ガチャ074回目:しばしのお別れ
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「旦那様~!」
いつもの会議室に入ると、授与式で遠くから見守っていたアヤネが飛びついてきた。
「わたくしも飛び出したかったけれど、我慢したのですわ」
「アヤネは良い子だなー」
「はいですわっ! あ、旦那様。こちらを……」
そう言ってアヤネは、アイラから何かの小箱を受け取り、俺に手渡してきた。
「これは?」
「昨日のお詫びですわ。旦那様の気を引くためとはいえ、付け回してしまって、ごめんなさいなのですわ」
ああ……。そういえばそんな事もあったな。
確かに、俺以外の人にやったら通報されていてもおかしくはなかっただろう。
「俺以外にはするんじゃないぞ」
小箱を受け取り、深々と頭を下げるアヤネの頭を撫でる。
箱の中からは甘い香りがするし、お菓子か何かかな? 複数入ってるみたいだし、あとで皆で食べよう。
「大丈夫ですわ。旦那様以外に好きな人などいませんもの!」
「はは、こやつめ」
ワシャワシャと撫で回していると、意を決したかのようにアヤネは俺から離れた。
「お?」
「旦那様、申し訳ありません。数日の間お暇を頂きたく」
「え? ……俺、何かしちゃった?」
撫で過ぎたか!?
「いえ、アイラの件をお母様に伝えたところ、実家に顔を出さないといけなくなりましたの。代わりに、アイラを置いて行きますので、昨日のように使ってくださいですわ」
良かった。いきなり『実家に帰らせていただきます!』みたいな流れなのかと焦った。
でも、アヤネが抜けるのは手痛いな。完全に彼女の事を戦力の1つと数えていたからな。
「ああ、そうなのか……。アヤネと離れるのは寂しいけど、頑張れよ。もし俺の力が必要になるなら、連絡してくれな?」
「はいですわ!!」
もう1回俺から抱きしめて、頭を撫でる。
何日離れるのか分からないけど、頑張ってほしい。
◇◇◇◇◇◇◇◇
アヤネを見送った俺達は、改めて昨日起きた話を始めた。
「まず、ショウタさんが一番気にしているところからお伝えしますね。昨日の総売り上げは約10億です。 『綿毛虫の玉糸』330個、1150万。『迅速』1個、7000万。『金剛壁』2個、1600万と1700万。『金剛力』2個、1億2000万と1億2200万。『金剛外装』4億2000万と4億5000万となりました」
「総売り上げ12億2650万。この内2割が引かれるから、ショウタ君の取り分は9億8120万。差額が2億4530万ね。この内の7.5割があたしとマキの取り分になるんだけど、一応この専属行きになる金額もランク上昇のポイントあつかいになるのよねー。で、以前の『怪力』も合わせて2億5千万円分のポイントが入った訳。それもあって、ショウタ君はAランク冒険者になれたわけよ!」
「はー……」
金額がぶっ飛びすぎて、もうよくわからん。
「とりあえず、借金は帳消しに出来たんだね」
「最初に出た感想が、そこ? 流石ショウタ君ね。帳消しどころか、何十倍にもなって返って来たわよ」
「まずはこのお金で、マイホームの契約をしました。ダンジョンと駅との中間地点に、冒険者用にカスタマイズされた少し大きめの一戸建てがあるんです。付近にはショウタさんの好きそうなケーキ屋さんやパン屋さんがありましたので、今度行ってみましょう!」
マキから家の地図と外観を見せてもらう。その家は見覚えがあった。ダンジョンに来るまでに何度か目に入ったからだ。そうか、ここが拠点になるのか……。悪くないな。
「次にショウタ君の装備だけど、ある程度目処が出来たわ。まず、他の協会支部長の『お願い』を叶える対価に、高性能な装備を優先的に売ってもらえるようになったの。スキルによっては物々交換もしてくれるらしいわ。ゆくゆくはアーティファクト級の武器が望ましいけど、まずは中級から上級の長剣で、取引できそうな武器の品目を作ってもらったわ。良さそうなのがあったら教えてね」
アキからは、各ダンジョンでドロップ、もしくは宝箱から発見されているアイテムの一覧表が渡された。でも正直、名前からでは、『鉄』や『鋼鉄』みたいなある程度の指標でしか強さが測れないから、どれがどう良いのかがよくわからなかった。
「俺はその辺詳しくないから、その支部長さんのおすすめとか、2人の判断に任せるよ」
「ん、わかった」
「任せてください」
「それはそうと、気になってた事があるんだけど……宝箱ってどんな感じなの? 俺、見たことないんだけど」
最近になってよく耳にする単語ではあるんだけど、どうにも一定階層以下か、モンスターのレベルが高くないと出現しない傾向にあるようだ。
その為、『アンラッキーホール』は勿論のこと、世界一安全と言われる『ハートダンジョン』の第一層。『初心者ダンジョン』の第一層から第二層程度では、拝むことが出来ないでいた。
いくら俺の『運』が天井知らずでも、無い物を見つける事は出来ないもんな。
「そっか、ショウタ君まだなんだね」
「ショウタさんが宝箱を開けたらどうなるか、ちょっと楽しみですね」
「そうね~。で、宝箱がどんな感じか、だっけ? うーん、文字通り、そのまま宝箱なんだけど……。『初心者ダンジョン』だと、何階層から発見報告あったっけ?」
「確か、頻度は少ないですが第三層からだったはずです。あそこはモンスターの種類が少なくて、密林地帯ですからね。中央エリア以外では稼ぎに向かないので、素通りする冒険者が多いのですが、たまに本筋から離れて迷い込んだ人が、宝箱を見つけてきます」
第三層は宝探しが出来るマップなのか。それは楽しそうだな。
「へー。どんな見た目なの?」
「宝箱の見た目はどのダンジョンでも共通でね、中身のレア度によって外見は豪華になっていくの。ここのダンジョンだと全部で4種類ね。木、鉄、銀、金よ。このダンジョンで金箱なんて滅多にお目に掛れないから、銀が見つかったらとっても嬉しくなるのよね」
この言い方、アキは何度か見たことがありそうだな。
しかし、宝箱か……。俺の『運』は果たして、『発見』の方に効力を発揮するのか、それとも『中身』が反映されるのか。はたまた両方か……。
第二層のレアモンスターを放っておいて、先に第三層に潜りたくなってしまうな。
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