ガチャ816回目:分隊指揮
俺は押し寄せるモンスターを適宜蹴散らしつつ、作戦を伝える。
「皆、現状は見てのとおりだ。全ての封印地点を同時に開放する必要がありそうだ。だからここでメンバーの振り分けをしようと思う。まずイクサバ」
『はっ!』
「イクサバには悪いが、ここで防衛戦を頼む。近付いてくる雑魚はすべて蹴散らしていい。エンリルはイクサバのサポートをしてやってくれ。イクサバも分からないことがあればエンリルに聞くように」
『委細承知!』
『ポッポポ!』
殲滅役とアイテム回収役が必要だろう。エンリルには誰かのマジックバッグを渡しておく必要があるな。
「続いて第二班は手順で言う2番目の南東。ここはミスティが殲滅役。サポートはテレサとエンキが頼む」
「ん、任せて」
「お任せを、主様」
『ゴゴ!』
2人はどちらも魔法の鞄持ちだし、何よりも2番目ということもあり速度が優先される。エンキならアイテム回収も、地面を好き放題に均して岩を使ったリフトだとか、アイテム回収もお手の物だろう。
「第三班こと手順の3番目は西でクリス。サポートはセレンが行ってくれ」
「畏まりましたわ」
『♪♪』
ここも水コンビだから相性は抜群だ。なんの心配もなく任せられる。
「第四班こと手順の4番目、東は俺が担当する。アズとイリスは手伝ってくれ」
『はーい♪』
『プルル』
アズは俺以外には任せられないし、アイテム回収はイリスに頼めば問題ないだろう。当人は食事対象がいないから若干気落ちしているが、そこはまあ俺の腕の見せ所というか、餌付けでなんとかできるだろう。
「最後に第五班こと手順の5番目、南西は攻撃役がシャル。サポートはアグニとマリーで頼む」
「OK!」
『キュイー』
「頑張りますー!」
ここは回収能力に若干の難があるんだよな。けど、一番最後ということもあり時間的余裕もかなりあるだろうし……。まあなんとかなるかな、多分。
「それと、すまんがエンリルにシャルのマジックバッグを貸してあげてくれるか?」
「OK。あたしらはじっくり進めていくよ」
『ポ!』
『かたじけない』
「それと、念の為ミスティの言っていた順番通りに封印を解除していこうと思う。今こうしている間もモンスターを手当たり次第に討伐してるけど、光の柱が最初よりも太くなっているのが見て取れる。多分エネルギーが満タンになれば一際太くなるだろうし、もしかしたら特殊なエフェクトが出るかもしれない。次の手順担当者はそれを目印に封印石を設置してくれ。また、順番がかなり先の状態で欠片が揃ったとしても、個別の状態なら2時間は保つ計算だから、慌てて合体させなければ問題はないはずだ。ここまで何か質問は?」
……特になさそうだな。
「それじゃ、各自行動開始。もしも不測の事態が発生したら、その時は各々の判断に任せる!」
俺達は早速行動を開始した。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「よし、問題ないみたいだな」
俺は封印石の欠片を拾い上げ、安堵の息を漏らす。エンキ達やイリスがモンスターを倒した時は、完全に俺が倒したのと同じ判定になるため、今回みたいな戦力分けの場合サポート役に徹してもらうしかない。だが、アズやイクサバはそれには該当しないようなのだ。『運』の参照元は間違いなく俺なのだが、討伐判定は個別になっていて、数日前稼ぎに行った『696ダンジョン』の時でも、100体討伐による精霊石ドロップは俺とアズで完全に個別だった。
だから大丈夫だとは思っていたんだけど、こっちでもちゃんと想定通りの動きをしていて安心した。
「『一刀両断』!」
『斬ッ!』
横並びになってやってくる鎧武者こと嘆きの甲冑を、まとめて真っ二つにする。それだけで10数体のモンスターが煙となって消えた。
『ねえマスター。ここってこのモンスターだけだけど、残りの欠片はどうするの?』
「どうするも何も、ここは多分こいつら100体討伐するたびに出てない欠片がランダムで出てくるんじゃないかな。『閃撃・剛Ⅲ』!」
直線に飛ぶ斬撃が幾重にも連なった武者を蹴散らしていく。今ので軽く30は行ったか?
雑魚モンスターだけど、こうも沢山、しかも自主的に群れて集まってくれる事は滅多に無いから、気持ち良く倒せるな。
なんというか、疑似スタンピードみたいな感じだな。
『プルンプルン』
『イリス先輩、ここにお願いね』
『プルプル』
イリスがアメーバ状に広がっては、地面に散らばっているアイテム群を接着させ、一気に引き寄せる事で回収役を務めていたが……そのテンションは低かった。
うーん、このダンジョンは攻略していて楽しいけど、イリスにとっては不作のダンジョンなんだよな。今まではなんだかんだで食べても問題ない動物系モンスターは、討伐代わりに消化したりして楽しんでいたみたいなんだが、このダンジョンはアンデッドばかりだ。唯一いけそうな魚も、明らかに邪悪なオーラを発していたし、取り込めば呪われてしまいそうな勢いだった。さすがの『悪食』持ちのイリスでさえ、あれには断念せざるをえなかったらしい。
その上、ここを完全攻略したのちに挑む予定のダンジョンは未知の『001ダンジョン』と『機械ダンジョン』。前者はともかく、後者はどんな機械が出てくるのか未知数ではあるが、イリスが望むような食べられるモンスターは居ない可能性が高そうなんだよな。食料プラント的な何かがあればワンチャン……? 流石にないか。
『プルプル』
「アズ、バトンタッチいけるか?」
『もう、仕方ないわねー♪』
戦いの結果、俺の手元には3つ分の欠片が揃ってはいたが、度重なる連戦の末にイリスは萎え落ちしてしまっていた。元気がない様子で俺の肩に乗っかって来るので、戦闘はアズに任せてイリスにご飯を与える事にした。
どうにもイリスは、モンスターの踊り食いや嫁達の手料理を食べる事が何より幸せを感じるそうなのだが、それに負けず劣らず俺から手渡しでご飯を食べさせてもらうのも好きらしい。甘えん坊だなぁイリスは。誰に似たのやら。
「手渡しだし、小魚でいいか?」
『プルップル!』
灯篭の前で座り込み、冷凍小魚を1匹ずつ手渡しで食べさせる。モンスターが群れをなして襲ってきている状況だが、アズが黒い太陽を召喚した事で周りのモンスターは全て消え去っていた。新しく湧いたとしてもその瞬間に吸い込まれていくので危険地帯が一転して安全地帯へと変化していた。
この魔法、単一個体には滅法強いが、ドロップも全部吸い込まれるから、あんまり美味しくはないんだよな。
『マスター、あたしもあーんしてほしいなぁ♪』
「仕方ないなぁ。でも、後でな」
『ププルプル!』
「おう、おかわりだな」
そうやってのんびりした時間を過ごしていると、左前方の地平の果てに、光の柱が立つのが見えた。イクサバが担当している光の柱は少し前から大きく膨れ上がっていて、それ以上変化する様子が無いから、ミスティが行けると判断したんだろう。後は3番目のクリスが任務を完遂すれば、俺達の番だな。
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