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ガチャ857回目:試運転と試練

『ゴゴゴー!』

『プルルル!』


 巨大化した2人が、鉄の腕と粘体の腕で取っ組み合い、力くらべを開始した。最初は物理面での戦いか。

 スキルで言えばイリスの方が豊富だが、戦闘スタイルは物理と魔法のバランス型であり、エンキは物理特化型だ。わざわざエンキに合わせて人の腕の形を再現してまで力比べをしている以上、踏ん張りが利かないイリスが不利だろうか。


『ゴゴ!』

『プル!』


 ただの力くらべのはずなのに、彼らを中心に空気は重くなり、目に見えない圧力が放たれる。普段は仲良しの2人だが、戦いとなると負けん気に火がついたみたいだな。彼らのファンには子供が多いから、コレを見たら泣いちゃうかもしれん。

 ……いや、ヒーローショーよろしく、どっちも応援されるかもな?

 そんなこんなで2、3分ほどせめぎ合っていたが、コレでは埒があかない。現時点でエンキの方が若干優勢だし、終わらせないとな。


「おーい、その辺にしとかないと、10分経っちまうぞー」

『『!!』』


 2人は本当に熱中していたらしく、ハッとなって取っ組み合いをやめた。


『ゴ? ゴゴ?』

「残り6分30秒だ」

『ププルプル!』


 イリスが素直に負けを認め、次の戦いへのシフトを提案する。


「あー、始める前に、軽く一発ずつ相手の身体の端っこに攻撃を入れてくれるか? ダメージの無効化がちゃんと機能しているのかを見ておきたい」

『ゴゴー』

『プル~ン』


 2人が返事をすると同時に2メートルを超える巨岩と水塊が現れた。……軽くって言ったのに。

 けど2人はそんな俺の心配をよそに、それぞれの核から一番遠い部位に激突させた。しかし、その攻撃は身体に接触すると同時に砕け散った。相手にダメージを与える事無く、衝撃の余波すらほとんど与えずに消失。激突の瞬間ほんのりと障壁が知覚できたし、ちゃんと機能しているようだな。

 これが、今回の『バトルアリーナ』第二層における目玉機能である、攻撃完全無効化だ。これは『戦場形成』の能力だけでは達成できなかったが、俺には一定ダメージまで完全に無効化する『超防壁X』と、あらゆる攻撃を一定回数無効化し、なおかつ一定時間無敵化を施す『金剛外装Ⅴ』がある。これら2つの能力も混ぜ合わせる事で、なんとか実現させる事に成功した。


『ゴ! ゴ!』

『プルル~!』

「おう、始めて良いぞー」


 何の痛みも無かった事を報告してくれたので、俺はようやく彼らに許可を出した。すると即座に2人は巨岩や水塊、ロケットパンチや触手などを使って攻撃を始めた。痛みは感じないながらも、衝撃はしっかりと感じているようだし、ちゃんと回避もしてるみたいだから変なクセがつく心配はいらなさそうだな。


『ポポ』

『~♪』

「ん? エンリルとセレンもやりたいのか?」

『ポッポポ!』

『~~♪♪』


 あー……。まあ、この2人も『風』と『水』を得たは良いものの、活躍の機会がほっとんどなかったからな。そんな中でエンキとイリスの戦いを見せられて、くすぶっていた闘志に火が付いたって感じか。

 そんなつもりはなかったが、この階層はうちの子達の良いガス抜きになるかもしれないな。……ガス抜き兼、トーナメントを開いて4人のガチンコバトルを観客呼んで大々的に開くのも有りかもな? 今はステータス面ではイリスの一強だけど、『風』と『水』持ちのエンリルやセレンも負けていないし、『土』はまだ持っていなくてもエンキはこの中で一番戦闘経験が豊富だ。

 普通にそれだけで集客効果がえぐいことになるかも……。うん、あとで嫁達に相談だな。


「わかった。じゃあ、向こうのフィールドでやっていいぞ」

『ポ!』

『♪♪』

「ちなみにアグニはやらなくていいのか?」

『キュイ~』


 アグニは俺の首元に巻き付いて甘えてくる。

 末っ子のアグニは、戦うより甘える方が大事らしい。


「まったく、誰に似たんだか」

「お兄ちゃんでしょ」

「お兄様ですね」

「兄上でしょう」

「お兄さんでしょー」

「お兄様ですわね」

「お兄様でしょ☆」

「……」


 一斉に言わなくたっていいじゃん。



◇◇◇◇◇◇◇◇



 エンリルとセレンのフィールドでも同様の設定でバトルを開始させ、そのまま俺達は妹達と一緒にイクサバの待つバトルフィールドに向かった。


『おお、主君。調整は終わったのですかな?』

「ああ、問題なく稼働しているよ。あっちでエンキvsイリス、エンリルvsセレンで遊んでる」

『ふむ。兄者達の戦いは気になる所ではありますが、先約がありますゆえ、そちらを優先せねば』

「だな。イクサバの準備は……万端のようだな」

『然り』


 イクサバの言葉に頷き、後ろにいる妹達の様子を見る。緊張はしているが、気負い過ぎるようなことはないようだった。


「いけるか?」

「うん!」

「いつでもいけます」

「イクサバ殿、胸をお借りします!」

「やっちゃうぞー!」

「お兄様が見守っていてくださる以上、無様な結果にはさせませんわ」

「お兄様、応援よろしくー☆」

「ああ、行ってこい!」


【対戦者設定:6対1】

【勝敗設定:生き残った側の勝利】

【制限時間:20分】

【痛覚遮断:中】

【肉体損傷:無】

【戦闘不能判定:致命傷10回】

【ギブアップ:有】

【有効打表示:有】

【有効打カウント:有】

【必要魔石:極大1個】


「それじゃ……試合開始!」

『いざ、尋常に……勝負!』

「「「「「「『金剛外装』!」」」」」」


 そうして、カスミ達の試練が始まった。

読者の皆様へ


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