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無料ガチャ055回目:アキとマキの放送チャンネル04

「皆、お待たせー!」

「不定期姉妹配信のお時間ですっ!」


 アキとマキの宣言と同時に、沢山のコメントが怒涛の勢いで流れていく。


「みんなありがとー!」

「ご視聴いただきありがとうございますっ」


『うおおお!』

『2人とも可愛いー!』

『妊婦とは思えない圧倒的可愛さ……!』

『今日のゲストは誰だろ?』

『新情報ってなんですかー!?』

『関西の最難関を終わらせたばかりなのに、もう新情報かよww』

『さすがレアモンハンターさん。話題に事欠かないな!』


「んふふー。皆も新情報がきになるみたいねー。けど、その前に――」

「ゲストの紹介をしますねっ」

「イクサバ、来なさい」


 イクサバが画面外から歩いてやってきて、2人の後ろに立つ。その威風と存在感は、カメラ越しだろうと視聴者にはしっかりと届いたらしい。()()()()()()()、コメントの流れが緩まった。


『うおおおお、イクサバだー!!』

『やっぱカッケエエエエ!!』

『緋色の甲冑の美しさよ!』

『でっか……! 姉妹が座ってるとはいえ、やべえサイズ差だな』

『ってことは、今日の新情報はイクサバ関連?』

『イクサバ関連となれば、妖怪関係か?』

『あそこはもう記者会見の時に情報伝達されたのが全てだと思うけどな~』

『攻略済みダンジョンの小ネタなら、わざわざ新情報と銘打って告知したりはしないだろ』

『いったいどんな情報なんだー!?』


「イクサバ、皆さんに挨拶を」

『はっ。……我はイクサバ、主君の命に応じこの場に馳せ参じた』

「もう、それだけ? イクサバは相変わらずね~。……ま、コメントは大盛り上がりだけど」

「ふふ、そうだね姉さん」


 イクサバが興味を示すものは仕えた主君に関するものと、自身の糧となり成長するための修練と、血沸き肉躍る戦いくらい。一応ショウタさんの妻って事で、私達にもある程度の敬意は見せているけど、そこまで興味もないみたい。『毛髪成長』の時でさえ、誰もが髪型を変えて楽しんだり、ショウタさんに魅せようと盛り上がっていたのに、彼は一切その場から動かなかった。

 興味がないなら与えられた自室に戻ることもできたはずなのに、それでもショウタさんの近くから離れようとはしなかった。最初は気難しい人なのかとも思っていたけど、先日のカスミちゃん達との戦いを見る限り、ショウタさんじゃなければ話が通じないって訳でもないみたい。


「それでは早速ですが、情報公開をしたいと思いますっ」

「その前に、今から流す映像をよーく見てね!」



◇◇◇◇◇◇◇◇



『うはは、すげー映像だった』

『興奮冷めやらぬとは正にこのことだな』

『モニターにかじりつくほどの映像なんて久々だ!』

『まさかイクサバと、噂の第二チームとの戦いが見られるなんてな』

『レベルが高すぎて目で追えない攻撃が何度もあったが、あんな戦いができるならダンジョン攻略できちまうのも納得だ』

『普通の人間にも知覚できるようにするには、スロー再生の倍率をどれくらい上げれば良いんだろうなw』

『てか、なんで彼女達が戦ってたんだ? イクサバを捕まえたのはレアモンハンターさんのはずだろ?』

『確かに、あの時妖怪を攻め入ってたのはレアモンハンターさんのチームで、彼女達は先日攻略通知が来ていた琵琶湖に行ってたはずだよな』

『それに、彼女達の動きに感動しちまったが、よくよく思い返せば互いに傷ひとつついてなかったよな』

『言われてみればそうだな。致命傷になりかねない痛打を受けても、イクサバには傷一つなかった』

『妹ちゃんチームは例の黄金のスキルがあるから問題ないとしても、イクサバがそれだけ強くて硬いってことなのか?』

『なら避けたりガードしたり受け流す必要はないだろ』


「んふふー、皆盛り上がってるわね」

「ふふ。みなさん、動画はどうでしたか? 楽しんでもらえましたか?」


 姉妹の言葉を受け、視聴者はさらなる盛り上がりを見せ、コメント欄の流れはアズ登場時と遜色ない勢いで流れ始めた。


『我の試練を娯楽に変えるとは、流石は我が主君であるな』


 そしてその流れは、イクサバの発言を受けてさらなる盛り上がりを見せた。姉妹ですら目で追うのがやっとなほどに。


「ちょちょちょ、皆落ち着いてー!」

「今からあの動画についてお伝えしますから、1度深呼吸してくださいっ」


 マキの声がけにより、視聴者達は我に返り冷静さを取り戻した。そこでワンクッションを置き、マキは動画の真相を語り始める。


「まずあの動画の背景は、第二チームの攻撃能力を危惧したショウタさんが、イクサバをメンバーに入れてみてはどうかという案から始まりました」

「でもイクサバって、言うまでもなくこういう奴でしょ? だから、あの子達に試練を課すことにしたの」

『我と共に戦うのであれば、それ相応の力を持つ必要がある。主君こそ、我が刀を捧げるに相応しい人物であることに間違いはないが、あのお方の周りには既に錚々たる顔ぶれが揃っておる。戦略的な穴などはなく、個として見ても突出した傑物達の集まり。我が役立てる場面など、ほぼ無いに等しい』


 戦いの映像を見た者達は、自分では役に立てないと自嘲しているイクサバの言葉に驚きを隠せないでいた。あれほどの実力者が、役に立てないなどどれほどの技量が第一チームに求められているのだと。

 だがその実態はショウタのワンマンチームであり、サポートするのはいつだって彼が戦う為の場を整えるときであり、指示通り的確に動くのであれば魔法やスキルに長けていなければならない。だがイクサバに扱えるのはその刀をもって敵をねじ伏せる事のみ。そんな力の活用法しか知らない為、それを捻じ曲げるのは信念に反するし、半端な力ではショウタの役には立てない。そう判断しての言葉ではあったが、視聴者には伝わるはずもなく、ただただ憶測が飛び交うのだった。


「そこで、彼女達の実力を見る為に戦いを行う事にしたの。それがあの動画ね」

「結果は……動画を最後まで視られた視聴者さん達ならわかると思います」


 視聴者達の興奮は再び高まっていき、ほとんどの者がイクサバを応援する為のメッセージを書き込んだ。それを受けイクサバは満更でもない様子だったが、恥ずかしかったのか先を促すために話を続けた。


『此度の催し。どこで行ったのか勘付いた者もいるであろう』

「確かに、映像を流している時にコメントでも気付いた人がいたわねー」

「では改めて、今回の放送でお伝えする予定だった新発表をここでお伝えしますっ!」

「まず、あの戦いが行われたのは『バトルアリーナ』よ。ただし、普段の会場とは違って、第二層で行ったの」

「そして第二層で行われるのは冒険者vsモンスターではありません。絶対に死なずに腕試しができる、冒険者vs冒険者専用のバトルフィールドですっ!」

「個人対個人もできるし、チーム対チームだってできるわ。なんだったら、Aランク帯でトーナメントしてもいいかもねー」


 日本国内のダンジョンが次々と平定されて行く現状、近い将来魔石の需要が上がっても、冒険者という存在は必ずしも必要な存在ではなくなってくる。そうなった時の受け皿の1つとして使えるのではないかというサクヤからの打診もあり、『バトルアリーナ』第二層の開催は、ここで大々的に告知されたのだった。

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