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ガチャ784回目:城下町

「おー、なんというか、おどろおどろしいな」

『ふーん。ココに出現する時に周辺地理の情報を取り込んだのかしら』

「ダンジョンって、そういうこともできるんだな」

『あたしは、そういうのはしなかったんだけどね』


 最初に感じたイメージは、時代劇なんかでよく見る、日本の城下町だ。情緒あふれる古い京都の街並みを、ほどよく廃墟にしたかの様な感じか?

 まるでタイムスリップしてきたような気分だが、人間が生活しているような雰囲気はまるで無かった。ひび割れた外壁、枯れ木に灯篭、晴れてるのに薄暗い空、重苦しい空気、そしてそこかしこから飛んでくる、得体の知れない視線、人ならざるものと思しき不気味な気配……。

 これは確かに、冒険者になりたての者が入れば、言いようもない不安と恐怖に押し潰されてしまうのも分かる気がする。あと、不気味な気配の方は『全感知』に組み込まれた『霊体感知』がビシビシと反応している。これが霊系のモンスターだろうか?


「ショウタ様、気付いておられますか」

「ああ。見られてるな」

「主様、如何なさいますか」

「まずはこの視線の正体を見極めるところから始めようかな」


 気配を探れば、だいぶ遠くにキョウシロウさんらしき気配を感じる。多分まだこの階層の何処かには居るんだろう。彼らのチーム以外に人間らしき気配はしない。

 ここで優先順位をキョウシロウさん達との合流に回すつもりは毛頭ない。ここは初めてのダンジョンなのだ。俺は俺のやりたい様に攻略するし、今回は別に彼らにナビをしてもらうために呼んだわけではない。

 ただ単に、今までこのダンジョンを支えてきた代表者に、筋を通すために、今から攻略をしますと挨拶をしたかっただけなのだ。

 キョウシロウさんもそれがわかっているから、注意事項だけ述べてさっさと奥に進んだのだろう。


「ずっと見られっぱなしというのは嫌ですねー」

「ん。正直気味が悪い」

「あたしも確認するのは賛成よ」


 ここで不思議なのは、その視線の発生源と思われる場所からは、霊系のモンスターの気配がしないという点だ。視線の発生源はモンスターか、それとも別の何かか……。

 というわけで俺達は早速、正面に広がる大通りではなくひび割れた外壁を潜り抜け、不気味に生い茂る枯れ木を掻き分けて、別のルートへと入っていった。


「……ここか」


 たどり着いた場所は、寂れた祠の様な場所で、左右には、石でできたキツネの像が並んでいた。狛犬じゃなくキツネである点は、ここのダンジョンの支配者的にそうなったのか、取り込んだ情報が稲荷神社関係だったのかで意見が分かれるところだが、それは一旦置いとくとして……。


「視線の送り主は、このキツネからのようだな」


 石像は動いていないのに、めちゃくちゃこっちを見ている気配がする。アヤネなら腰を抜かしてたかもしれん。あとアキも。隠してるようだけど、こういうのに弱いんだよなー、アキは。

 ……おっと、思考が逸れた。見られてるなら、こっちも見返してやるか。


 名称:眷属の像

 品格:なし

 種類:ダンジョン構造物

 説明:稲荷神の神使を模した、意思を持つ彫像。その目は神と繋がっており、神が下界と繋がる役目を担っている。


 つまり、監視カメラの役割と同時に、ガーゴイルみたいな機能を持っているということか。んで、祠の方は……。


 名称:眷属の勾玉(虚)

 品格:なし

 種類:ダンジョン構造物

 説明:御使いの魂の器。今は何も入っていない。

 ★触れると呪われる。


 情報が得られたのは、中央に飾られた勾玉だけか。呪いはどんなものかが若干気になるが、眷属、御使いと来たら……。

 ふむ。


「ダブルプレッシャー」

『『!?』』


 思い付きで『威圧』と『強圧』をばら撒くと、空気が騒めく。それと同時にキツネの像が煙に包まれ、本物のキツネへと変化した。その姿は純白の毛に赤いマフラーのようなものを身に着けた姿をしており、稲荷のキツネそのまんまのイメージ通りでもあった。


*****

名前:御使いの彫像

レベル:80

腕力:450

器用:500

頑丈:1200

俊敏:30

魔力:1000

知力:1200

運:なし


(パッシブ)スキル】物理耐性Ⅲ、魔法耐性Ⅲ、斬撃耐性Lv3、貫通耐性Lv3、打撃耐性Lv3

(マジック)スキル】念動力Lv1、炎魔法Lv2、狐魔法Lv2、魔力回復Lv2

(スペシャル)スキル】威圧

★【(エクス)スキル】監視の眼、狐の怨念


装備:なし

ドロップ:殺生石の欠片

魔石:大

*****


『フーッ!』

『キィ!』


 圧を放つ俺に対して、『御使いの彫像』達が威嚇してくる。魔法・防御型のモンスターだろうか。そこまでの強さでは無いが、第一層であることと未知のスキルを持っている事からして、あまりのんびりとは構えていられないな。


「おらっ!」


 奴らが威嚇している隙に、さっさと攻撃に移る事にした。すると、連中は威嚇に夢中だったのか俺の攻撃を避けきる事ができず、煙へと変化した。


【レベルアップ】

【レベルが18から96に上昇しました】


「随分と呆気ないな」


 そして2体のモンスターの煙は、その場に留まることなく祠の中に吸い寄せられ、完全に取り込まれた。すると、祠の勾玉が光を放った。


 名称:眷属の勾玉(怨)

 品格:なし

 種類:ダンジョン構造物

 説明:御使いの魂の器。身体を喪った御使い達が入っており、人間への憎悪が籠められている。

 ★所持していると、所持者に対して対応階層内の一部モンスターからヘイトが向くようになる。

 ★怒りに囚われたモンスターはレベルとステータスが(5×所持数)%上昇する。

 ★持ち運んでも呪われないが、ダンジョン外に持ち出すと消滅する。


「ははーん、なるほどね」


 周辺から感じる視線の先には、ここと同じように彫像と祠、それからこの勾玉が奉納されていて、それらを全部集めればギミックが発動するとか、そんな感じだろうか。

 なら、やる事は決まったな。


「エンリル」

『ポポ』

「いつもの頼むな」

『ポ~』


 いつものようにエンリルに『視界共有』を施し、周辺地形を洗ってもらう事にした。あとは待機するだけだが……。


「待ってる間は暇だし、その辺から感じる視線の主には、先に挨拶を済ませておくか」


 さーて、この階層には何体の彫像と祠が潜んでいるやらだな。

読者の皆様へ


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