ガチャ873回目:一棟目の攻略
『ビイイイ!!』
『移動式多脚レーザー砲』は、防がれようとお構いなしに俺の眉間に向けてレーザーを放ち続けている。防がれてるんなら移動して狙いを変えればいいのに、もしかしてこいつ、そこまでの知能が無いのか?
そういや『知力』0だったしな……。獲物を見つけたら脊髄反射で撃つ事しか能が無いのかもしれん。
「マジックミサイル」
空いた方の手で指向先を指し示し、マジックミサイルを投射。レーザー砲は文字通りスクラップと化した。そして残った破片も、ガラクタとなって崩れ落ちていき、最後には煙となって消えた。
今のところここの遭遇モンスターはどちらも、撃破すると最初にスクラップになって、その後破片となってから、ようやく煙になるんだよな。機械兵独特の演出なのか、何か秘密があるのか。……多分前者かな。
『ねっ、マスター。言った通りでしょ♪』
「まあな。全然痛く無かったわ」
『んふふー♪』
「けど、これは俺だから問題なかっただけで、普通の人が相対するのは難しい相手だよな。屋内であんな高速のレーザーを撃たれたら、俺でさえ回避よりも防御を選択せざるをえなかった。普通の人間相手でも耐えられるなら良いが、十中八九致命傷になるだろうし。他の連中はどうしているかとか、そういう情報は貰ってるか?」
『はい、マスター様。一般の冒険者が遭遇する際は、大楯持ちが正面を行く陣形を取るそうです。機械兵士達は人体の急所を正確に狙ってくる難敵ですが、裏を返せば急所さえ守っていれば安全であると言えます』
「なるほど。で、その急所攻撃に慣れて来たところで、隙を突く狡猾なAI搭載の機械兵士が出てくるとか、そういう設計かな」
ダンジョンってのは、そういうところあるし。
『流石マスター様……♡』
『キュビラー、それ、ネタバレしちゃってるわよ♪』
『あっ……』
ショック受けるキュビラを撫で回す。
「むしろこの答えが外れてた方がダンジョンとしてはつまらなくなるからな。当たってくれてよかったよ」
『♡♡』
『ま、マスターならそう言うわよね♪』
「んじゃ行くぞー」
そうして階段を登ると、またしても行き止まりにぶち当たる。今度はエンキ達の番ということで彼らに丸投げし、俺は2人を可愛がる事で時間を潰した。
『ゴーゴゴ?』
『ポ。ポポ? ポー』
『♪♪』
『キュイキュイ』
『プルンプルプル』
エンキ達は一度集まって、意見を出し合っては一斉に散開し、目的のものが見つからなければすぐさま再集合して、また別の意見を出し合っていた。壁にギミックがないかとか、どこかにスイッチが隠されてないかとか、瓦礫の内部に怪しいものがないかとか、アプローチの仕方は俺に似てるが、多角的視点で物事を見てるようだから見ていて飽きないな。
そうして任せる事数分……。
『ズズズ……』
見事エンキ達は柱の影に隠れたレバーを引き、隠し扉を発見したのだった。
「楽しかったか?」
『ゴゴー』
『ポー』
「そりゃ良かった」
さて、現在の階層は10階だ。残りもこの調子なら、ガンガン進んでいけそうだ。
俺達は順調に11階、12階と攻略し、道中にて遭遇した機械兵士やレーザー砲は全てスクラップに変えた。そして最後に、部屋の中央の天井から垂れ下がる、極細の糸を見つけて引っ張った。
『ガコンッ!』
「お、正解かな?」
『キュイ? キュキュイキュイ』
『♪♪♪』
『プル!』
最上階は何もない部屋かと思ったが、やっぱり隠しギミックがあったな。にしても意地が悪い。今まではスイッチやらレバーやらだったのに、ここに来て長さ1メートルもない極細の糸だなんて。そんなんゴミにしか思えんだろう。
まあいくら荒廃したビル群が背景にあるとは言え、ダンジョン内に糸くずなんてゴミは存在しないから、それもまた思い込みを利用したトラップか? でも特に意味ない瓦礫があるしなぁ。騙されるっちゃ騙されるか。
そうして待っていれば、天井に穴が開き、金属製の梯子がカタカタと降りて来た。この上は何もない真っ平な屋上だったはずだが……。ふむ。
「先に行く」
誰よりも先に梯子を駆け上がり、屋上と躍り出る。するとそこは確かに屋上だったが、見覚えのない金属製の台座と、金色に輝く宝箱が置かれてあった。
エンリルに偵察させた時はこんなの無かった。とすると、最後のギミックを解いたことで出現したのか、それとも台座と宝箱は、近付かないと見えないタイプか。
まあどちらのタイプだったにしても、俺の攻略欲求を刺激してくれるので、良いギミックと言えた。
「エンリル」
『ポ?』
「ちょっと真上に向かって飛翔してくれるか? レーザー飛んでくるとは思うけど」
『ポポ!』
エンリルが飛び上がると、すぐさま他のビルからレーザーが飛んでくるが、エンリルは風を読んで背後からの攻撃を全て回避する。そして一定の高さに辿り着いた後は、反転して一気に急降下する。
勢いよく降りて来たエンリルは、甘えるように肩に止まって頬擦りしてくる。
『ポーポポポ』
「ふむ、見えなくなったか。となると。最低でも不可視型のギミックはある訳だな」
『ねえマスター、早く開けてみましょうよ』
「そうだな」
と言いつつ俺は、宝箱を持ち上げようとしてみた。だが、台座に固定されているようで、宝箱は持ち運び不可のようだった。となれば、それなりに大事なものが入っている可能性が高いな。
「ぱかっとな」
名前:謎の金属片
品格:不明
種類:アイテム
説明:未知の技術で製造された金属片。微かに熱を持ち、振動している。
「今まで以上に変なのが出たな。……よし、『解析の魔眼』!」
魔眼を通して視てみれば、金属片から微細な魔力が3カ所に伸びていた。その行き先は、言うまでもなく残りのビルの頂上だ。
「この反応からして、こいつはトリガーアイテムかな?」
なら、さっさと他のビルも攻略しちまうか!
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