ガチャ789回目:精神負担ダンジョン
「んじゃ、エンリルよろしくな」
『ポポ!』
いつものように『視界共有』をしてこの階層を視界に収める。前回は9区画あったけど、こっちはどうかな。
「4×4の16? ……いや、中央がクソでかい1区画か。なら12+1の13だな」
13ならまあ、そこまで広くないか。広さはほぼ倍になったから多少時間は掛かるかもだが。出来上がっていく地図を彼女達も興味深そうに覗き込んでおり、その中でもアズは楽しげだった。その表情も尻尾もウキウキしている。
『マスターマスター♪』
「んー?」
『次はどう攻略していくの?』
「さっきと同じで、区画内に潜んでる視線の主をボコっていく感じだな。ちょっと広くはなってるけどそう苦労はしないだろ」
「ん。でもショウタ、それよりこの重圧の方をなんとかしない? 視線なんてダンジョンの外でも受けてるし、鬱陶しさで言えば目に見えない重圧の方が負担が大きいと思うよ」
「それはそうなんだがな……」
「む? もしや勇者様は、視線を優先したい何か思惑があるのですね?」
思惑とは少し違うかも知れないが、第一層を攻略している時に、ちょっと気になる点があったんだよな。
「とりあえず、何も聞かずについてきてくれるか? 理由は後で話すよ」
「ショウタ様の判断に従いますわ」
「右に同じくですっ」
「主様の御心のままに」
「このチームのリーダーはショウタよ。もちろん従うわ」
「ん。ショウタに考えがあるなら、着いてく!」
「おう。でもそれはそれとして、ミスティ。わざわざ口に出して言ってくれてありがとな」
俺の判断に黙って付き従う面々が多い中で、ちゃんと疑問を感じた事を報告したり、より良い選択がありそうだと判断してそれを口にする方が、精神的な負担もあったろうに。
そんな彼女の頭をわしゃわしゃと撫でて、しっかりと褒めてあげなければ。
「んふ」
「お前達も、何か気になることがあったら遠慮なく言って良いからな」
まあ彼女達、特にテレサにはちょっと難しいかもだが。……いや、撫でられてるミスティを羨ましそうに見てるし、大丈夫かな。
「さ、そんじゃ区画内のギミックから優先して解いていこうか」
◇◇◇◇◇◇◇◇
結局、こっちのギミックも第一層とそんなに変わり映えはしなかった。各区画内に隠されるようにして巧妙に配置された祠と、それを守るように配置されたキツネの彫像。こいつらを倒して、特殊なアイテムを集めるという流れだ。
しかも、悲しい事に祠を護ってる彫像は、第一層とスキルも強さもレベルも、全く同じだった。もうちょっと強くなってくれてることを期待したのに、実にがっかりである。
「まあまあ主様、そう仰らずに。通常モンスターのレベルと比べても、レベル80の特殊モンスターは、やはりそれなりに強敵だと思いますよ」
「そうだがなぁ……。この『妖怪ダンジョン』、難関ダンジョンと謳われる理由が、今のところ強敵が多いんじゃなくて精神的負担が多いだけのギミックダンジョンでしかないのが、ちょっと拍子抜けしてるんだよな」
それに、無毒化された殺生石には狐が強くなるって書いてたのに、あの彫像は狐扱いじゃないのかレベルがそのままだったのはショックだった。
まあ鬼火は、第一層に比べて多少パワーアップはしてたけど。
*****
名前:鬼火【鬼】
レベル:18
腕力:110
器用:130
頑丈:300
俊敏:30
魔力:800
知力:280
運:なし
【Pスキル】恐怖耐性Lv2
★【Eスキル】鬼火Lv2、根元の恐怖
装備:なし
ドロップ:鬼面の火打石
魔石:小
*****
鬼火に、鬼のお面が張り付いていた。見ようによっては鬼のお面が浮かんでいるようにも見えるが、お面があるせいで怖さ半減してる気がするんだよな。いや、このフィールドが夜とかなら、まだ怖かったかもしれないぞ? でも、空は薄暗いが明るい方だし、連中はやっぱり脅かしを最優先にしてくる。まるでお祭り帰りの子供が大人をビビらせようと徘徊しているかのようでもあった。
「寄って来て、恐怖を煽るように笑い始めるの、慣れると逆に面白いまである」
「ん。すっかりギャグ要員」
「これでも、『恐怖耐性』が低ければ多少怖かったりすると思いますけどねー」
「それが今では、見る影もありませんわね」
「少し広いだけで、第一層とそう変わらなかったわね」
「だな」
ただまあ、第一層と違う点は、区画の中で割と雑に配置されていた祠が、通路の奥とか雑木林を掻き分けた内側だとか、区画内の一部が迷路になってたりで、近くを通っただけでは決して見つからない位置に配置されるように変化していたのだ。それにより、探索難易度が増していた点は評価できる。
けど、こっちには上空から俯瞰して先見してしまえば、その後情報が筒抜けになるマップスキルがあるから、さほど苦労はしなかったが。正攻法でやってたら、流石に丸一日は掛かっていたかもしれない。
「ん。それでも1日で終わらせられると断言するショウタが凄い」
「そうだねぇ。1つの区画内にいくつあるとか決まってるわけじゃないから、見逃したら本当に気付けなさそう」
「見逃ししてしまったら大変ですから、1区画1区画、もっと丁寧に探索する必要がありそうですもんね」
「大通りにしかモンスターがいないとはいえ、隠れている物を探し当てるというのは、戦闘とはまた違った労力がかかりますからね」
「1つでも取り逃したら、とんでもなくショックを受けてしまいますわ」
「はは。皆の言いたいことはわかるけど、そう難しいものでもないぞ。まず、ゴール地点が第一層と同じ感じなら、捧げる為の祭壇の総数から集めるアイテムの数が絞れるだろ? 続いて、ねちっこく絡みついてくるあの視線だ。どんなに隠れていようとも視る事を連中がやめない限り、視線を送り続けてくれるんだから、どこにいるのか丸わかりだ。まあ、壁を貫通して視線を飛ばして来るから、入り組んだ場所にいたら多少面倒だったかもしれないが、それでもそれだけだ。マップが無くても、そう苦労はしないよ」
そう解説するも、皆困惑した表情を浮かべていた。
「ショウタ様。ご自身では気付いていないのかもしれませんが、視線を感じたからといってその発信源を詳細に割り出せるのは、本当にすごいことなんですのよ?」
「そうそう。あたしでも、大体の場所はわかっても特定まではできないわよ。ミスティもそうでしょ?」
「ん。私とシャルは職業柄、気配の察知やフィールドの見極めは得意。私達も視線の元は何となくはわかる。けど、ショウタほど高性能な内部レーダーは搭載してない。ショウタはスキルの構成もそうだけど、『運』による『直感』と『勘』が鋭いから、それがとんでもない精度を出してる」
ミスティの言葉に、皆がうんうんと頷いた。
「そうなのか。……まあ確かに、言われてみればそうかもしれないな」
やっぱ『運』は、このステータス自体に色々と有用なスキル的な何かが内包してる感じで、本当にチートステータスだよな。だからこそ、集中的に上げようとすれば、まるでそれを拒むかのように、呪いのような防衛システムが備わってる訳だが。
……結局あれ、なんなんだろうな。
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