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ガチャ870回目:廃墟へ

「キュビラが心配してたのは、さっきのモンスターの存在って事で良いのか?」


 キュビラがこくりと頷いた。余計な事を言わないように、口を噤んでいるのかもしれないな。健気な反応が可愛らしかったので、とりあえずわしゃわしゃする。


『……♡』

「もう存在を認知した以上、アイツについてはもう情報を隠さなくて良い。あの射撃は、一定高度に達した存在に対して、ひたすらに射撃するというルールで動いていると見て良いのか?」

『はい、その通りです。マスター様♡』

「にしても、やっぱりというか、屋内もしっかり探索しないといけないタイプのダンジョンなんだな。これはちょっと、普通に探索し始めたら時間が溶けちまいそうだ」


 ここの攻略は急ぐ訳ではないが、だからといってダラダラと時間をかけてたら第二チームが自由に動ける時間が減ってしまうんだよな。どうしたものかと悩んでいると、アズが尻尾を絡めてくる。


『ねえねえマスター。あたしの方でマップの全解放を試して良い? それで時間がかかりそうなとこだけ、あたしがアドバイスするとか』

「おー。良いなそれ。とりあえず第一層だけ先に頼めるか?」

『はーい♪』


 アズが後ろに回ってマップをポチポチする。その様子をキュビラもまた興味深そうに覗き込んでいる。


『うーん、これは中々……』

『マスター様でも、1日で攻略するのは厳しいのではないでしょうか』

『かもねー。ねえキュビラ、あんたここの担当ボスの事は知らないの? ナンバリング4つしか違わないじゃん』

『はい。確か『機械主メズマリウス』の傘下のいずれかだったかと』

『あー、聞いたことあるわね。機械兵器の軍団とかそういうのが得意な奴だっけ。ってことは、アイツの陣営か……』

『ですが、レベルが高いという話は聞いた覚えがありません。私たちのように自我があるとは思えません』

『そうねー』


 なんか興味深い話をしているな。No.500にいる管理者は知っているやつで、ここのボスは自我もなく人間を見掛けたら問答無用で攻撃してくるタイプって事か? まあそれはともかくとしてだ。


「で、アズ。ダンジョン構成を見てどう感じた?」

『んー、多分だけど、罠っぽい反応がちらほらあるわね。でもマスターやあたし達をどうこうできるレベルの罠があるとは思えないし、あのレーザーにしたってそう。当たったところでさほど痛くはないと思うのよ』

「そうなのか?」

『だから、罠も踏み抜きながら突破するなら、この一層の攻略に1日以上かかる事はないわ』

「ふむ、つまり……」

『マップ無しでも大丈夫よ♪』

「おお。それが聞きたかった」


 なら、新規のダンジョンを楽しみつつも、早速攻略するとしますかね。

 新天地の攻略に胸を躍らせていると、アズはマップを閉じて俺の横に並んだ。マップを開きっぱなしだと、俺の視界外にい続けなきゃいけないから、それに耐えられなかったのかな。


「んじゃ、まずはそこの背の低い半壊した建物からだ」


 そうして俺達は、倒壊しかかっている3階建のビル跡に入って行った。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「ふーむ。内部は机やテーブルがそのまま残ってるわけじゃないんだな」


 ビルの内部は瓦礫があるものの、まるで掃除されているかのように特定の箇所に纏まって存在しているので、廃墟の割に基本的に歩きやすく、平坦なフロアが続いていた。廃墟といえど人の手が入ったこの感じ、そういうコンセプトで作られているんだろうか? 例え屋内で戦闘になったとしても、足場が悪くて戦いにくい、なんて事にはならなさそうだな。

 積み重なっている瓦礫も大きくて80センチ程度の高さまでしかないので、モンスターが隠れられるほどの物でもない。そしてモンスターの気配は……この上か。


「アズ、上にいるのは3体で間違いないか?」

『ええ、正解よマスター♪』

「お、良かった。今回ばかりはちょっと自信なかったんだよな。相手が非生物だから、感知方法が今までと勝手が違うんだよな」


 生物系モンスターからは、呼吸音や鼓動、生物としての存在感や殺意など、ありとあらゆる方法で感知する事が可能だ。だが、ここにいるのは先ほどの多脚戦車よろしく、ほぼ全てが機械のはずだ。となると、感知できる方法も限られてくる。

 奴らから感じられるのは僅かな駆動音と、未知の異物感、あとは遭遇時に発せられるであろう人間に対する敵意や害意くらいのものか。機械系モンスターとの接敵は初めてだから、相手がいくら弱かろうと慎重に行くしかないよな。

 そうして階段を登って、フロア内が一望できる位置に陣取った。


「……」


 あれか。


*****

名前:自動歩兵

レベル:20

腕力:160

器用:160

頑丈:100

俊敏:50

魔力:0

知力:0

運:なし


★【(エクス)スキル】警報


装備:スタンバトン

ドロップ:歩兵の歯車

魔石:小

*****


 ドロップスキルはなし。アイテムもよくわからん歯車。2本足で動くブリキのロボットみたいなやつだな。

 ゴーレムコアがない以上、奴は種族的にはゴーレムではないんだろうけど、無理やり分類するなら、機械でできたゴーレムって感じだろうか。

 この『(エクス)スキル』はどう考えても周囲のモンスターを呼び寄せる奴だよな。スキルっていうより、装置と言った方が正しいんだろうが、モンスターとしてここに登録されている以上、装置もまた特殊な技能として扱われてるって感じだろうか。

 とりあえず……。


「よお、機械ども」

『『『!?』』』


『『『ビーッ! ビーッ! ビーッ!』』』


 けたたましいサイレンに酷似した音が連中から流れると、周囲の建物から同等の存在が集まって来るのを感じた。


「おーおー、結構な範囲から集まって来るじゃないか」

『うるさいわね~』

『マスター様。私達はこちらの隅で待機していますね』

「おう」


 さーて、機械人形との初戦闘だ。楽しんでいきますかね!


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