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ガチャ872回目:のんびり探索

 そうして俺は時折遭遇する自動歩兵との戦闘をこなしながら、次々と屋内を制圧して行き、マップに表示されている建物の内部情報を更新し続けた。そんな作業が1時間ほど続き、背の低い建物は情報更新が全て完了したところで疑問を口にした。


「雑多な建物は雑魚がいるだけで、本当に得られるものはほとんどないんだな。『銀の宝箱』は4個ほど発見したけど、中身はヘンテコな機械部品だったし……」

『ゴゴー』

『プルル』


 エンキ達が興味深そうに機械部品を眺めている。彼らはアニメとかいっぱい見ているから、こういった物にも興味津々なんだろう。


 名前:旧文明時代の部品

 品格:≪最高≫エピック

 種別:アイテム

 説明:いつ作られたかも不明な機械部品のパーツ。何の用途で用いられていたかも、情報不足により判明していない。


 こういうのは、向こうの世界の時代考証に使えるのか、それともダンジョンの知識を深めるために必要なのか、はたまたダンジョンで得られた技術の発展のために活用できるのか、さっぱり分からんな。


『キュイキュイ』

『♪』

「宝箱から出たパーツは全部形は違うけど、流石に変形ロボットにはならないんじゃないか?」

『ポ? ポポ』

「まあ浪漫はあるがな」


 さて、雑談はこのくらいにしておいて、問題は鍵とレアモンスターだな。ここに来るまでに討伐した雑魚の総数は284体。だが、これといってレアモンスターが湧く気配は無いし、鍵を出す条件も見つかっていない。雑魚の種類も完全固定で、装備も全員スタンバトン。何かしら違いがあるわけでも、怪しいポイントも無かった。

 となれば、怪しいのはレーザーをぶっ放して来たモンスターが潜む、高層ビルくらいだろう。高層ビルの数は全部で4つ。階層も低いところは2から5層程度なのに対し、高層ビルは全て12階建てだ。これだけ怪しい条件が揃っているのに、何も無いわけがない。

 これで何も得られなかったら、ちょっとショックを受けるかもしれん。


「そんじゃま、早速行こうか」

『ゴ!』



◇◇◇◇◇◇◇◇



 高層ビルを登り続け、俺達は8階にまで辿り着いていた。道中は案の定、自動歩兵が群れをなしていたが、大した強さでもないため軽く蹴散らして来たのだが、ここに来て問題が発生した。このフロア、行き止まりになっていて上へと続く階段がないのだ。フロアの広さ自体は、階下と比べると明らかに狭くなっているので、壁の向こうに階段があるのは間違いないのだが……。


「ふむ。隠し部屋、もしくは隠しギミックか」


 アズが言っていた罠も、これかな。

 向こうに空間があるであろう壁を手でなぞったり、軽く叩いてみたりするが、変化はない。多分本気で攻撃すれば、これくらいの壁は破壊できそうな気もするけど、それをするのは負けかなと思う。


『ゴー』

『ポポ』


 エンキ達は俺がどうするのか観戦するようで、のんびりと座り込んでいた。アズやキュビラもニッコニコである。

 ふーむ。壁には何もないし、室内の瓦礫を退けても特にスイッチになりそうなものは見当たらない。室内にないのなら室外になるわけだが……。ううん、外へと繋がるガラスのない窓は全部で8箇所あるが、その半数以上からは微弱ながらも嫌な予感を感じる。なのでそれ以外の窓からそーっと身を乗り出し、周囲を確認してみる。


「お、あれか?」


 すると、明らかに廃墟の壁面にあるには似つかわしくない赤いボタンが、窓下のヘリの部分に存在していた。このボタンは、位置的にも階下からは見えないようになってるんだな。

 そして上を見ると、先ほど感じていた嫌な予感の正体がいた。といっても、脚先だけだったが。


*****

名前:移動式多脚レーザー砲

レベル:55

腕力:600

器用:550

頑丈:300

俊敏:300

魔力:0

知力:0

運:なし


★【(エクス)スキル】壁面走行、自動照準


装備:第三式レーザー砲

ドロップ:多脚の砲塔

魔石:中

*****


 脚先だけだろうと範囲内なら、ちゃんと見れるんだな。まあ、砂地に隠れてるゴーレムだって見えたんだし、そういうもんか。

 しかしまあ、3000以下の攻撃なら問題ないとはいえ、レーザーってどうなんだろうか。物理? とは思えないし、かといって魔法? でもないよな。

 発展し過ぎた科学技術は、果たしてどちらになるやら。まあ、嫌な予感ってのも、今ある情報を元に再精査してみれば、不意打ちに対するものだったということが何となく分かるし、命の危険はとりあえず無さそうだ。けど、この不安定な体勢でレーザーを受ける気はないし、今はスイッチを優先するか。

 ぽちっとな。


『ズズ……』


 赤色のスイッチを押すと、道を塞いでいた壁の一部が下がって行き、人がギリギリ通れるくらいの穴が出現した。これが正規ルートってわけだな。


「シンプルな謎解きもまた楽しいな」

『ゴゴ』

『ポーポポ』

『キュイイ!』

「おう、次に似たようなのが来たら、お前達に任せるな」

『♪♪』

『プルーン』


 俺がギミックを解く姿を見て楽しそうだと思ったらしく、珍しくやりたがっていた為許可を出す。次もまたスイッチ系なら人海戦術ですぐにクリアできちゃうかもな。

 なんて考えながら奥へと進み、階段を登る。すると、登り切った先の部屋に陣取っていた多脚戦車こと『移動式多脚レーザー砲』の知覚と、俺の視線が交わったのを肌で感じた。


『ビィィ!』


「おっと」


 反射的に腕で防御をすると、熱源らしきものが手の甲に当たってるのを感じた。……うん、顔面に向けて照射されたレーザーが、見事に手の甲に直撃している。てか、本当に痛くはないんだな。ちょっと熱を感じるけど、火傷するほどではない。

 昔の感覚でいえば、ちょっと強い陽射しを浴びてる感覚か……? 『天翼の籠手』による軽減もあるだろうけど、まさかレーザーすらこの程度で済むとは。ほんと、いつの間にやら強くなったもんだ。

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