ガチャ843回目:4回目の記者会見
電話をかけると、ワンコールもしないうちに相手は電話に出てくれた。
「もしもし、サクヤさん。ショウタです」
『あら、ショウくん。ダンジョン攻略お疲れ様。今日も頑張ったわね』
あー……。脳が蕩けそうになる。
電話越しだからスキルも発動していないし、鼻腔をくすぐる魔性の香りもないし、何より電話による合成音声のはずなのに……この破壊力だ。直接面と向かってこれを言われてたら、多分膝から崩れ落ちてたな。
「ありがとうございます。通達があったのでもうご存知かと思いますけど、件の元凶を『テイム』しましたのでその報告を。それと、事前に共有していた件については大丈夫ですか?」
『ええ。問題なく取得できたわ』
そう。俺はこうなる事を見越して、新たに作成した『テイムⅩ』をアイラを通してサクヤさん宛に送ってもらっていたのだ。これで、タマモの受け渡しが問題なく履行できるはず。
サクヤさんもあの力を駆使して今の立場を築き上げてきたはずだし、恨みはあっても殺しまではしないだろう。なんだかんだでサクヤさん、優しいからな。
それに多分、タマモが死ねばスキル自体失われる気がするし、無茶なことはしないはず。
「それはよかった。では第一エリアに帰還次第引き渡ししますね」
『ええ。貴方に逢えるのを楽しみにしているわ』
ああ、またくらっと来た。
ほんと、魔性だよこの人は。単に俺のドストライクなだけかもしれないけど。
俺は電話を切り、死刑を待つ囚人の様な顔のタマモを見遣る。
「というわけだ。聞こえてただろうし理解もしているだろうが、タマモの受取人は察しの通りだ。今後生きていくために、一番迷惑をかけたあの人には筋を通す様にな」
『はいなのじゃ。精一杯お詫びするのじゃ……』
しょぼしょぼしているタマモを見て、思うところがないわけではないが、これは一応罰なのだ。俺が甘やかしたりしない様我慢しないと。
「ふーん? 変だなーとは思ってたけど、そういうことね」
「ダンジョンから出てきた時から違和感を感じてましたが、ショウタさんが冷たく接する理由はそういう事だったんですね」
「あー……まあそういう事だ。けど、皆にもコレに付き合わせるつもりはないから、そっちは普段通りにしてくれ」
「分かりましたわ」
「仰せのままに」
「んじゃ、ちょろっと休んでから記者会見に臨むかー。あ、キュビラ。軽く打ち合わせするから弟妹達も呼んできてくれ」
『は、はい。マスター様♡』
◇◇◇◇◇◇◇◇
『パチパチパチパチパチパチ!!』
「おおう……」
記者会見の時間になったので会場入りをすると、盛大な拍手で迎えられた。今までも記者達からはそれなりに熱を感じてはいたけど、今回ばかりはレベルが違うな。そりゃ、日本の中でも最難関に数えられるダンジョンのうちの1つを制覇したんだ。
その上、誰にも認識されていなかった未知の001まで。そりゃ、これくらいの熱気は伴うか。
喝采を受けながら、皆で用意された席に座る。ただし、直接『テイム』した3人は俺の後ろに立ってもらう。狐族2人に偉丈夫な武者だ。嫌でも目立つだろう。
ちなみに遠足に付いてきた子達は普通に座っている。姫と種族の代表が立ってるのに座ってくれるかなと心配にはなったが、俺の言うことだからとすんなり聞いてくれた。俺が彼らのご主人様になったとキュビラが彼らに宣言していたが、本当にたったあれだけで俺に従ってくれているのか。
そりゃ、こんなに素直なら数が減る事を危惧されるよ……。
「アマチ様、本日はよろしくお願いします!」
『よろしくお願いします!』
「ああ、よろしくな。……えー、ご存知かと思いますが、No.454と、その背後にひっそりと隠されていたNo.001をクリアして来ました」
『パチパチパチパチ!!!』
手をすっと上げて、拍手を止めさせる。流石に気恥ずかしいからな。
「では、いつも通り進行していきましょうか。最初の方ー」
「はいっ。それではアマチ様、最難関ダンジョンの攻略、本当にお疲れ様でした。かのダンジョンについて質問です――」
そうしていつものように順番に飛んでくる質問を答えつつ、『妖怪ダンジョン』の攻略日程や苦労話や面倒だった点、改築後どうなったかなどを説明していく。その度にキュビラが後ろで反応しているのが面白かった。
そしてそのまま俺の新たなテイムモンスターを紹介していると、俺たちの前に通知が飛んできた。
【ダンジョンNo.379のスタンピード設定が無効化されました】
【ダンジョンNo.026のスタンピード設定が無効化されました】
「お」
No.379は『琵琶湖ダンジョン』で、カスミ達が担当していたところだ。そしてNo.026は、エス達が潜っていた場所で、征服王が潜伏していた場所だな。
俺がこの場にいるにも関わらず同時に2箇所のダンジョンが攻略された事で記者達も色めき立つが、俺が手を挙げて落ち着かせる。
「何も問題ありません。琵琶湖の方はうちの第二パーティ。アメリカの026はうちの第三パーティが攻略しただけですから」
それを聞いて再び始まった質疑応答タイムを乗り越えて、そのまま狐族の子達の話題へと移行。そうして今回もまた、無事に記者会見を乗り切るのだった。
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