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ガチャ802回目:夜戦後

『マースター♪』


 お肌がツヤッツヤになったアズが、ご機嫌な様子でくっついて来る。昨日からずっとこんな調子だが、おかげでこっちとしても『青龍』の事は考えずに済んでいるので、ありがたかった。

 昨日は早々に探索を中断したこともあって、俺達は真っ昼間からエンドレスに拠点内でドッタンバッタンしてた。にもかかわらずいつも通りに動き回れるアズはやっぱり体力オバケかもしれないな。


「ん。ショウタがそれ言う?」

「そうですわ。ショウタ様の体力の底が知れませんわ」

「普通こういうのって、男性側が搾られると思うんですけどー」

「まあ、俺は慣れてるしな」


 Sランク5人+サキュバス魔王が相手でも、やる事は変わらないしな。それに、ミスティはともかく他の4人はまだこういう事に慣れてないから、体力配分とかまだまだなのだ。そんな彼女達には負けていられない。


『主君。気力は回復しましたかな』

「ああ、心配かけたな」

『滅相もありませぬ。我も、遥かに高みにいる存在に衝突する事は幾度となくありました故、気持ちはわかりまする』

「おう、サンキュー」


 俺が彼女達とひたすらイチャイチャする間、イクサバはエンキ達のアニメ鑑賞会に付き合わされていたみたいだが、特に問題ないみたいだな。

 不眠不休で動けるゴーレムとは違って、普通に人間と同じく生活が可能な種族みたいだからな。流石に寝させてもらえたか。


「うぅ、まだ膝が笑ってるわ……」

「こればかりは私の力では癒せませんね……」

「大丈夫か?」


 シャルが、立てないほどではないが足にきてるようで、子鹿のようにプルプルしてる。


「平気よ。走り回る事はできないけど、そんな相手はいないでしょうし」

「まあな。強敵相手は俺の領分だし、雑魚は立ち止まりながらワンパンできる相手しかいないし、逃げ回る事も無いから問題はないだろ」

『それでねマスター、この後の階層でも似たようなのが出て来ると思うけど……』

「そうだろうな。今は無理でも、いつか倒したい相手だ」

『んふ、さすがマスター。それで、何か対策とかあるの?』

「対策って言うほどの策でもないがな」


 正直あのレベルまでくると、正攻法しか思いつかなかった。


「まず1つ。御し切れてないステータスの許容量を伸ばす。今までは苦労してなかったから、割となあなあでやってたけど、あんなモノが出てきた以上、本気で取り込もうと思う」

『まあマスターの今の実力なら、御しきれる範囲でも封印なしのあたしと良い勝負できると思うわ。けど、あの怪物はそれを軽く上回るのよね』

「ん。ショウタが今操れるのって、どのくらい?」

「ステータスによってバラつきがあるが、大体9000から12000くらいだな」

「プレッシャー系スキルは、当人の持つステータスを参照しますから、完全に扱えるようにさえなれば全てのモンスターを相手に戦わず勝利できるかもしれませんねー」


 それはそれでちょっとつまらないというか、ちょっとやだなぁ。そうなったら義務感のみで攻略しなきゃならなくなるし、方法を伝達して俺が引退して、世界に任せる流れになるのかね。

 うーん、そうはなりたくない。やっぱり程々にしようかな。


「それでショウタ、1つってことは、まだ何か案があるの?」

「ああ。400番代の中枢であるNo.500番を攻略しようと思う。そこを制圧すれば、400番代を攻略するほど内部のモンスターは弱体がかかるからな。めちゃくちゃステータスの高い『青龍』なんかは、露骨に影響を受けるだろ」

「流石です、主様」

「ショウタ様なら、いつかきっと倒せるはずですわ!」

『んふ。でもマスター、相手は神よ? ダンジョンの檻に囚われてる割には、その神々しいオーラは健在だったし、素直に弱体化してくれるかしら?』

「そんときゃ、結局俺が頑張るしかないな」


 ああでも、『青龍』もそうだが、姿を確認して立て看板の状況まで試練を進行させちゃうと、挑戦するを選択しなきゃ相手が本当に弱体化してるのか、確認のしようがないよな……? そうなると、中枢ダンジョン攻略後にわざわざ弱くなったか確認しに行くなんて事もできないし、結局ぶっつけ本番になってしまう。

 なら、弱体化していないことを前提に動くしかないかもな。もしくは、残りの四神のうちどれかを、看板の段階より手前の段階でキープできれば、それもありか……?


「ん。ショウタ、考えは纏まった?」

「ああ」


 俺は今考えた内容を皆に共有した上で、第四層へと降りていった。



◇◇◇◇◇◇◇◇



「エンリル」

『ポ!』


 いつも通りエンリルに探索をさせつつ、俺達も視界を飛ばしてマッピングを始める。構成としては第三層と同じような武家屋敷に見えなくもないが……。


「今回はどちらかというと、城だな」

「ん。上の屋敷は外側がただの通路だったのに、今回はお堀がある」

「お堀というのは、あの水源のことですの?」

「日本のお城は、水で囲って橋をかける形で防衛力を高めていたと、読んだことがありますねー」

「お城の中も外も、出現するモンスターが総入れ替えされてるようですね」

「外にはスケルトン、水源には妙な魚影、城には影に潜む何者かの存在と、庭には1本足で立つ赤い……なにあれ?」


 シャルが見てるのは、からかさ小僧だな。

 1本足には下駄、目が1つ、特徴的な赤い唐傘。


「賑やかし要員の鬼火はリストラされたかな?」

「ん。骨になっちゃったね」

「ところでケルベロスって、骨好きだったりする?」

「ん。犬みたいだけど犬じゃないから、そういうのはないかな」

「そっかー」


 そんな感じで軽く雑談をしつつ、マップを埋めていった。広さとしては第三層と比べるとお堀の存在により少し広く設計されてるかな?

 まあ十中八九スケルトンは重圧関係の存在だろう。お堀の魚影はなんだろうな? まあ、とにかく今は城の方を優先させてもらうとするか。


「ミスティ、東の青龍の次は、南の朱雀だったな」

「ん。そう」

「じゃ皆、南に行こう。南東スタートだからすぐ着くはずだ。それからスケルトンはマリーが頼む。溢れそうならテレサが手伝ってやってくれ」

「はい!」

「お任せを!」


 じゃ、第四層攻略開始だ!

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