人満足する。そんじゃ、最後にこの4つの金属片だが……。普通に重ねれば良いタイプかな?
『カチッ、カチッ、カチッ』
金属片は独りでに動き出し、ひとつの円盤へと姿を変えた。
名前:謎の円盤
品格:不明
種類:トリガーアイテム
説明:未知の技術で製造された金属の円盤。不思議なエネルギーを放っている。
うん、しっかりとトリガーアイテムに変貌したな。あとは、このアイテムの使い所を探せば……。
「『解析の魔眼』!」
……ふむ。第一層の中心部に伸びてるな。それはここからでも目視可能な場所で、十字路のど真ん中だった。
この階層は、本当にビルの内部にしかモンスターがいないため、道はマジで平和なんだよな。だから、ビルに乗り込むために準備している人だったり、第二層に向かう人達だったりと、それなりに往来は激しい。そんな往来の中心にトリガーアイテムを置くことになるとは。
一応、湧かせる前に近くにいる人達には声をかけておくか。
「エンキ、巨大化」
『ゴ!』
突然の巨大化に、周囲にいた人たちの視線が集まる。俺はそんな注目の的であるエンキの頭上に飛び乗り、周囲に呼びかけた。
「えー、今からレアモンスターと戦います。危ないかもしれないので中央には近付かないようお願いしまーす」
これで良いだろ。
「あ、そうだ。アズ、キュビラ。ここのレアモンって、すでに知られてたりする?」
『どうだっけ?』
『知られていなかったかと』
「そっかー。わりと単純な仕掛けのはずなんだがな」
まあ屋上の仕掛けと宝箱をゲットしたとして、全部合体させてトリガーにするなんて発想は、普通はもてないか。
どの宝箱からも同じ見た目の、同じ説明文の欠片が出て来たから、どこで取ったアイテムなのかとかはあまり関係がなかったりするのだろうか。下手すると、同じ場所から出て来た欠片4つでもこの円盤に変化したりしてな。
入手の手段としてはそこまでの難易度じゃなかったし、後でアイラやサクヤさん経由で協会に情報を流してもらうか。
『今まで目撃情報が無かったとしても、マスターが公開するんだし、これから繁盛するんじゃない?』
「そうかもな。んじゃ、湧かすぞー」
十字路の中心部には、これ見よがしに円形状の窪みがあった。ここにある事を疑ってなければ、見逃しかねないほど存在感が薄いな。まあ周囲は廃墟だし、道はガタガタだから、これを見つけた人がいたとしてもたまたま円形状にへこんでるだけだと判断したかもしれんな。
カチリと円盤を嵌め込むと、地面から煙が吹き上がり、中から機械型のモンスターが産み落とされた。
*****
名前:戦術兵器ver1.0 Type戦士
レベル:100
腕力:1200
器用:1100
頑丈:1000
俊敏:600
魔力:0
知力:500
運:なし
★【Eスキル】蹂躙駆動、スキャニング、戦士の魂
装備:高周波ブレード、高周波ブレード、多機能戦術兵装、クロックアップ回路、増幅ブースター
ドロップ:戦術兵器の歯車、ランダムな装備
魔石:特大
*****
その機械型モンスターは人型であったが、硬そうな装甲に身を包んでおり、足にはローラースケート、その手には2本の高周波ブレード。『戦術兵器』というのが気になるワードではあるが、スキルにないはずの『二刀流』をしていることから、『戦士の魂』はミスティのような複数スキルが内蔵された高性能スキルなんだろうな。
あと、惜しむらくはドロップスキルという旨みがない点か。となればもう、装備品のドロップに期待するしかないな。
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