ガチャ811回目:特殊個体
集まった煙はうねり、その内部の存在を高めて行く。キョウシロウさん達は警戒心を露わにしているが、俺たちは至って平然としていた。
「お、出て来た」
現れたのは、やはり狐で、その尾の数は6つだった。やっぱり階層+1本の尾を持つ奴が階層ごとに潜んでいる認識で間違いなさそうだな。
*****
名前:五色の呪いの化身
レベル:420(+120)
腕力:4480(+1280)
器用:4480(+1280)
頑丈:4200(+1200)
俊敏:4130(+1180)
魔力:9800(+2800)
知力:10500(+3000)
運:なし
【Pスキル】物理耐性Ⅵ、魔法耐性Ⅵ、斬撃耐性LvMAX、貫通耐性LvMAX、打撃耐性LvMAX
【Mスキル】念動力LvMAX、炎魔法LvMAX、妖狐魔法Lv2、魔力超回復LvMAX
【Sスキル】威圧Ⅲ、強圧Ⅲ
★【Eスキル】呪狐の恨みⅣ、言語理解、記憶読みⅡ
装備:なし
ドロップ:五色の殺生石(虚)、管理者の鍵454(5)
魔煌石:中
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おお、ちゃんと殺生石4つ分の倍率アップはかかってるみたいだな。これで倍率無しのシラフで出て来たら拍子抜けも良いところだった。
『クカカカカ! 復活した、復活したぞ!! よくぞ、よくぞ我が封印を解いてくれたな、人間よ!』
喋った。
そういや、『言語理解』のスキルがあったな。理解はしてても声帯の問題で喋れないとかありそうだけど、『知力』が飛び抜けて高いし、その手の問題を解決する策くらい持ってるか。
しかしやたらと『知力』が高いな。普通に考えて、レベルの基準から考えても従来の2倍以上はある。もしかすると、この新スキル『妖狐魔法』とやらが、使用するための最低条件としてバカみたいな数値を参照するのかもな。
『そこの人間。我を復活させてくれたのはお主だな? 何か礼をしなければな』
「礼?」
こんな邪悪な奴からの礼とか、碌なもんじゃないだろ。
『誰か呪い殺してほしい奴はおるか? 現在この国にいて、名前と生年月日、出身地が分かれば殺してやるぞ』
ああ、やっぱ禄でもないことを言って来た。
「要らねえよ」
『そう言うな。人の世はあまりに面倒なものであろう? どんなに相容れぬ奴であろうと、人類の敵のような者であろうと、ひとたび殺せば人殺しのレッテルを貼られるのだ。それを我が代わりに殺してやると言っておるのだ。呪いによる死は誰にも原因は特定できぬ。誰もお主の仕業だとは思うまい。クカカ!』
まあ気に食わない奴ってのは確かに俺にもいるっちゃいるが、それは『炎』と『征服王』の事だし、コイツらは他国だ。それに、もし遠隔で殺せるとしてもそれをするのはまた違うだろう。どうしても殺さなければ前に進めない壁だというのであれば、それは俺は直接手を下すべきだ。それに連中は今の所、俺にとって何の脅威でもないしな。
むしろ、奴らの存在には感謝してるくらいだ。なんて言ったって、面倒なダンジョンのスタンピードを起こしてくれたんだからな。感謝を伝えれば連中は憤死するかもしれないが、心からのありがとうを伝えたいくらいだ。
「断る」
『良いではないか。例えばそうさな……ふむ。ダンジョンの外にはお主の子を身籠った妻がおるのだな? そやつらを下卑た目で見る奴らは後を断つまい。そんな奴らを手当たり次第に消してやっても良いぞ』
『記憶読み』か。確かにその手の話はよく聞くし、見られている事も知っている。けどそれは、うちの嫁達が魅力的すぎるから起きることだし、たとえ今排除したところで次が現れる。それに1度でも排除した事が、たとえ噂でも流れ始めたら終わりだろう。
つまり論外。却下だ。
「くどいぞ。それにその呪いとやら、礼だ何だと言っても、見返りを要求する気満々だろう」
『ほう?』
「例えば、実行するにあたり契約が必要で、契約してしまえば俺はお前の行動を邪魔できないとかな」
『フン、無駄に賢しい人間よの』
やっぱりか。それにどうにも、奴からはいつものダンジョンモンスターとは異なる気配を感じる。まるでスタンピードでダンジョンから溢れ出たモンスターを見ているかのようだ。
「お前、もしかしなくとも、このまま放っておくとスタンピードを引き起こすタイプだな? 俺と契約をしたら、その後は自分の足で堂々とダンジョンの外に出るつもりだろう」
『……』
図星か。こいつから感じてた違和感は、やっぱりそこだったか。
当てられるとは思ってなかったと、そう顔に書いてあるのがまたわかりやすい。本当に『知力』1万かと思うが、この辺は個人の度量であって能力値はあんまり関係ないんだよな。
俺も人のこと言えないし。
「若人よ」
「分かってますよ。こんなゴミクズ、外には毛の一片たりとも出しませんよ」
呼び出したのは俺である以上、俺の手で始末をつける。
『ゴミクズ、だと? 封印を解いた礼に見逃してやろうかと思っていたが、気が変わった。貴様のようなたかが人間が、我を愚弄するなど……絶対に許さぬ! 八つ裂きにしてくれる!』
狐から『威圧』と『強圧』が垂れ流される。まあ多少迫力は増したが、その程度だ。別に怖くもなんともないね。
「うるせえよ害獣。グダグダ言ってないでかかってこい」
『口の減らぬ奴だ。これを見てもそんな事が言えるか? 『変化』!』
狐の巨大な身体が、突如として発生した煙にドロンと包まれた。どこかで見た事のある気がする煙だと思ったが、これ、サクヤさんにちょっかい掛けてたあの狐の奴と同じか。……ってことは、ああしてアズに呼ばれて現れたのも『妖狐魔法』の一種か?
そう考えている内に煙が晴れ、そこには4人の人物がいた。それは、俺にとって大切な人達であり、外で待っていてくれているはずの嫁達だった。
『ショウタさん!』
『ショウタ君!』
『旦那様!』
『ご主人様!』
その姿は数日前に別れた時の記憶通りの彼女達だった。お出かけをした時に購入した温かい服装に、膨らんだお腹。更には見た目だけでなく、ご丁寧に気配まで俺が知っているそれだった。
だが、俺には分かる。マップを見るまでも無く彼女達は偽物であり、中身はあの狐なのだと。
「随分と、舐めた真似をしてくれるじゃないか……」
怒りが沸々と湧き上がってくる。
『ショウタさんは、私達を攻撃なんてしませんよね?』
「その声で喋るな」
『え?』
今すぐ殺してやる。
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