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ガチャ847回目:ペットの移譲手続き

「それじゃ早速、タマモの権限をサクヤさんに移譲するか。……やり方は知らないけど」

「それならもう検証済みよ。受け渡したいテイムモンスターに互いに触れながら、所持者が移譲先に渡すと宣言をするの。移譲先が問題なくスキルを保持していれば、トラブルなく移し替える事ができるわ」

「さすがサクヤさん」


 恐らく、最初に持ち帰ったいくつかの『テイム』スキルを使って、研究所が実験をしてくれていたんだろう。

 タマモを手招きし、俺とサクヤさんで彼女の手を片方ずつ握った。


「俺は個体名タマモの権限を、サクヤさんに移譲する」


 サクヤさんの目の前にウィンドウが出現した。


【個体名タマモの権限を受け取りますか?】


「受け取るわ」


 サクヤさんが宣言をすると、俺の中にあったタマモとの繋がりが薄まるのを感じた。逆にタマモとサクヤさんの方には、別の繋がりを感じさせる何かが浮かんだんだろう。2人して自分の身体を見回している。

 それにしても、繋がりが途切れるわけじゃないんだな。時間と共に消えるのか、それとも残り続けるのか……?


「これからお願いするわね、タマモ」

『うむ。こちらこそよろしく頼むのじゃ!』

「ふふ、『テイム』自体初めてだけれど、この繋がっている感覚は分かるわ。10年も一緒だったものね」


 そう言ってサクヤさんは改めてタマモに手を伸ばし、タマモもそれを受け入れ互いに熱い握手を交わした。

 その後、サクヤさんとタマモ、それからキュビラとアイラが中心となって、今後の狐族達の処遇というか、働き口が詰められていく。彼女達の間でその展望について盛り上がりを見せる中、俺は狐巫女メイドの話が通ってからはただぼーっと眺める事にした。特に案があるわけじゃ無かったしな。

 そうして話し合いにひと段落がついた段階で、サクヤさんの興味が俺へと移る。


「ねえショウ君、タマモの持っている『スキル強制』のスキルをコピーしたのよね? これをどうするつもりなのかしら」

「それを話すには、まず根幹となるアイテムの説明からする必要がありますね。アイラ、分解機と強化機を」

「はい。奥様、こちらになります」


 そうしてアイラが2つのアイテムについて説明をした。


「なるほど。あの『テイムⅩ』もこれで用意してくれたのね」

「そういう事ですね」

『な、なんなのじゃこれは!?』

『凄いですマスター様♡』

「今のショウ君なら、スキルを大量に生産できるはずなのに、市場に流れる量はそれほど多く無かったから不思議ではあったの。けど、これでまた1つ謎が解けたわ」

「あはは。何万個ものスキルをドバッと流すわけにもいかないので、助かってます」


 やっぱ、流通とかその辺の調整をしている事くらい、サクヤさんにはお見通しだったか。


「ショウ君、コレもアレから?」

「ええ。んじゃせっかくだし、キュビラ、タマモ。俺の根幹スキルを伝えるぞ。コレは他の弟妹達にも内緒だ。必要があれば俺が話すから」

『承知したのじゃ』

『はい。畏まりました』


 そうしてガチャの説明をしたのだが、2人は驚きよりも別の感情が顔を出していた。タマモは頭を抱え、キュビラはいつも通り尊敬と恋慕の感情だ。

 うん、ほんと狐族はチョロすぎて心配になるな。

 そういう意味では接客業とか本当に向いてないような気もするけど、この人懐っこさを捨てるのは勿体無いしなぁ。まあでも、キュビラが一際チョロいだけかもしれないし、ひとまずは様子見か。


『ザザザザザ――なんというものを作りおったのじゃ』

『ホントよねー』


 タマモが何かを愚痴り、アズがうんうんと頷いている。雰囲気からして、製作者を非難してるのかな?

 まあ俺としてはガチャの存在には感謝でしかないんだが。作ったのは800にいるダンジョンボスか、それともダンジョンそのものを作った者か……いつか会えるのかな。


「それでショウ君は、コレを使って『スキル強制』のレベルを上げようとしているのね」

「そゆことです。ただ、過去に類を見ない『幻想(ファンタズマ)』のスキル強化ですから、必要ポイントは予想がつきませんが……」

「そもそも、成長できるんですの?」

「そうなんだよな、まだセットしてないから分からん。『直感』はイケると踏んでるんだが」

「それなら大丈夫に決まってるわ。お兄様、早く確認しましょ☆」

「おう」


 『スキル強制』のスキルを機器にセッティングすると、必要ポイントが表示された。


【このスキルの強化には36000ポイントが必要です】

【強化を実行しますか?】


「さ、36000!?」


 ってことは、『幻想(ファンタズマ)』スキルの単価は12000もあるのかよ。『高位伝説(ハイ・レジェンダリー)』で単価が4800もあるってのに、めちゃくちゃ跳ね上がってるじゃないか……。

 まあでも、現実的な数値であるだけマシか。4800の10倍とか数十倍だったら、流石の俺でも心が折れてただろうし。後は『スキル強制』のレベルが10以下であることを祈るばかりか。

 11以上とかになったら、それでもやっぱり心は折れると思う。MAX化に年単位の月日が掛かるぞ。


「ご主人様」

「……ん?」

「ざっと計算しましたが、『スキル強制』の必要強化ポイントが今までと同じ増加方式の場合、掛かる想定ポイントはLv5の場合は144万ポイント。Lv10の場合は7億4793万6000ポイントになります」

「うへぇ……」

「桁違いですわ……」

「ぜ、絶望的ね」


 とんでもない要求値だな。


「先が思いやられるほどの莫大なポイントですし、帰ったら獲得物のチェックをして足しにしましょう。先日のような乱獲日を設けるのもありかもしれません」

「……だな」


 四神が入っていないとはいえ、それなりの数のレアモンスターは倒したわけだしな。新種のスキルもいくつかあったし、宝箱も大量にある。処理には時間が掛かりそうだが、余ったスキルはポイントに還元すればいいんだし、頑張るしかないな。


『ねえマスター、この前の乱獲であたしとマスター、それからSランク5人の成果を合わせれば、大体1日に7000万ほどポイントを稼げたのよね。となると、最低でも10日間籠ればなんとかなるんじゃないかしら?』

「あれは2日間の短期間で集中的に狩りをしたからできた成果であって、連続して実行したら間違いなくパフォーマンスは落ちるぞ」

『そうかもだけど~。マスターは、特に急いでないの?』

「あ、そうよね。お兄様、結局『スキル強制』を成長させて、何に使うつもりなの?」

「ああ、そうだな。それの説明をするか」


 そうして俺は、計画していたスキルの使い道を説明し始めた。

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