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ガチャ806回目:修行相手

 『輪入道』は炎を纏っての突進と鬼火を召喚しての攻撃と、至ってシンプルな戦闘スタイルのように思えたが、こいつの攻撃はそれだけでは無かった。まず、通った場所が燃え上がる為、戦えば戦うほど足場がなくなり、更には炎による影で『シャドウクロコダイル』とのシナジーもあり、地面のほとんどは敵の攻撃範囲となっていた。

 空に逃げるのは修行にならないから、足の踏み場がほとんど無い中戦うという環境に身を置く事となった。まあぶっちゃけ、今の俺の耐性的には『輪入道』が出した炎は大した脅威ではなく、誤って踏んでしまった所でダメージにはならなかったのだが、熱いものは熱いのだ。

 それでも自分で定めたルールを何度か破って踏んでしまったので、元の予定の1時間を超過する形で、追加で30分間、槍による防御と寸止めの攻撃、そして回避と受け流しを鍛える修業を続けたのだった。結果、長時間奴が走り回った事で足場はもう無いに等しく、俺はほぼ動けない状態になっていたが、奴らのスタミナの方が先に尽きたせいで、さほど難しくは無かったんだよな。

 とりあえずの修業結果に一定の満足感を得た俺は、付き合ってくれた奴らに敬意を表し、一撃で終わらせることにした。


『ガハ、ガハハ…』

「おらよっ、お疲れ!」


 呼び出された鬼火諸共、『輪入道』を突き貫く。


【レベルアップ】

【レベルが9から196に上昇しました】


 んじゃここで『弱体化』を生成してっと。

 生成したスキルは腰にぶら下げてあった『異次元の腰巾着』に放り込みつつ、死角から迫ってきていた複数の影の槍をしゃがんで回避する。その速度はやはり、精細さに欠けていた。


『……!』

「お前もお疲れさん。楽しかったぞ!」


 『虚空歩』と『神速』を使った超高速の『チャージアタック』で『シャドウクロコダイル』を刺し貫く。奴は煙へと変わりながら後方へと吹き飛び、壁に激突するとアイテムをばら撒いて消えていった。


【レベルアップ】

【レベルが36から208に上昇しました】


 今のはすげー威力だったし、無用の長物だった『チャージアタック』はカンストさせてもいいかもしれないな。


『キイイッ!!』


 狐はまるで散弾の様に何度もブレスを放ってくるが、最初の頃と比べて威力や持続時間には難があり、息切れ気味だった。こいつも楽にしてやるか。

 俺は攻撃を回避しながらやつの懐へと潜り込み、未使用だった『武技スキル』を披露した。


「『四天滅殺』!」


 グングニルが4本に分裂し、それぞれが致命的なダメージを与える。流石の狐も、グングニルによる致命傷には耐えきれず、煙となって消え去った。


【管理者の鍵454(4)を獲得しました】


【レベルアップ】

【レベルが48から385に上昇しました】


  おー。ちゃんと160+220分のレベルがどっちも達成できたな。


『マースター♪ お疲れ様!』


 いの一番にアズが飛んで来て、抱きついてくる。


「おう。どうだった?」

『カッコ良かったわ♪』

「そりゃ良かった」


 そしてそれに遅れる形でミスティ、続けて他の皆も走ってくる様子が見えた。


「ん。出遅れた」

「アズは文字通り飛んで来たからな」


 飛行系のスキルなんてないはずなのに、しれっと飛んで来たんだよな。

 勢い良く地面を蹴って飛んでるように見せるくらいなら俺でもできるが、アズが俺に抱き着いた時には何の衝撃も無かった。一体どうやったんだ?


『だってあたし、魔王だもの♪』


 答えになってないけど、可愛いから良いか。


「勇者様、お見事でした!」

「未知の強敵相手の同時戦闘。実に見事な戦いぶりでした!」

「ショウタ様の槍捌き、戦うたびにどんどん洗練されて行って、とても見応えがありましたわ」

「それにしても、1人でもあれだけ強いのに、ショウタにはまだ『影魔法』とか『魔導の御手』なんかのサポートスキルも多彩にあるのよね。手数が多いのは単純に羨ましいわ」

「まあ、手数はあれど俺自身の能力的に完全に扱いきれてはないんだがな」


 使える場面では使ってきたけど、それでも戦いの場に常駐させるには俺側の処理が間に合わないんだよな……。『思考加速』と『並列処理』のおかげで色々と短時間で考えられる様になったが、相手のレベルが上がった分、戦闘はもっと高速化しているから、結局俺自身の戦いにばかり集中しちゃって、この手の外部ツールへの思考割り当てが難しい。単純作業をやらせるならまあできないことはないんだが、動きの速い戦闘について来させるのは……ううん、難しい。


『主君が仰っていたように、確かに我が活躍する余地は無さそうでありますな』

「まあなぁ。雑魚戦ならワンチャン、イクサバが倒しても、俺が倒したのとは別判定になるかもしれないが、レアモンスターとの戦いは俺がやりたいからな」

『無念……』

「逆にカスミ達の方は、誰か一人が戦うのではなく皆で戦うスタンスだから、活躍はできるだろうな」

『ふむ……』


 ああそうだ、カスミで思い出した。

 まずは今のレベルで1回分『弱体化』を作成してっと……。


*****


名前:天地 翔太

年齢:21

レベル:225

腕力:38580(+38352)

器用:38584(+38356)

頑丈:38568(+38340)

俊敏:38453(+38225)

魔力:38842(+38616)

知力:38758(+38532)

運:57568


*****


 これでよしっと

 『異次元の腰巾着』に入れておいた、第二グループ用の『弱体化』のスキルオーブ専用ボックスに投入してっと。後は気付いたアイラがカスミ達に送ってくれるはずだ。これで、第一グループ4人と、第二グループ6人に『弱体化』は配り終えた事になるな。

 現状、手元には今回の戦いで得た2つの在庫と。残るは第三グループの5人と、第四グループの4人だな。

 ……となると、残り7個か。なんだかこのダンジョンであっさり終わらせられそうな気がして来たな。

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