ガチャ864回目:余韻に浸る
「は~……」
『696ダンジョン』第四層・中央島。都会の中心にできた憩いの公園を思わせるその場所には、中央に噴水があり、それを囲い込むようにして俺たちの拠点が設置されていた。
そんな場所で俺はというと、拠点の中ではなく噴水近くの草地で寝転がっていた。他の面々も拠点ではなく俺の近くで休む事を選んだらしく、ここにいないのは探求心の尽きないフリッツくらいのものだ。まあ、俺らが苦しんだ内容の詳細も気になってはいたみたいだが、優先度は低いらしいな。
「アイラ、お腹に影響はありそうか?」
「今のところ問題があるようには思えません。痛みといっても、ご主人様程のものではありませんでしたから」
そう。血反吐を吐いて激痛でうずくまった俺に対し、他の面々は耐え難い鈍痛こそ発生したものの、血が滲むような内傷までは発生しなかったようなのだ。
「問題ないにせよ、サクヤさんの確認については、アイラに任せて悪かったな」
「いえ、適材適所です。お気になさらず」
一番的確で一番スムーズにサクヤさんに連絡ができる人員としてアイラは外せないとはいえ、妊娠期間の長い彼女に頼むのは、あまり褒められたものではなかった。アイラはこう言ってるが、彼女は直前にダメージを受けていたし、咄嗟に頼る相手としてはダメダメだろう。反省。
「にしてもまさか、1000レベル突破にこんな罠が潜んでいようとはな」
『ごめんなさいマスター。こんなことになるとは思わなくって』
「アズも気にするな。人間がその域に達するのは前代未聞だったんだろ? なら、その事でお前を責めたりしないって」
『マスター♪』
とびついてくるアズを宥めつつ、疑問に思った事を口にする。
「けど、そっちの世界で人間が1000を超える事はなくても、アズ達みたいに1000を突破する亜人種はそれなりにいるんだろ? こういうことは一切ないのか?」
『一切ないというか、1000を超える為の下地の準備があるのよ。人間にはそういう機能が無いから、無くても問題ないのかと思っちゃってたわ』
「下地? ……というと、魔石か!?」
『せいかーい♪』
『さすがマスター様♡』
ああ、そうだ。なんで今まで思いつかなかったんだ。魔石の大きさで、強さの上限値が変わるんだ。イリスもそうだし、モル君だってそうだったじゃないか……!
「ん? じゃあキュビラやイクサバは平気なのか? 魔石のサイズ、極大と特大だったはずだが」
『ご心配には及びません。レベルアップの際、魔石は向こうと同じく成長しましたから』
『我も同じく、向こうにいた頃と同じ魔石を手に入れましたぞ』
「ほう、どれどれ」
*****
名前:九尾の智将・キュビラ(テイム済)
レベル:1100
腕力:10000
器用:10000
頑丈:9000
俊敏:9200
魔力:26000
知力:34000
運:なし
装備:緋蓮の神衣、舞姫の短刀、真愛のネックレス、真愛の指輪
魔狐石:キュビラ
称号:タマモ親衛隊総指揮官、楔から解き放たれた者
*****
*****
名前:イクサバ(テイム済)
レベル:1100
腕力:15500
器用:15500
頑丈:14500
俊敏:9200
魔力:8300
知力:2200
運:なし
装備:妖刀 獄炎蝶、緋威獅子不朽の大鎧、緋威獅子不朽の兜
魔武石:イクサバ
称号:秘伝の継承者、楔から解き放たれた者
*****
ほぉー。
こりゃまた、馬鹿みたいに強くなっちゃってまあ。2人してこんなレベルになったのなら、アズやタマモも同じく1100レベルなんだろうな。
ちなみに『真愛のネックレス』と『真愛の指輪』だが、サクヤさんに渡す直前、必要性は薄いだろうけどアズとキュビラにも渡してあった。別にこれは仲間の証とかそういうのとはまた違うのだが、皆と同じ物を身につけたいだろうし、期待値が薄いという理由だけで彼女達にだけ渡さないというのも酷だと思ったからだ。
ちなみにタマモに渡したのも、仲間はずれ感が出てしまうのを避けるためである。あとイクサバはイズミのペット枠であるため、絶対的に必要ではないのなら要らないそうだ。
……にしても、レベルの上がり幅が随分と大人しめだな。あんなレベルの相手だったから、今までの流れで言えば1250レベルくらいはいきそうなものなのに。
それだけ、4桁台のレベルが上がりにくいって事なのかもな。俺のレベルも、ギリギリ1200を超えたくらいだったし。
「んー……。なあ、気になる事があるんだが、モンスターは強くなれば、無条件で適正の魔石に進化するもんなのか? それとも、一部だけ?」
『モル先輩やイリス先輩の事を言ってるのよね。答えは後者寄りだけど、才能とかそういうものでもないのよ』
「ふむ?」
『まず、マスターも知っての通りあたしやタマモは、特殊魔石を持ってこの世界に現界したから、特に変化はないわ』
「そうだな」
『そしてキュビラやイクサバは、向こうの世界で既に1度成った事があるから、すんなりと条件を満たしたタイミングで変化したの』
「なるほど?」
魔石の進化に条件はあれど、とりあえず元の世界で進化経験があれば、そこに戻る事自体は割と条件が緩いのか。その条件がレベルかステータスかは分からないけど、1000超えが特殊枠扱いされている現状、ほぼほぼレベルが条件な気がするけど。
そして恐らく、キュビラはダンジョン内で一度1000になってはいたけど、あれはアイテムによるブースト効果で、本人のレベルそのものが上昇したわけじゃないから魔石は変化しなかったとかかな。
「じゃあ、モル君やイリスは……」
『モル先輩の場合は、単純に向こうでは普通の野良モンスターだった可能性が高いわ。だから魔石が進化した経験なんてないだろうし、本来通りの方法を用いなければ成長することはないと思うの』
「ほう」
その本来の方法も気にはなるが、今は置いておこう。
『イリス先輩は、存在そのものがイレギュラーよ。――ザザザザザザザザ――』
相変わらず情報制限が掛かってるが、まあイリスだしな。それだけで納得はできる。
しかめっ面をしているアズを宥めつつ、イリスを呼ぶ。
「イリス、おいで」
『プル!』
懐から『極大魔煌石』を取り出す。『魔煌石』も通常の魔石も、サイズで言えば中は中、大は大で同じサイズだったりする。その中でも一際でかいのが極大なのだが、このサイズはやはり何度見ても圧倒される。
なにせ、縦80センチ、横10センチほどの巨大クリスタルなのだから。
「ほら、『極大魔煌石』だぞー」
『プル!!』
そんな極大の魔煌石を、イリスは大喜びで飲み込み始める。んじゃお次は……。
「エンキー」
『ゴー!』
「『大精霊の真核【土】』だ。ゆっくり取り込むんだぞー」
『ゴゴ』
残る『大精霊』のドロップで処理すべきは『結界破壊Ⅴ』とランダムボックスくらいかな。前者は一旦置いとくとして、宝箱はなぁ。『聖印』なんて当然いらんし、『親和結晶』を出しても使うアテがな。フリッツにタダであげるのはなんか癪だし。でもまあ、有用性で言えば『親和結晶』の方が上だから、とりあえずこいつを選択しておくか。
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