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ガチャ787回目:脅かし要素

 誘蛾灯のようにテレサに群がってくる鬼火を殲滅すること十数分。鬼火を斬るという感覚にも慣れて来た頃、討伐したモンスターの煙に変化があった。どうやら、100体目に到達したらしい。

 さて、何がくる?


*****

名前:恨みの鬼火

レベル:50

腕力:450

器用:550

頑丈:700

俊敏:60

魔力:1000

知力:800

運:なし


(パッシブ)スキル】恐怖耐性Lv4

(マジック)スキル】炎魔法Lv3、火炎操作Lv3

★【(エクス)スキル】鬼火Lv5、根元の恐怖Ⅱ


装備:なし

ドロップ:鬼印の爆裂石

魔石:中

*****


 ふうん。

 第一層という意味で考えれば、強くもなく弱くもない普通のモンスターだな。まあ表側のレアであるコイツらよりも先に、裏の隠し要素的な存在を先に見ちゃったから、余計に拍子抜けに感じるんだろうけど。

 『恨みの鬼火』は初期サイズこそ通常の鬼火同様、小さな火の玉に目と口が付いていて、ふよふよと浮かんでる程度の存在だったが、俺の存在を感知すると大きく膨れ上がり、2メートルを超す炎の巨人のような形態へと変化した。そこから何をしてくるのかと思いきや、何もしてこなかった。


「……?」


 奴は顔を醜悪に歪め、ただただ、ケタケタと重低音な声で笑い続けている。

 何を笑っているのかと不思議に思っていると、テレサが隣に並んだ。


「主様。恐らくこのモンスターは、我々……特に主様を怯えさせる為に笑っているのではないかと思います」

「それって、お化け屋敷のお化けみたいな感じで?」

「はい、先ほどまでの鬼火も、そのような感じでしたし……」


 まあ、お化けなんて、驚かしてなんぼなところがあるが、こいつら戦う気がないのか……? それに奴が持っている『根元の恐怖Ⅱ』とやらも、驚かせるだけで攻撃能力的なものは備わってないみたいだし。そしてテレサの言うように、今になって思えば通常の鬼火もテレサがいるところに集まって来ても、攻撃することよりも威嚇するかのように身体を膨れ上がらせたり、火花を上げて音を発する事を優先していた気がする。まるで、相手を驚かせる為に夢中な感じだ。

 もしかしてこいつら、見た目はこんなでも愛すべきモンスターなのか? と、そこまで考えたところで、面白いことが頭に浮かんだ。


「ん。ショウタ、悪い顔してる」

「ああ……。こいつらに、()()()()を味わわせてやろうかと思ってな。『威圧』」

『!?』


 『威圧』を放った瞬間、『恨みの鬼火』は猫騙しを食らったかのように驚愕したように固まった。


「『強圧』」

『!?!!?』


 『恨みの鬼火』は顔を恐怖で歪め、逃げるように火の粉を散らしながらバラバラになった。『恨みの鬼火』がいた場所には煙が発生したが、すぐに霧散しドロップアイテムが散らばった。


【ダンジョンモンスター・恨みの鬼火に畏れを抱かせました】

【特殊条件達成】

【以後一ヶ月間、該当ダンジョン第一層の全モンスターのドロップ率が上昇します】


「おっと、そういうのもあるのか」


 特殊な撃破でドロップアップか。となれば、現状ドロップアップのためのレアモンスターが存在しない他のダンジョンでも、やり方次第で可能性が出てきたというわけだな。本当に、ダンジョンは色々とあって面白いな。


「ん。ショウタはいつも、思い付きでとんでもない結果を手繰り寄せるね」

「それ、褒めてるよね?」

「ん。褒めてる褒めてる」


 半ば呆れを感じさせる雰囲気だったけど、ほんとかなー。

 まあ良いか。撫でろと言わんばかりに頭を差し出すミスティを可愛がりながら次の行動を思案する。多分今のレアモンは、普通に倒せばレアⅡが出そうな挙動ではあったけど、鍵に関係がなければフィーバーとも無縁のただのレアⅡなんだよなぁ。

 けど、せっかくならコンプリートしておきたいし……。


「よし。じゃあ念の為もう1回レアをやるか。テレサ、頼むな」

「お任せください、主様」


 そうして鬼火を追加で百体討伐し、そのまま『恨みの鬼火』を斬撃で撃破したところ、ちゃんと次が出てきてくれた。


*****

名前:嘆きの鬼火

レベル:80

腕力:750

器用:900

頑丈:1000

俊敏:80

魔力:1000

知力:1000

運:なし


(パッシブ)スキル】恐怖耐性Lv5

(マジック)スキル】炎魔法Lv4、火炎操作Lv4

★【(エクス)スキル】鬼火Lv6、根元の恐怖Ⅲ


装備:なし

ドロップ:鬼印の慟哭石

魔石:大

*****


 今度の鬼火は、嘆きを表現しているのか青い鬼火だった。そしてその顔は悲嘆というか、ムンクの叫びに近いものを感じた。

 けどやっぱり、脅かしを優先する姿勢は変わらないらしく、思いっきりコチラに顔を近付けて重低音の声で悲哀たっぷりボイスを垂れ流してきた。


『アアアアァ……』


 ……うん。

 まあだからなんだと冷めた感情で俺はそれを見つめ、お返しをしてやることにした。


「『威圧』『強圧』」

『アアァッ!?』


 哀れ。『嘆きの鬼火』は悲鳴を上げながら消えていった。


【ダンジョンモンスター・嘆きの鬼火に戦慄を抱かせました】

【特殊条件達成】

【以後一ヶ月間、該当ダンジョン第一層を覆っていた『悲哀』の重圧が取り除かれます】


「おっ?」


 何が来るかと思ったら、空気がめちゃくちゃ軽くなった。このダンジョンに入った瞬間から、目に見えない謎の重圧を感じていたんだが、たった今、完全にそれが取り除かれた。

 キツネの彫像からの視線と、謎の重圧。この第一層に掛けられていた精神的負担は、これで完全に除外され、普通のダンジョンと同様の空気感へと変化したようだ。うん、これなら過ごしやすいぞ。


「ふふ。ショウタ様は本当に、息をするかのような軽い感覚で次々とダンジョンの秘密を暴いていかれますね」

「ショウタとの冒険はとっても楽しいよって、奥さん達皆が声を揃って言ってたけど、本当ね」

「勇者様、素敵ですっ」

「主様……!」

『♪』


 皆からの視線が熱いし、アズも上機嫌だ。俺が褒められて嬉しいのか、俺の攻略内容が楽しいのか。……両方かもな。

 さて、第一層の所要時間は、大体1時間半から2時間ほどか。今は15時過ぎだから、もう1層くらいはいけるかな。


「そんじゃ、第一層はあっさり終わっちまったし、このまま続けて第二層に行こうか」

「「「はいっ」」」

「「OK」」

『はーい♪』

読者の皆様へ


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