ガチャ867回目:新生後の強さ
シルヴィが嬉しそうにエスに抱きつく様子を皆で眺めながら、改めてエスの進化について思案する。
「アズ、イクサバ、キュビラ。種族『ハイ・ヒューマン』についても、情報はないのか?」
『それについては聞いた事があるわ』
『我もありまする』
『私はアズ様ほどの情報はないですね』
まあ、キュビラはアズの配下の更に配下だもんな。知ってる情報の鮮度もアズの方が上か。
狐耳と尻尾をしょんぼりさせるキュビラが可愛かったので、手招きして撫で回す。
「よーしよーし」
『はふ、マスター様……♡』
「それで、情報ってのは?」
『といっても噂程度のものよ。あたしの領地よりもずっと外で、山の奥地で修行していた仙人だかなんだかが『ハイ・ヒューマン』の域に到達したって噂。そいつの強さは上位の亜人種と同等だったとか、それ以上だったとかなんて噂もあったわ』
『我も、この戦闘スタイルの元祖となる地にて、人族でありながらその境地に至った御仁がいるとの噂を耳にしました。我も直接お目にかかれた訳ではないため、真偽のほどは定かでありませんが、あの地ではそれなりの頻度でこの噂が立っておりますので、信憑性は高いかと』
「なるほどな」
ってことは、レベル1000に至ったという噂よりも先に、『ハイ・ヒューマン』の誕生の方が優先されて流れてきたと言うわけか。
まあ火のないところに煙は立たぬというし、そもそも『ハイ・ヒューマン』って種族名が出回っている以上、その噂とやらもほぼほぼ真実なんだろう。
「そんじゃ、とくにデメリットも無ければスキルが消えるなんて展開も無さそうだし、俺もやってみるかな。アイラ」
「はい、こちらに」
『魔力貯蔵のネックレス』を受け取った俺は、皆から少し離れて宣言する。
「魔力10万を使用し、『ソウルコンバージョン』、『ソウルリインカーネーション』を発動する!」
瞬間俺の全身が光に飲まれ、視界もまた真っ白な輝きに包まれる。続いて、俺を構成する意識や肉体の全てが、光の中に溶け存在すらも分解されていく感覚を覚える。だがそこに嫌悪感などはなく、心地良さだけがあったため、俺は特に抵抗することもなくただその流れに身を委ねた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
……おっ?
俺の意識が光の中に再浮上を果たした。意識が飛んでたんだろうか?
意識も肉体も存在も、確固たる物としてそこにある事を知覚する。だが、ソレは俺の中にある今までの自分とはかけ離れた存在であり、記憶の中の俺よりも明らかに強固な存在感を放っていた。
これが、魂の転生か。それはまさしく生まれ変わったと言って差し支えない代物だった。
そうして自分を認識していると、視界が徐々に晴れていき、そこでは俺の帰りを今か今かと待ち構えている嫁達の姿があった。
「あー、ただいま?」
『おかえりなさい!』
「……もしかして、それなりに時間経ってた?」
「2時間程かかりました」
「心配しましたわっ」
「エスの時は20分くらいだったのにね」
「取得したスキルや能力によって進化に時間がかかるのでしょうか」
「そういう意味では、他の皆はショウタ君より長引くことはまず無さそうよね」
「ん。それでショウタ、ステータスはどうなった?」
「あー、ちょっと待ってな」
*****
名前:天地 翔太
種族:ハイ・ヒューマン
年齢:21
レベル:93
腕力:46154(+45962)
器用:46160(+45966)
頑丈:46146(+45950)
俊敏:45847(+45655)
魔力:45914(+45726)
知力:45990(+45802)
運:67104
*****
エスと同じ『ハイ・ヒューマン』か。……ってことは、レベルに関係なくこのスキル2つを持った状態で10万消費すれば、誰でも『ハイ・ヒューマン』になれるってことになるのかな?
