ガチャ853回目:恒例のアイテム整理⑤
5冊纏めて置いてあった『五輪の書』は、光り輝きながら1冊の書物へと変化し、圧倒的なオーラを纏いながら、その存在を周囲に垂れ流していた。
その存在は、近くでイメチェンで盛り上がっていた彼女達だけでなく、部屋で休んでいた嫁達もすっ飛んでくるほどだった。
「どれどれ……」
名前:武技スキル指南書・五輪
品格:≪幻想≫ファンタズマ
種別:アーティファクト
説明:五輪の真髄、その全てが綴られた指南書。資格ある者が読むと、独自の武技スキルを獲得できるとされる。使用しても無くならない。
「これはまた、とんでもないものが出来上がったな」
「やはり、ご主人様の考えに間違いなどありませんでしたね」
「そりゃどうも。それにしても、今回は武技スキルだから上手くいったんだとは思うが、まさかアイテムも対象になってしまうとはな……。本当に『スキル進化』のキャパは底が知れないな」
そう話していると、先ほどまで我関せずとなっていたイクサバが、興奮した様子で膝を突いた。
『おお、主君! 『五輪の書』の解読に成功されたのですな!』
「ん? 解読?」
『そうであります。『五輪の書』が指南書へと姿を変えるという事は、全五巻なる内容を全て把握し、謎を解き明かしたということに他なりませぬ』
「あー……」
てことは、本来はあの読めない言語で記された内容を理解し、解き明かす……。つまり、何らかのキーワードを唱える事で真の姿を取り戻すとか、そういうタイプだったということか。
『しかし妙ですな。我が知る限り、『五輪の書』は一度使用すれば消費される物だったはずですが……。まさか主君は、誰も成し遂げたことのない、真の意味での解読に成功されたということでありますか!?』
「いや、ズルしただけだよ」
解読の仕方によっては本当にこの消費無しのヤバいアーティファクトに派生したのかもしれんが、今となっては確かめようもないし、ぶっちゃけアレを解読できる気がしない。
あの文字列、異世界の言語っていうよりかは、解読させる気がない意味のない羅列にしか感じなかったしな。パズルとして成立していない問題を解くのは気が滅入る。
「とりあえず、読んでみるか」
とは言ったものの、やっぱりこっちも何書いているかは分からない言語のままだったが、目を通していくうちに、自然と闘いの知識のようなものが流れ込んできた。この知識は、言葉では言い表せないが……このまま読み進めていけば何か得られるはずだ。
そうしてじっくり読み進めること十数分。最後の最後まで読み終えると、目の前にメッセージが出現した。
【五輪の真髄に触れました】
【あなたに相応しいスキルが生成されます】
【エクストラ武技スキル:戦乱波濤を取得しました】
「エクストラ武技スキルって、何だ??」
『おお、おめでとうございますぞ、主君! エクストラ武技スキルは、我で言うところの『火の秘伝』に当たりますぞ』
「ほぉ。ってことは、一式やら二式やら、このスキルに全部備わってるわけか」
『然り。ですが、最初から全てが扱えるわけではありませぬ。スキルを使い続け、腕を磨き技への理解を深める事で、扱える技の数が増えていくのです』
「なるほどな」
そういや、イクサバも出現時と本気モードとでは、『火の秘伝』のスキルレベルがⅢからⅤに変化してたな。それも、弱体化したことで本人の強さが変わってはいたけど、技への理解度は十分あったからスキルもそれに合わせて変化したと言うことか。
……ん? てことはつまり……。
「イクサバ、今の『火の秘伝』は幾つだ?」
『Ⅷでありますな!』
「おおう」
でもⅧか。レベル800を越えてるんだし、スキルレベルもⅨとかⅩあっても良いもんだが……。もしかして、愛刀の全力を発揮できる下地が整っていないから、それ以上成長しないとかあるかな。
……ありそうだなぁ。
「とりあえず、剣や刀を使えるなら何かしら覚える可能性があるだろうし、各自時間のある時に読んでおくように。もちろん、イクサバもな」
『宜しいのですか?』
「無くならないんだから遠慮するなって」
『感謝致しまする。しかし、我では収穫がないやもしれませぬな』
「そうなのか?」
『この『火の秘伝』は、以前に『五輪の書』を読んで獲得したスキルであります故』
「ほほう?」
どうりで詳しいわけだ。イクサバは向こうで、『五輪の書』を解読したんだな。
「まあ、それでも損はないから読んでおけ。アイラも、短剣だけど効果あるかもしれないし読んでおいてくれ」
「畏まりました。ではご主人様、次はこちらになります」
「ああ、大量にあるコレね」
お次は、嘆きの甲冑を倒しまくって手に入れた嘆きの鉄屑だ。魔鉄として利用できるならこの量は市場でも歓迎されるんだろうけど、いかんせんこの嫌な空気感はな……。
名前:嘆きの鉄屑
品格:≪希少≫レア
種別:アイテム
説明:嘆きの甲冑から剥がれ落ちた鉄屑。元は魔鉄製の防具であったが、幾つもの戦場を渡り歩いて来た結果、原型を留めていない。また、戦場に長く留まったことで、そこに漂う悲嘆と嘆きが滲み出るようになってしまった。
「アウトだな」
「アウトですね」
「けどまあ、こう言うのには大抵コレが効果覿面だろ。……浄化!」
光が鉄屑を包み込む。すると、光に洗われるように鉄屑は磨き上げられ、本来の輝きを取り戻し始めた。
名前:希望の鉄屑
品格:≪最高≫エピック
種別:アイテム
説明:かつての希望を取り戻した鉄屑。本来の魔鉄よりも強度と柔軟性が向上しており、装備品に加工した際にはステータスボーナスが得られる可能性がある。
「おー」
上等な感じの魔鉄に変化したな。これはまあ需要がありそうではあるが、浄化という工程を挟む必要があるから、現状この国では俺とマリーでないと対処できんぞ。
まあでも、一箇所にまとめてもらって、月一とかそんな間隔で処理をするくらいなら、大した手間でもないか。試供品というかサンプルを第一と第二の協会、それから研究室にいくつか送って、様子見だな。
「アイラ、全部出して」
「畏まりました」
「ちなみにマリーは出掛けてたっけ?」
「新酒のお披露目会があるとかで、出掛けておいでです」
「あらま」
マリーの浄化と比べれば質では劣るけど、数はこなせるからな。数百キロを軽く越える量の鉄屑がリビングの一角に積み上げられたが、頑張って浄化しまくるのだった。
「ふー、終わった~」
「ご苦労様です」
……さて、残るアイテムは3つと、宝箱が5つだな。
読者の皆様へ
この作品が、面白かった!続きが気になる!と思っていただけた方は、
ブックマーク登録や、下にある☆☆☆☆☆を★★★★★へと評価して下さると励みになります。
よろしくお願いします!










