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ガチャ785回目:降り積もる怨念

『ポポ~』

「おう、おかえりエンリル」


 エンリルが戻るころには、俺達は3つ目の祠を制圧していた。

 その結果、こちらのレベルは102になり、敵のレベルとステータスは15%上昇する状態となっていた。まあレベルやステータスが増えても、敵そのものが変質というか強化されるわけではないようだから、所持スキルなどは一切変わらないという点は旨味が無いように感じるが、経験値はしっかり増えているのが救いか。

 あと、持ってるだけでモンスターから怨みを買っている状態なので、いちいち圧をばら撒く必要はないのでその点は楽と言えた。


『ポー。ポポ』

「ふむ、そんなに広くはないみたいだな」


 エンリルに飛んでもらった結果、第一層の城下町は賽の目状の街並みとなっており、区画の数は9個しかないようだった。構成としては中央の区画に一際デカイ神社の境内が設置されていて、その周囲の8つの区画には、それぞれ複数の祠が設置されているような感じだった。

 そして区画を繋ぐ十字路と外周には疎らに通常モンスターが闊歩しているようで、そちらはまあ、なんというか見た目は鬼火と呼ばれる、火の玉のようなモンスターだった。確かにお化けと言えばお化けだし、霊と言えば霊だ。そいつらと相対しながら周辺のキツネから視られ続けるというのは、結構な負担になるだろう。


「一般的なダンジョンと比べて、ここは精神的負担もそうですが、敵のレベルが高い気がしますね」

「まああのキツネに関しては特殊なレア枠だからそう思えるだけで、鬼火は普通なんじゃないか?」


 まだ直接は見てないけど、そこまでの圧力は感じないから、本当にただの雑魚モンスターだと思う。


「それで主様。ここからは残りの祠を制圧するかと思いますが、分担しますか?」

「いや、この勾玉を持っていることがトリガーになる気がするから、まとまって行動しよう。ただ、念の為通路にいる鬼火の処理は皆に……できればトドメは誰か1人に任せて良いかな」

「はいっ、お任せくださいー」

「あたしが全部撃ち抜いてやるわ」

「ですがショウタ様、最初の1体は詳細を見ておきますか?」

「ああ、そうだな。そうしようか」


*****

名前:鬼火

レベル:10

腕力:60

器用:70

頑丈:150

俊敏:20

魔力:500

知力:150

運:なし


(パッシブ)スキル】恐怖耐性Lv1

★【(エクス)スキル】鬼火Lv1、根元の恐怖


装備:なし

ドロップ:鬼印の火打石

魔石:小

*****


 やっぱ持ってたか、『恐怖耐性』。

 ただまあ、こいつ自体が弱いのに、それでも恐怖体験の噂が頻発している以上、誰もそのスキルの恩恵を受けられていないという事。つまり、ドロップ率は最悪なんだろうな。基礎ドロップ率は0.1%とか、そんなレベルか?

 だとしたら『運』が一般の最高値である10でも1%。確定ドロップには1000も必要になるわけだ。こんな劣悪な環境で100体も倒してようやく1個出るか出ないかじゃ、そりゃ世に出回ることはないだろう。

 まあ、今の俺には関係ないことだが。


「皆。『恐怖耐性』の所持状況を教えてくれ」

「私とテレサはMAXですー」

「わたくしはLv5ですわ」

「ん。ゼロ。けどEXが補ってる可能性もあるからよく分かんない」

「あたしも5よ。5もあれば大抵のことには怯まなくなるわね」

『あたしは、マスターも知っての通り0よ♪』

「OK。んじゃ、15体ほど優先的に、見かけたら倒しておいてくれ」



◇◇◇◇◇◇◇◇



 そうして俺達は隊を分ける事なく共に行動を続け、周辺区画をぐるりと回った。まず俺は各祠を巡り彫像狩りと勾玉集めをし、彼女達は俺に付き添いながらの鬼火狩りを敢行した。結果、1時間後には周辺8区画内にあった全ての祠を巡り終え、設置してあった彫像を全て撃破。勾玉の総数は20個に増加していた。

 それにより俺のレベルは169にまで上昇し、俺と遭遇する敵のレベルとステータスも2倍にまで膨れ上がっていた。この『遭遇した敵』というのがまた妙な仕様のようで、普段そこらを徘徊している敵は通常通りなのだが、俺の存在に気付いた瞬間にパワーアップする。具体的に言うと、視線の通る場所で、俺とモンスターとの距離が10メートル以内に接近した場合に強化が入るようだ。

 一度強化されたモンスターは、視界から俺が消えても強化状態が維持されるようで、俺がダンジョンから脱出したり階層移動をする事で、モンスターの敵対心リストから消えた場合にどうなるかなどはまだ未検証だ。でも多分、流石にそこまですれば元通りになるんじゃないかな。じゃないと、こんなギミックのダンジョンが6、7年も稼働しているのに、1体も強さが変動したモンスターと遭遇しないのはおかしな話だしな。

 そうこう考えているうちに、俺達は中央の区画へとやって来ていた。そこは他の区画の街並みとは異なり、東西南北の入り口から中央に向けて通る参道の先に、ちょっと立派な神社が建っていた。

 手元にある20個の勾玉に『解析の魔眼』を通してみれば、全てがあの神社に向かって線が伸びている。あそこがここの特殊レアモン戦の舞台で間違い無いだろう。


「さて、戦いを始める前に集めた『恐怖耐性』を配っておくか。何個集まった?」

「58個です」

「大通りは避けたはずなんだが、それでもそれなりの数集まったなー」


 そうして必要な数それぞれに配ったが、問題が生じた。


「ん。ショウタ、ダメみたい」

「おっと」


 ミスティは万全の体勢で銃が扱える様になるための『銃器マスタリーLvEX』のスキルがある。その中には恐怖によって身が竦んだりしないよう処置がされているとは思ったが、スキルが弾かれてしまったか。


「覚えられなかったか」

「ん。正確には取得はしたみたいだけど、反映されなかった感じ。ちゃんとスキルは消費してる」

「おっと、そう来たか」


 ……なら、ちょっと試すか。


「テレサ、『恐怖耐性Lv1』スキルを10個くれ」

「こちらに、主様」

「圧縮っと」


 そうして出来上がった『恐怖耐性LvMAX』をミスティに手渡した。


「こっちも試してくれるか?」

「ん、ありがと」


 出会った当初ならLvMAXスキルが無駄になりかねない状況に、勿体無いと止めたり躊躇いそうなものだが、俺と一緒に行動した結果、誰もそれを咎める事はなかった。まあ、彼女達の場合俺に対する信仰めいたものがあるから、そういう意味で止めなかった可能性もあるが。

 そう思って見守っていると、ミスティの手からスキルが溶けるように消えていった。


「……ん! ショウタ、私も『恐怖耐性』を覚えれた!」

「お。そりゃ良かった」


 となれば、『銃器マスタリーLvEX』に対する見識も変わってくるな。各種状態異常耐性や、下手すると戦闘スキルまで、最低ラインのサポートでも最高値のサポートでもなく、一定水準に沿ったラインで全技能が上昇するスキル。そう捉えるのが正しそうだな。

 そして、その水準に満たない該当スキルは取得不可だが、水準を超えるスキルは別枠で取得が可能というわけだ。まあ、問題はこの知識が役立つのはEX保持者だけなのに対して、俺の周りにはミスティとサクヤさんの2人しかいない上に、サクヤさんは魅了能力だけなところか。

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