俺だけやたらと時間がかかった理由がちょっと気にはなるが、特に調子が悪いなんてこともないし、まあいいか。それよりも、成長値が今までの俺とやっぱり違うな。
「……あー、なるほどな。レベル1の時から今のレベルに至るまでのレベルアップ成長値が2倍になって計算されてるみたいだ。けど、SPはそのままみたいだな」
「なるほどね」
「じゃあ、ショウタ君は今、レベル1ごとの成長値が全部+1から全部+2に上がったって事?」
「そうなるな。ここまで来ると微々たる差だが」
ガチャを得る前ならこの変化には泣いて喜んだだろうが、今だと別に何の感情も湧かないな。てか、新種族に進化しても1レベルごとの成長値はたったの+2とか、俺のコレも筋金入りというか、もはや呪いだよな。
さて、それはともかくこれでエスの成長値が大体わかって来たぞ。まずエスの初期値だが……。
腕力:4
器用:4
頑丈:4
俊敏:10
魔力:8
知力:8
運:5
こんなんだったはず。
次に最初のエスの1レベルごとの成長値は……。
腕力:+4
器用:+3
頑丈:+3
俊敏:+5
魔力:+4
知力:+3
SP:+8
こうだったな。で、それが途中から『風』を得た事でここから『腕力』『器用』『頑丈』が2倍、『俊敏』が3倍、『魔力』『知力』『SP』が4倍になって、今回の件でSP以外は更に2倍になったわけだ。
そしてSPは『魔力』と『知力』に半々自動割り振りだったはず。
「ってことでまとめると、エスの1レベルごとの成長値は『腕力』が16、『器用』が12、『頑丈』が12、『俊敏』が30、『魔力』が32、『知力』が24。そしてSP割り振りで1レベルごとに『魔力』と『知力』が16上昇するわけだ」
「ん。ステータスお化けの誕生」
「あはは」
「で、その全てがレベル1の時から再計算される事になりレベル1141となった今、『魔力』は8+(32×1140)+(16×1140)で54728になってる訳だ」
「そういうことだったのか。なら、僕だけじゃなくミスティやクリス、シャルも同じ様な感じになるんだね」
「そうなるな」
まあでもその為には、200消費の『スキル生成』を1人当たり2回ずつ使わなきゃならん訳だが。
「流石に雑魚精霊じゃ200まで上げるのは厳しすぎるし、何よりも全員の戦力が落ちてる状況でこれ以上の狩りは続けられない。という訳で、スキル稼ぎは今日をもって一時中断だな」
『丁度よかったじゃない。マスター、辞めどきを探してたし』
「だな」
皆も口には出さなかったけど、飽きてきていたはずだ。中断理由が強くなった結果加減しなきゃ生きられなくなったってのが、なんともな話ではあるが。
「んじゃ、用事も済んだし帰るかー。皆で片付けして、アズのマップスキルで帰ろうか」
『はーいマスター♪』
「ああ兄さん、ちょっと待って。忘れ物があるよ」
「ん?」
「フリッツがまだ戻ってない」
「ああ……」
完全に忘れてたな。てかあいつ、今どこにいるんだ?
そう思ってマップを起動させてみれば、高レベルの精霊ゾーンでハイブリッド精霊と戯れていた。苦戦は……してないみたいだが、それなりの数に囲まれてはいるみたいだな。でもその表情はめちゃくちゃ楽しそうだ。
「エス、要らんとは思うが、救助に行ってやってくれ」
「了解した。すぐに連れてくるよ」
「他の皆は片付け優先で良いよ。今のエスなら心配はいらないだろうし」
そう言ってワープゲートに突入するエスを見送ると、腕をツンツンと突かれた。
『ゴー、ゴゴ』
『ププルプル』
「あ、消化終わったのか?」
『ゴー』
『プルー』
「はは、忘れてた訳じゃないって。時間がかかるから、経過観察は家でしようかなって思ってただけだ」
『ゴー?』
『プルンプルン』
ほんとだぞ?
とにかく、フリッツが戻るまでまだ時間はかかるだろうし、エンキにはスキルを与えつつ、強くなった彼らの状況を確認しようかね。
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