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ガチャ869回目:機械ダンジョンへ

 結局、先方への連絡は彼女達にしてもらい、『機械ダンジョン』への送迎もアイラにしてもらう事となった。また、ダンジョンについてくるメンバーについては、特に変更はかからなかった。

 まあ俺と違って彼女達は、ダンジョンの構成については協会経由で入ってきている情報で熟知しているはずだからな。俺の考えたメンバーでも特に問題はないと判断したんだろう。


「ではご主人様。協会へは行かずそのままダンジョンに直行してください。話はもう付けてありますから」

「ありがとうアイラ。それと進化スキルセットの件なんだが……」

「はい。『魔力貯蔵のネックレス』への充電作業もありますから、チーム人数事に纏めてではなく、2個セットで送って頂ければと思います」

「んじゃ……カスミ達を優先で行こうとは思うが、一応送る度に俺が判断するからな。必要あればそっちで適宜修正してくれればいいから。それと、このメンツで問題ないって皆が判断した以上、クリス達には長めの休暇を取ってもらうとしよう」

「畏まりました」

「他の皆によろしく」

「はい。ご武運を」


 アイラとの強めのハグをし終えると、俺達はダンジョンへと乗り込んだ。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「ここが機械ダンジョンか」

『ゴー』

『ポーポポ?』

『キュイー』

『♪』


 目の前に広がる情景はダンジョン名にふさわしく、まさに異世界といった風景だった。打ち捨てられ人が住まなくなって久しい廃墟となった都市のような、コンクリートブロックの街並みが広がっていたのだ。この情景はまるで、スタンピードを抑えきれなくなって滅んでしまった、未来の地球の様にも思えてしまうな。

 こんな風景が400番台で出てきたんだよな? となりゃ、このダンジョンを見て世界の滅亡を想像した人は少なくないだろう。冒険者になる人が爆発的に増えたのも、この時期だったりするのかな。サクヤさんなら、こういう情景を使って人心を操り、危機感を煽って扇動するくらい訳ないだろうな。

 ……てか、こんな感じの都市の情報、ダンジョン側はどこから引っ張ってきたんだろうか? 日本には当然ないわけだし、向こうの世界にもあったんだろうか?


『プルプル』

「そうだろうな。こんなとこじゃ、食べられるモンスターはいなさそうだよな」

『プルーン』


 初っ端からイリスのテンションは低いが、まあこれはイリスも分かっていたことだからな。そこまで落ち込んではいなさそうだ。

 さて、このダンジョンは『妖怪ダンジョン』みたく不人気ではないので、この第一層にはそれなりの冒険者がいる。けど、高難易度を誇るダンジョンだけあって、そのどれもが中堅以上だが。そんな彼らがいる往来のど真ん中で、勝手気ままにのんびりするわけにもいかないので、少し離れた場所で腰を下ろした。

 流石にダンジョンの入口付近にはモンスターは現れないらしい。荒廃した道路にもそれらしい影はないから、やっぱり屋内にいるんだろうか?


「んじゃ早速、このエリアの探索から始めるか。廃墟となったビル群の内部も探索エリアの対象となるなら、エンリルだけではマップ埋めはできないけど、このエリアの全体を知るだけでも意味はあるだろ」

『ポ!』

「よし、行ってこい!」


 『視界共有』を施し、エンリルを飛翔させる。そうしてマップを埋めていると、キュビラがそわそわとしている事に気付いた。俺側の視界は閉じてるけど、キュビラは尻尾のせいで体積が多いからな。ちょっと動くだけですぐわかるんだよな~。


「キュビラ、どうした?」

『あ、いえ、その……。なんでもありません』

「それはネタバレ的な意味で?」

『は、はい……』


 キュビラのそわそわが始まったのは、エンリルを飛ばす事を俺が決めた辺りからだ。けど、エンリルが危険な目に遭うと判断するのであれば、叱責覚悟で止めに来るはず。となれば、危険な目というほどではないが、心配する何かがあるという訳だ。


『もう、キュビラ。あんた表情に出過ぎよ。マスターが色々と察しちゃったでしょ』

『うう、申し訳ありません……』

「まあまあ。キュビラも心配して案じてくれただけだ。俺は気にしていないぞ」

『マスター様ぁ♡』


 にしても、エンリルを心配する要素、ねぇ。

 ……あ、もしかしてだけど、ここって()()()()()()()なのか? もしそうなら遭遇は2回目ってことになるけど、どうなんだろうか? でもそれ以外に可能性がある物も思いつかん。

 となれば、やることは一つだ。エンリルが油断する事はないだろうけど、念のためだ。

 俺は片目を開け、エンリルに見えるように端末に文字を打ち込む。


『回避する準備を』


 それをエンリルが認識したであろうタイミングで、俺から見えるエンリルの視界が一回転した。


「うおっ」


 慌てて自分の視界でもエンリルのいる方角へと目を向けてみれば、ビルの屋上付近から飛行するエンリルに向けてレーザーのようなものが照射されているのが見えた。


「対空砲か!」


 そしてエンリルが飛行を続ければ続けるほど、他のビルからもレーザーの照射が始まり、数分もしない内に10を超すレーザーがエンリルを狙い始めていた。しかし、『風』の力を得たエンリルにしてみれば、レーザーなど恐れるに足らずといった風で、悠々と回避し続けていた。

 まあ、その視界は最悪の一言だったが。エンリルにしてみればなんてことない視界だろうけど、自分の意志とは無関係に天地が反転し回転し続ける視界など、拷問でしか無かった。耐えられないほどではなかったが、正直早く終わって欲しくもあった。


『ポポ~』


 そうしてマップを全て埋め終えたエンリルは、一度もレーザーを被弾することなく全て躱しきり、余裕の表情で降りて来た。


「あ~……頭がクラクラする」

『ポ~』


 この感覚、初めて『視界共有』でエンリルの視点で世界を見た日以来だな。


『マスター♪』

『マスター様♡』


 そんな俺を介抱するかのように、アズとキュビラが包み込んでくれる。うん、くるしゅうないぞ。

 さて、とりあえずマップを起動してっと。そしてビルの屋上にいる赤点をタップする。エンリルの視界にちらっと映ったからな。その姿がはっきりと見てとれた。


「……ふむ。コイツがレーザーを発射してたやつだな」


 その姿を一言で表すなら、多脚戦車という呼び名がしっくりと来るだろうか? 6本の脚に、中央には360度回転する丸い砲台。他のビル群に目を向ければ、屋上で待機する奴もいれば、壁面を伝って蜘蛛のように屋内に戻る奴もいる。

 あれがこの階層の通常モンスターなのか、それともレアモンスター枠なのか。ここもまた楽しめそうなダンジョンだな。

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― 新着の感想 ―
海底ダンジョンの2つの幻想を入手して他の人も探索できるようにしないのですか
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