ガチャ846回目:歓迎パーティー
自宅に帰って来た次の日、俺達はサクヤさんに招かれて狐族の子達を含めた全員で宝条院家にやって来ていた。呼ばれた理由はお察しではあるが、表向きの内容は第一エリアの支部長達が狐族を大々的に迎え入れることを示すためのセレモニーのようなものだそうだ。
いくつものバスから降りて来た狐族の子達は目を輝かせながら、俺達と一緒にサクヤさんの屋敷へと入っていく。
「わー!」
「すごーい!」
「普通人のお家って、全部大きいの?」
「ご主人様が凄いんだよー」
「てれびで見たよ。普通人の普通の家は、もっと小さいんだってー」
「ご主人様、ご主人様ー」
「んー?」
「あそこのご飯って、ぼくたち食べて良いの?」
「良いぞ。でもお行儀良くな」
「「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」」
俺の近くにいた子達が元気よく返事をし、後から来る子達に伝達していく。どうやら、流石にパーティー会場だけでは100人の子供達を一度に招き入れることは難しかったらしく、中庭も開放されているらしい。
まあ、この家に招かれて開かれるパーティーもこれで3度目だが、どれも規模は100人から150人程度だったもんな。俺たち以外にも参加者がいる事を思えば、キャパオーバーは必然か。
今回、このパーティーにお呼ばれしているのは各支部長と、前回や前々回見かけたどこぞのお偉いさん達や、『中級ダンジョン』を拠点とする冒険者の中でも上澄扱いされている人達だ。一応確認したが、この中で俺と未接触の人はいないらしい。
さすがサクヤさん、信頼できる人達しかこの場にいないってことだな。それに、彼らを養うことくらいは懐的に余裕はあるけど、やっぱせっかく戸籍や市民権が得られるのなら、自立はさせたいところだ。だからここにいる人達と顔を繋げることは、狐族の子達の未来のために必要なことだろう。
「美味いかの?」
「うん!」
「おいしー!」
「ほっほ、そうかそうか」
「まだまだあるからいっぱい食べるのよ」
「はーい!」
うん、支部長達も彼らの可愛さにメロメロだった。すっかり孫が帰省して来たお爺ちゃんやお婆ちゃんのようになってる。ここには悪さを働く奴はいないし、彼らは子供だけど教育が行き届いている。キュビラの弟妹達の中でも年長組と思われる子達も目を光らせつつ楽しんでいるみたいだし、ここは任せても良さそうかな。
「んじゃ、サクヤさんところに向かうか。アヤネ、アイラ、イズミ、アズ、キュビラ、タマモ。この6人で行こう」
「「「『『『はい』』』」」」
◇◇◇◇◇◇◇◇
屋敷の執事に案内され、俺達はサクヤさんの私室へと入る。そして中には、ドレスを着こなしたサクヤさんが満面の笑みで迎え入れてくれた。
「ショウ君、アヤネ。そして皆さんも。ようこそいらっしゃいました」
「サクヤさん、俺……」
「ふふ、皆まで言わずとも分かっています。……貴女がタマモね?」
『そうなのじゃ』
「……では皆さん、こちらにお座りください」
そうして案内されたのは、社長の応接室なんかにありそうな、机を挟むように設置されたソファーだった。サクヤさんは上座に座り、手前に俺達、奥にタマモとキュビラという配置を想定しているんだろうけど……。
「サクヤさん」
我慢できなかった俺はサクヤさんを手招きする。彼女はそれを受けて嬉しそうにやって来て俺の隣に座ってくれた。反対側には当然アヤネで、親娘サンドイッチの出来上がりである。うん、最高。
「もう、ショウ君ったら」
「えへへ、お母様と一緒ですわ!」
「じゃ、あたしは上座いきまーす☆」
『あたしとアイラは後ろでいいわね』
「ええ、もちろんです」
両隣の華を2人抱きしめていると、心が落ち着くのを感じた。それを眺める狐族代表の2人は、片方は満面の笑みで、もう片方は呆気に取られていた。
「それにしてもご主人様」
「ん?」
「顔に親子丼が食べたいと書いていらっしゃいますね?」
「まあ、書いてるからな」
「書いてるんですの?」
「ふふ、書いているのね」
両隣から顔をペタペタとされる。くすぐったい。
「お兄様ってば節操がないんだからー☆」
『それでこそあたしのマスターね!』
『マスター様は正直なんですね♡』
『……』
空気が和んだところで、サクヤさんは俺にもたれかかりながらタマモと視線を合わせた。
「タマモ」
『はいなのじゃ』
「貴女のして来たこと、そしてそれをしなければならなかった理由、全てアイラから聞き及んでいます。ですが1点、どうしても腑に落ちない点があります。なぜ……私が選ばれたのでしょうか」
『それは簡単な話じゃ。この地に降り立った時、わっちと一番波長の合う人間を調査したのじゃ。美しく聡明で、我が強い反面他人無くして生きられないような人間を。そして第一候補として挙がったのが、サクヤ。お主じゃ』
「なるほど……。そういうことでしたか」
タマモは、裏からこの国を牛耳る上で必要な要素を持ちつつも、時が来れば勝手に壊れてくれそうな、強さと脆さを併せ持った人間を選んだわけだ。ただタマモの誤算は、サクヤさんが脆さを抱えたまま、呪縛を自ら制御し切ったところか。
こう言ったらなんだけど、選ばれたのがサクヤさんで良かった。流石にこれは口が裂けても言えないけど。
「いえ、ショウ君。私も選ばれたのが私で良かったと思っているわ。私でなければ今の日本は無かったと自負しているし、私でなければ成し遂げられなかったと思っているの。傲慢かしら?」
「いえ、俺もサクヤさんでなきゃ、今の状況はないと思っていますよ」
「うふふ、ありがとう」
はー、ほんと綺麗で可愛いなこの人は。
「だけど、タマモ。結果はどうであれ、貴女はこの国を貶めようとした事実は変わらないわ。だから、貴女に罰を与えます」
『どのような罰でも、甘んじて受け入れるのじゃ……』
「良い心がけです。まず聞きたいのだけれど、狐族と妖狐族の寿命に違いはあるのかしら」
『特にないのじゃ』
「そうなの。次に、どのくらい生きられるのかしら」
『最低でも1000年前後は生きると言われておるのじゃ』
「そうなの……」
おー、1000年か。そりゃ凄いな。
となると、やっぱり考えられるのは俺たちが死んだ後だよなぁ。子孫に受け継がせるというのも大変厄介だし。
いや、待てよ? レベルが上がると全盛期の姿を取り戻したり、その状態を維持できたりするが……流石に俺達は寿命による死は訪れるよな?
寿命が馬鹿みたいに伸びたりなんて、しないよな?
俺だって長生きはしたいが、馬鹿みたいに長寿になったりしたら、自然の理から外れすぎるというか……。
「では、貴女に罰を伝えます」
『はいなのじゃ』
「これから私の配下となり、私の治世を側で見て学び、人間と狐族が共存していく道を共に探しましょう。そして私が引退した後は、そのポストをタマモが引き継いでみせなさい」
『……!! わ、分かったのじゃ。頑張るのじゃ!』
おー。そうなったか。丸く収まったかな。
これで後はペット権限を委譲すれば、『傾国の美女EX』の問題も片付くはずだ。
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