ガチャ780回目:水使いの本気
『◆■■◆◆■◆■?』
大精霊はキョロキョロとしたあと、空に浮かぶ黒い太陽、アズ、クリスへと視線を移し、何かを語りかけ始めた。
「えっと……?」
『■◆■◆■■◆?』
「……??」
クリスも突然話しかけられ困惑しているみたいだ。反応を見るに、本来の持ち主に何か言いたいことがあるのかもしれないが、持ち主にも伝わっていない以上よくわからんな。
てか、呼び出したのは俺なのに、無視されてちょっと傷ついたぞ。
「おい、お前の相手は俺だぞ」
『◆■? ◆■◆■◆!』
大精霊とクリスの間に割って入ると、大精霊は突如として激高し、俺に人差し指を向けた。
「あぶねっ!」
咄嗟にグラムでガードすると、俺の眉間に向けて放たれた水の弾丸を間一髪で防ぐ事ができた。相変わらずの殺意の高さだな。
『◆■■!』
「おっ!?」
次に俺を囲い込むようにして、周囲に大質量の水の塊が出現。そのまま俺を押し潰そうと襲いかかってくる。
それに対して俺はその場で垂直に跳躍することを選択し、緊急離脱。
『■■!』
続けて四方八方に先ほどと同質量の水塊が圧縮された状態で出現し、それが砲台のような形状へと変化。そしてその全てから水のレーザーが発射された。これは『蒼天砲』だな。
俺はそれらを『虚空歩』や『水渡り』で回避し、空中で構える。
「『風の大精霊』と違って動き出しが早いな」
恐らく、精霊石3つ分で強化されたから、最初から身体に慣れてる状態なのかもしれない。とりあえず1発入れてやるか!
「『閃撃・剛Ⅲ』!!」
『■■!?』
飛ぶ斬撃が、水のレーザーを切り飛ばしながら大精霊へと迫る。だが、斬撃は何重にも展開された水のカーテンに遮られ、本体まで届くことはなかった。
『■◆、■◆◆!』
「そう簡単には行かないか」
想像以上に相手の防御力が高いな。奴の防壁は結界とは別物だから『結界破壊』は効果が薄いし、魔法効果を無効化する『破魔の矢』を使ったところで致命傷には程遠い。警戒されたら今度はこっちの攻撃が回避されかねんし、防御してくれてる内に倒してしまいたい。
となれば、回避不可能な至近距離で全力攻撃をお見舞いするべきだろうか。問題があるとすれば……一気にスキルMAX化させた関係で、上限値の跳ね上がったフルブーストの反動がどれほどのものか、まったく予想がつかないことくらいか。
「おおらっ!!」
『■◆■!』
その後も何度か隙をついて『閃撃』で攻撃を繰り出したが、悉く水の障壁に阻まれてダメージが通ることはなかった。逆に向こうは反撃されたことでプライドに傷がついたのか、より一層攻撃が苛烈になり、『蒼天砲』の数は10本にまで増加。その全てがレーザーを撃ったり、極太のウォーターボールをマシンガンのように発射したり、散弾のようにばら撒いたりと多様な方法で俺を翻弄して来た。
だが、俺もその全てをギリギリのラインで回避できていた。十中八九全ての攻撃に『結界破壊』が乗っているだろうし、当たったらその瞬間水の影響で動きが鈍って、連続攻撃を決められるだろうから割とギリギリだった。
……このままじゃジリ貧だし、そろそろ本気で倒しに行くか。でもいきなり全開でいくと俺の身がヤバいし、まずは半分くらいで様子見だな。
「ハーフブースト!」
『!?』
『剛力Ⅹ』『怪力Ⅹ』『俊足Ⅹ』『迅速Ⅹ』『鉄壁Ⅹ』『城壁Ⅹ』の初期6種のブーストだ。
正直コレだけでも、以前までのフルブーストほどではないが、それに近いレベルで最終ステータスにブーストが掛かっている。
・『剛力』効果時間3分00秒 再使用20分。効果中腕力1.5倍
・『剛力Ⅴ』効果時間3分00秒 再使用10分。効果中腕力2倍
・『剛力Ⅹ』効果時間3分00秒 再使用0分。効果中腕力5倍
・『怪力』効果時間1分00秒 再使用10分。効果中腕力2倍
・『怪力Ⅴ』効果時間3分00秒 再使用6分。効果中腕力3倍
・『怪力Ⅹ』効果時間3分00秒 再使用0分。効果中腕力7倍
こいつら全部、Ⅹになった途端に効果が跳ね上がったし、何よりリキャストが無くなったのは大きい。同じスキルの重ねがけはできないけど、効果が切れる前に再使用することで効果の切れ目による隙がなくなったんだからな。
まあ、『マーマンキング』みたいな武人系を相手にするなら、そもそも効果時間中に打ち倒したいところではあるが。効果が切れて弱くなった瞬間を狙うというのは、やっぱりズルっぽく感じるからな。
『■◆■■!』
危険を感じたのだろう。奴は砲台の数を更に増やし、全部で16本も呼び出した。おそらくコレが奴が操れる限界値なのだろう。
1つ1つの砲台の動きに、精細さが欠けている気がする。叩くなら奴が焦ってる今だな。
「ふぅー……!」
回避を続けながら呼吸を整え、グラムを両手に持ち、力を溜める。そして『力溜め』が最大限発揮されたタイミングで、大精霊に向けて急降下する。
飛来する攻撃は最低限の動きで全て回避して大精霊の懐にまで侵入。そのまま技を放とうとするが大精霊は幾重もの障壁を正面に展開した。
『■◆◆■!!』
「『閃断――』」
ここでこの技を放っても、下手すると本体には届かないかもしれない。それくらいの厚みがある壁だ。だが、俺は大技を放つ直前、その状態から更にもう一歩踏み込んだ。
『ザザッ!』
世界が一瞬歪んだ。
それが晴れると、目の前にあったのは水の障壁ではなく、大精霊の背中だった。
『■■!?』
「『――灰燼』!!」
『斬ッ!!!』
『次元跳躍』を駆使した不意打ちは見事に芯を捉え、斬撃は『水の大精霊』を股間から頭頂部にかけて真っ二つにした。そのまま斬撃は空高くに鎮座する黒い太陽すら切り裂き、ダンジョンの高度限界である空の果てへと激突。盛大な花火を打ち上げたのだった。
「たーまやー」
【レベルアップ】
【レベルが139から818に上昇しました】
おー。アズクラスのレベルだったから期待はしてたが、過去最高レベルにまで急成長したな。
てか、うちのメンバーで650越えのレベルをしてるのなんてアズくらいのもんだから、全員また急激にレベルアップしたんじゃないか?
後で聞いてみたところ、嫁達は全員、レベルが500辺りから750辺りにまで急上昇しており、ミスティ達Sランク組は600前後だった為こちらも720辺りにまで成長していたのだった。これはやっぱり、『弱体化』の配布は急務だな。
ちなみにSランクの中で一番レベルの高かったエスは、この場には居なかった為経験値共有はされず、レベル的に取り残される形となったのだった。
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